Access Agilent 2013年2月号

Agilent Bond Elut QuEChERSにより、食肉中動物医薬品の分析を向上

Kelly Colwell
アジレントプロダクトマネージャ、サンプル前処理

QuEChERS (Quick (迅速)、Easy (簡単)、Cheap (低価格)、Effective (効果的)、Rugged (堅牢)、Safe (安全)) は、食品試験に広く用いられるテクニックになっています。この手法は、抽出/分画および分散 SPE (dSPE) という 2 つのステップに分けられます。第 1 のステップでは、アセトニトリルを抽出溶媒に用いて、硫酸マグネシウムおよび塩により抽出と分画を促進します。第 2 のステップでは、dSPE により、抽出物からマトリックス干渉を除去します。もっとも一般的な dSPE 材料は、第一第二アミン (PSA)、C18 エンドキャップ (C18EC)、グラファイトカーボンブラックなどです。

QuEChERS メソッドは、まず果実および野菜の農薬抽出に導入されました。初期導入の有効性が実証されて以来、その他のさまざまなサンプルマトリックスにも用いられるようになっています。しかし、果実や野菜とは異なり、動物サンプルでは、dSPE ステップで PSA と C18EC の両方を用いて、タンパク質や脂質の余分な干渉を除去する必要があります。また、異なる塩や酸を用いることで、QuEChERS の性能を高めることが可能です。

QuEChERS 法の微調整により食肉サンプルの分析を向上

中国では、食肉サンプル中の動物医薬品の評価に用いるアプリケーションの性能を高めることが求められています。特に重要となるのが、スルファニルアミド、大環状ラクトン、キノロン、クロピドールの分析性能です。アジレントのアプリケーションアナリストは、それを支援するためのメソッドとして、まず Agilent Bond Elut QuEChERS抽出キットおよび Agilent Bond Elut QuEChERS 分散SPE キットを用いて医薬品中残留物の前処理をおこないました。しかし、メソッド開発をおこなううちに、手順を微調整すれば、回収率が向上することがわかりました。オリジナルの QuEChERS メソッドでは、MgSO4 を用いてサンプル中の水分を除去していました。しかし、MgSO4 は、スルファニルアミドや大環状ラクトンをはじめ、食肉中の多くの化合物の回収率に悪影響を与えていました。MgSO4 の代わりに硫酸ナトリウムを用いたところ、遠心分離後 30 分にわたってサンプルが維持され、効率的に水分を吸収することができました。この結果、MgSO4 を Na2SO4 に置き換えれば、スルファニルアミドと大環状ラクトンの回収率が向上することがわかりました ( 1)。

抽出ステップでは、水とアセトニトリルの比率も検証しました。その結果、抽出ステップにおける水対アセトニトリルの比率が 1:1 のときよりも、1:2 のときのほうが良い回収率が得られることがわかりました。また、回収率に対する酸の影響も検証しました。これは、食肉マトリックス用のサンプル前処理テクニックでは、多くの場合、化合物とタンパク質の結合を切るために酸が用いられ、それが回収率に直接的な影響を与えるためです。この目的でよく用いられる酸は、ギ酸と酢酸です。両者の比較により、アセトニトリル中 1 % 酢酸を用いるほうが、アセトニトリル中 1 % ギ酸を用いた場合よりも高い回収率が得られることがわかりました ( 1)。

メソッド

1

2

3

4

抽出塩

MgSO4+NaCl

Na2SO4 +NaCl

Na2SO4 +NaCl

Na2SO4 +NaCl

分散 SPE ミックス

C18EC+ MgSO4

C18EC+ Na2SO4

C18EC+ Na2SO4

C18EC+ Na2SO4

抽出溶媒

1 %
ギ酸アセトニトリル

1 %
ギ酸アセトニトリル

1 %
ギ酸アセトニトリル

1 %
酢酸アセトニトリル

8 mL

8 mL

4 mL

4 mL

大環状ラクトンの平均回収率 (%)

22.95

43.66

45.12

70.46

スルファニルアミドの平均回収率 (%)

10.86

25.96

33.25

54.35

キノロンの平均回収率 (%)

86.79

47.69

62.69

64.44

クロピドールの平均回収率 (%)

55.12

38.02

49.89

65.37

表 1. Agilent Bond Elut QuEChERS の微調整により、食肉中動物医薬品の抽出における回収率が向上します。

まとめると、微調整したメソッドでは、以下のものを使用しました。

  • タンパク質と脂質を吸着する C18EC
  • 水分を除去する無水 Na2SO4
  • 酸性干渉に作用する PSA
  • 回収率を改善するための酢酸

動物医薬品の分析には、pH の影響を受けやすい農薬の抽出で用いられるバッファあり QuEChERS (AOAC または EN バージョン) は必要ありません。

Agilent Bond Elut QuEChERS および他の BOND Elut サンプル前処理により抽出した 36 種類の動物医薬品の MRM 抽出クロマトグラム。Agilent ZORBAX ソルベントセーバー HD Eclipse Plus C18 カラムを使用。

図 1. Agilent Bond Elut QuEChERS および他の BOND Elut サンプル前処理により抽出した 36 種類の動物医薬品の MRM 抽出クロマトグラム。Agilent ZORBAX ソルベントセーバー HD Eclipse Plus C18 カラムを使用。(図を拡大)

Agilent Bond Elut QuEChERS および他の BOND Elut サンプル前処理により抽出した 36 種類の動物医薬品の MRM 抽出クロマトグラム。Agilent ZORBAX ソルベントセーバー HD Eclipse Plus C18 カラムを使用。
 

ピーク番号

1. スルファグアニジン

10. オフロキサシン

19. スルファメーター

28. スルフイソキサゾール

2. リンコマイシン

11. スルファピリジン

20. サラフロキサシン

29. オキソリン酸

3. クロピドール

12. シプロフロキサシン

21. ジフロキサシン

30. エリスロマイシン

4. スルファセタミド

13. スルファメラジン

22. スピラマイシン

31. スルファメンズアミド

5. スルファジアジン

14. ダノフロキサシン

23. スルファモノメトキシン

32. スルファジメトキシン

6. マルボフロキサシン

15. エンロフロキサシン

24. スルファクロロピリダジン

33. スルファキノキサリン

7. トリメトプリム

16. スルファメタジン

25. スルファドキシン

34. チロシン

8. スルファチアゾール

17. スルファメチゾール

26. スルファメトキサゾール

35. ロキシスロマイシン

9. ノルフロキサシン

18. スルファメトキシピリダジン

27. チルミコシン

36. フルメキン

図 1. Agilent Bond Elut QuEChERS および他の BOND Elut サンプル前処理により抽出した 36 種類の動物医薬品の MRM 抽出クロマトグラム。
Agilent ZORBAX ソルベントセーバー HD Eclipse Plus C18 カラムを使用。

微調整した Agilent Bond Elut QuEChERS により、36 種類の薬剤を 9 分未満で定量

微調整したメソッドを用いて、36 種類の動物医薬品を抽出したのち、LC-MS/MS で定量しました。結果を 1 に示しています。この図を見ると、食肉サンプル中のこれらの化合物を、9 分未満で効率的に分離できていることがわかります [1]。

複雑な食肉サンプルに含まれる微量のターゲット薬剤を分析できる、この選択性と感度の高いメソッドは、堅牢性とスピードという長所も備えています。高速 QuEChERS 抽出と組み合わせれば、分析の手間と時間を大幅に減らすことが可能で、ルーチン分析における動物医薬品スクリーニングの信頼性が高まります。

QuEChERS およびアジレントのサンプル前処理ソリューションの詳細

Bond Elut QuEChERS は、アジレントの提供する多くのサンプル前処理ソリューションの 1 つにすぎません。Agilent QuEChERS キットのウェブページをご覧いただき、サンプル前処理に関するアジレント e-セミナーや、ツールなど、数々の無料リソースを活用してください。

References

  1. Jin-Lan Sun et al. (2012) Screening 36 Veterinary Drugs in Animal Origin Food by LC/MS/MS Combined with Modified QuEChERS Method. Application Note. Publication No. 5991-0013EN. Agilent Technologies, Inc.