GC カラムの基礎 - ガスクロマトグラフィの心臓部 - パート 1

Allen K. Vickers、Daron Decker、Ronald E. Majors
Agilent GC アプリケーション

ガスクロマトグラフィは広く用いられているテクニックで、普及がますます進んでいます。現在では、どの分析機器よりも多くのガスクロマトグラフィ(GC)が使用されており、その市場はいまだに拡大しています。GC 市場は、2015 年までには 12 億ドル規模に達すると見込まれています。あらゆる GC システムの中核となるのが、カラムです。今後2回に渡ってお届けするこの記事のパート 1(今回)では、GC カラムの開発、製造、試験について説明いたします。

カラムの改良により、選択肢が拡大し、分析結果が向上

実用的な GC が広く普及する大きなきっかけとなったのは、1979 年のフューズドシリカキャピラリカラムの発明です [1]。それ以前の GC では、効率の低いパックドカラム、壊れやすいホウケイ酸ガラスキャピラリカラム、活性の高い金属キャピラリカラムが用いられていました。表 1 では、おもなカラムの種類を、使用頻度の高い順に示しています。

タイプ

充填剤/相

カラム材質

使用用途

分析対象物の
分離メカニズム

寸法

オープンチューブラーキャピラリ

固定相がコーティングされ、通常はポリマーで化学的に結合および架橋

ステンレス、フューズドシリカ

汎用

沸点などの化学的または物理的パラメータによる分画

内径 0.05~0.53 mm、膜厚 0.01 µm~10 µm、長さ 5~150 m

内壁コーティング
オープンチューブラー

薄い液体フィルム層 (0.1~3.0 µm) で内壁をコーティングまたは内壁と結合

充填剤コーティング
オープンチューブラー

珪藻土などの薄い充填剤層に固定相が吸着

多孔質コーティング
オープンチューブラー

内壁に多孔性固体の薄層 (5~50 µm)

室温での気体分析

内径 0.25~0.53 mm、長さ 5~60 m

パックド

気体-固体クロマトグラフィ – シリカ、アルミナ、粒状活性充填剤

ホウケイ酸ガラス、ステンレススチールポリマーチューブ

一般的な炭化水素分離、規制環境メソッド、キャピラリカラムのサンプルキャパシティでは適切な収率が得られない分取アプリケーション

吸着

内径 2~4 mm、長さ 1.5~10 m

気液クロマトグラフィ (GLC) – 通常は、Celite、Chromosorb W、ファイアブリックなどの表面積の広い不活性基質を、重量 3~10 % の不揮発性液体固定相でコーティング

沸点などの化学的または物理的パラメータによる分画

表 1. GC カラム、使用頻度の高い順

表 1 からもわかるように、もっとも広く使われているのは、オープンチューブラー GC カラムです。オープンチューブラー GC カラムの場合、カラム材料は長い不活性チューブです。このチューブの中央は空洞になっているため、キャリアガスは充填剤の抵抗を受けずに自由に流れることができます。現在、ほとんどのオープンチューブラーカラムでは、固定相がコーティングされ、チューブ内壁に化学的に結合し、ポリマー全体と架橋しています。固定相が結合しておらず、粘度の高い液体でコーティングされているだけの「クラシック」カラムも少数ながら存在しています。そうしたコーティング液は、固定相の蒸気圧が相対的に低いことから、固定されていると見なされます。非結合・非架橋相を持つキャピラリカラムを用いたほぼすべての分離は、同等の結合・架橋相を持つカラムを使用することで、分離を向上することができます [2]。

1. 作業指示/製造計画
2. フューズドシリカチューブの選択
3. カラムバスケットへの巻き付け
4. フューズドシリカチューブの前処理
5. リーチング
6. 不活性処理
7. 溶解固定相の充てん
8. コーティング
9. 架橋処理
10. 洗浄
11. 硬化
12. 表面処理
13. 硬化
14. 品質管理

表 2.GC キャピラリカラムの製造ステップ

時間と注意を要するフューズドシリカキャピラリカラムの製造工程

フューズドシリカキャピラリカラムの製造には、およそ 10 日を要します。表 2 に、製造手順の概要を示しています。ステップ 12 および 13 については、標準的キャピラリカラムの「機能拡張」に関するため、省略が可能な場合もあります。たとえば、そうした機能拡張により、50 % ジフェニル-50 % ジメチルポリシロキサンなどの標準的カラムを、農薬分析により適したものにすることができます。

どのカラムでも、もっとも重要なパラメータは内径と長さです。そのため、カラムを選択する際には、そうした寸法を正確に把握することが重要です。また、内径は保持力 (k) を左右する相比 (β) の基礎となります。そのため、チューブ内径の許容範囲を把握し、測定する必要があります。

適切なチューブの前処理と不活性化 – 困難なサンプルを分析するための鍵

不活性化ステップは、分析困難なサンプルを分析する際にきわめて重要となります。酸性フェノール、カルボン酸、塩基性アミンなどの極性化合物の場合、基盤となるシラノールやその他の表面の不純物により、不可逆的な吸着や深刻なテーリングなどの望ましくない影響が生じることがあります。

このステップには通常、オルガノクロロシラン、アルコキシシラン、ヘキサメチルジシラジンなどの活性化合物が用いられます。最後に、さらなる不活性化により、無極性固定相と極性固定相に対するカラム表面の適合性を確保します。そのため、固定相に対する「湿潤性」を把握する必要があります。この処理により、固定相フィルムの均一な広がりを確保します。フィルムが不均一だとカラム効率に悪影響が出るため、この処理は重要です。通常、コーティングの前の最終ステップで、純溶媒により洗浄したのち、不活性気体中で乾燥させます。

来月の記事もお読みください

来月も引き続き、GC カラムの基礎についての記事を掲載します。来月の記事では、固定相コーティング、品質管理、特殊カラムの試験について説明します。また、Agilent J&W GC カラムセレクションツール(英語)では、アジレントの幅広いウルトライナートカラム、キャピラリカラム、パックドカラム、低ブリード GC/MS カラム、ポリシロキサンカラム、PEG カラム、特殊カラム、PLOT GC カラムの詳細をご覧いただけます。

謝辞

この記事は、Vickers 氏ほか著『The Art and Science of GC Capillary Column Production(GC キャピラリカラム製造の技術と科学)』(LC.GC.、2007 年 7 月 1 日) をもとにしています。

References

  1. R. D. Dandeneau, E. H. Zerenner. Chromatogr. Commun. 1, 351 (1979).
  2. K. Grob, G. Grob, J. Chromatogr. 347, 351 (1985).