Access Agilent 2013年3月号

Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MSを用いた、 超純水中のカルシウムの超微量分析

Albert Lee, Vincent Yang, Jones Hsu, Eva Wu and Ronan Shih
BASF Taiwan Ltd.

溝渕勝男
アジレント ICP-MS シニアアプリケーションケミスト

半導体業界において、生産物のパフォーマンスと収量を得る上で作業工程における金属の不純物の管理はとても重要です。デバイスの性能は上がり続け、不純物管理はさらに厳重になってきています。例えば、生産工程で用いられる超純水 (UPW) に含まれる金属含有量はサブ ppb(ppt) レベルでなければなりません。

最新のICP-MS技術でよりよい測定結果を

ICP-MS は、半導体化学やデバイス中の微量金属分析に適しています。1990 年代中頃に開発された四重極 ICP-MS (ICP-QMS) のクールプラズマ法を用いた分析手法は、UPW 分析など半導体業界での微量金属分析に適しています。クールプラズマ法[1]は、キーとなる元素をシングル ppt レベルで測定することを可能にした手法です。 ICP-QMS に搭載されているコリジョン・リアクションセルは、2000 年頃から開発され、複雑な半導体マトリクスの直接分析を可能にしましたが、クールプラズマ条件下での検出限界値とバックグラウンド相当濃度 (BEC) の改善は見られませんでした。サブ ppt レベルの測定を実現するためには、より低い BEC の達成が必要です。この問題は、Ca のBEC=50ppq を達成する新たなリアクションセルテクノロジーであるMS/MSモードを搭載する、Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS (ICP-QQQ) により解決されます。

RF出力 (W)

600

キャリアガス 流量
(L/min)

0.7

メーク アップ ガス流量
(L/min)

1

サンプリング 深さ (mm)

18

表 1. 8800 ICP-QQQ 測定条件

Agilent 8800 ICP-QQQがお客様の分析結果向上をアシスト

測定には半導体分析用標準装備である Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS (半導体分析用、オプション#200) を用いました。サンプル導入系は石英のトーチと同軸型 PFA ネブライザ (自吸用)、 白金インターフェースコーンを使用しました。表 1 に示した通り、クースプラズマ条件の測定パラメータを用いました。

従来の ICP-QMS に比べ、8800 は新たなマスフィルター Q1 を搭載しており、オクタポールリアクションシステム (ORS3) と四重極マスフィルター (Q2) の前方に設置されています。シングルクワッドモードは ICP-QMS とほぼ同等の機能で、Q1 はイオンガイドとして機能します。しかし、ICP-QQQの標準分析モードはMS/MSモードです。MS/MS モードでは、Q1 が 1amu の枠でマスフィルターの役目を果たし、セルに入射するイオンを制限します。アルゴン (Ar+) や酸素 (O+)、窒素 (N+) などのプラズマイオンは、Q1 にて排除されるため、セルへのイオン透過率が向上します。リアクションガスが加わると、更に反応効率が増し、イオン透過率が上がるため、低ガス流量においても高感度での分析が可能になります。

シングルクワッドモードのノーガスモード (6.8 ppt)、MS/MSモードのセルガスモード (1.4 ppt)、H2 セルガスを流量1 mL/min用いた際のMS/MSモード (0.041 ppt) での Ca の BEC 結果。

図 1. シングルクワッドモードのノーガスモード (6.8 ppt)、MS/MSモードのセルガスモード (1.4 ppt)、H2 セルガスを流量1 mL/min用いた際のMS/MSモード (0.041 ppt) での Ca の BEC 結果。(図を拡大)

シングルクワッドモードのノーガスモード (6.8 ppt)、MS/MSモードのセルガスモード (1.4 ppt)、H2 セルガスを流量1 mL/min用いた際のMS/MSモード (0.041 ppt) での Ca の BEC 結果。

図 1. シングルクワッドモードのノーガスモード (6.8 ppt)、MS/MSモードの
セルガスモード (1.4 ppt)、H2 セルガスを流量1 mL/min用いた際の
MS/MSモード (0.041 ppt) でのCa の BEC 結果。

標準添加法 (MSA) を用いた、セルガスを流量 1 mL/min 用いた際のMS/MS モードの Ca の検量線

図 2. 標準添加法 (MSA) を用いた、セルガスを流量 1 mL/min 用いた際のMS/MS モードの Ca の検量線(図を拡大)

標準添加法 (MSA) を用いた、セルガスを流量 1 mL/min 用いた際のMS/MS モードの Ca の検量線
 

図 2. 標準添加法 (MSA) を用いた、セルガスを流量 1 mL/min
用いた際のMS/MS モードの Ca の検量線

超純水中のCa分析にてBECを2桁改善

0.1 % の高純度 HNO3を含むUPW で調整した Ca の標準溶液 50ppt、100ppt、ブランク溶液 (0.1 % の高純度 HNO3を含むUPW) を調整しました。図1に標準添加法 (MSA) を用い、シングルクワッドモードでのノーガスモード、MS/MS モードのノーガスモード、流量 1 mL/min の H2 を用いた MS/MS モードの 3 手法で Ca の測定を行った際の BEC を示します。一番目のメソッドは Agilent 7700 ICP-QMSのクールプラズマ法とほぼ同様の分析条件で、BEC は 6.8 ppt となり、既存の Agilent 7700 のパフォーマンスと変わりはありませんでした。

セルガスなしの MS/MS モードでは、BEC が1.4 ppt に改善されました。流量1 mL/min の H2 を用いたMS/MSモードでは、BEC は更に 0.041 ppt  (41 ppq) となりました。検量線を図 2 に示します。Agilent 8800 を使用して、従来の ICP-QMS よりも BEC が 2 桁改善し、 UPW 中の Ca を測定することができました。

MS/MSモードにて不要な化学反応を防ぎ、BEC を改善

クールプラズマ法使用時のプラズマ起因の干渉イオンであるNO+ は、セル内に残留するわずかな Ar+ でも電荷移動反応により形成され、Ca の 質量数 40 に干渉します。Agilent 8800 ICP-QQQ の特長である MS/MS モードを使用すれば、セルに入射するオフマスイオン (Ca分析の場合はm/z=40以外のイオン) やプラズマ起因の干渉イオン NO+ を遮断します。これにより、更なる化学反応を防ぎ、従来のICP-QMS のリアクションモードで頻発していた反応物イオンの生成を除去します。上記から、Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS を用い、UPW 中の Ca の測定にて、BEC=41 ppq を達成することができました。

Agilent 8800 トリプル四重極を用いれば、お客様の微量分析結果が向上します

本分析法に関して更なる詳細をお知りになりたい際には「Agilent 8800 トリプル四重極 ICP-MS を用いた、超純水中のカルシウムの超微量分析」 591-1693JAJPをご参照ください。

References

  1. K. Sakata and K. Kawabata, “Reduction of fundamental poly atomic ions in ICP-MS,” Spectrochim. Acta, Part B, 1994, 49, 1027
  2. R. Marx, Y. M. Yang, G. Mauclaire, M. Heninger, and S. Fenistein, “Radioactive lifetimes and reactivity of metastable NO+(a3Σ+,v) and O2+(a4 II,v),” J.Chem. Phys., Vol. 95, No. 4, 2259-2264, 1991