Access Agilent 2013年1月号

IC-ICP-MSによる環境水中のイオプロミドの測定

Armando Durazo、Tarun Anumol、Shane A. Snyder
アリゾナ大学、ツーソン、アリゾナ州、米国

イオプロミドはヨード X 線造影剤 (ICM) で、一般に g/L 濃度で患者に投与され、24 時間以内に患者の尿に排出されます。親水性がきわめて高く、非イオン性であるため、環境中にとどまりやすいという性質があります。ICM は下水処理の影響を受けにくく、複数の研究では、従来の処理プロセスではあまり除去できないことが示されています。

イオプロミドなどの ICM は、酸化と殺菌をおこなう水処理プロセスの際に、毒性のあるヨウ化消毒副生成物 (I-DBP) を形成することがあります。一部の I-DBP は、塩素化および臭素化消毒副生成物の数倍の毒性があることが知られていますが、現時点では、米国環境保護庁 (USEPA) などの規制当局の規制対象にはなっていません。

イオプロミドの検量線 (log log)。表にはキャリブレーション標準のレスポンスを記載。

図 1. イオプロミドの検量線 (log log)。表にはキャリブレーション標準のレスポンスを記載。(図を拡大)

イオプロミドの検量線 (log log)。表にはキャリブレーション標準のレスポンスを記載。
 

濃度 (ppb)

計算濃度

カウント

0.0

0.0

1185

0.1

0.1

11580

1.0

1.0

120803

10.0

9.7

1126712

100.0

95.5

11075020

1000.0

1000.5

116053544

図 1. イオプロミドの検量線 (log log)。
表にはキャリブレーション標準のレスポンスを記載。

水性ブランク抽出液 (上) と水性 0.1 ppb イオプロミド標準 (下) の注入から得られたヨウ素クロマトグラム (m/z 127) の比較。イオプロミドのリテンションタイムは 10.1 分です。

図 2. 水性ブランク抽出液 (上) と水性 0.1 ppb イオプロミド標準 (下) の注入から得られたヨウ素クロマトグラム (m/z 127) の比較。イオプロミドのリテンションタイムは 10.1 分です。(図を拡大)

水性ブランク抽出液 (上) と水性 0.1 ppb イオプロミド標準 (下) の注入から得られたヨウ素クロマトグラム (m/z 127) の比較。イオプロミドのリテンションタイムは 10.1 分です。
 

図 2. 水性ブランク抽出液 (上) と水性 0.1 ppb イオプロミド標準 (下) の注入から得られたヨウ素クロマトグラム(m/z 127) の比較。
イオプロミドのリテンションタイムは 10.1 分です。

地表水サンプル中のイオプロミドの分離および濃度測定

カリフォルニア州の河川沿いの規定のモニタリング地点で、環境水サンプルを採取しました。採取地点には、水処理施設に近い場所も含まれています。その後、水サンプルを前処理し、IC-ICP-MS で分析しました。

Agilent 7700x 四重極 ICP-MSAgilent 1260 HPLCを接続し、希釈したサンプル抽出液を注入しました。注入量は 500 µL です。分離には、Dionex AG16 4 x 50 mm ガードカラムと Dionex AS16 4 x 250 mm 分析カラムを使用しました。

コリジョンガスとしてヘリウムを使用し (He 流速 = 3.5 mL/min)、高マトリックスサンプル導入 (HMI) モード (0.6 L/min 希釈ガス、0.5 L/ min キャリアガス、サンプル深さ= 9 mm) で Agilent 7700x ICP-MS を動作させました。37 分の時間枠内で 2 秒の積分時間を用いて、時間分解解析 (TRA) モードでヨウ素 (m/z 127) 強度をモニタリングしました。HMI を使えば、インターフェースコーンへのマトリックス堆積を最小限に抑えながら、高マトリックスサンプルを長時間分析することができます。また、He コリジョンセルを用いれば、126XeH+ などの質量 127 に干渉する可能性のある多原子干渉を除去できます。化合物濃度 0.0、0.1、1、10、100、1000 ppb の水性標準溶液を用いて、イオプロミドの検量線を作成しました ( 1)。

前述のメソッドを用いて、研究で用いた濃度 0 以外のすべての標準溶液でイオプロミドを検出することができました。 2 に示すように、0.1 ppb 注入で得られたクロマトグラムは、ブランク注入のものとは明らかに異なっています。また、検量線は 4 桁にわたって直線性が得られています ( 1)。この濃度範囲には、未希釈流出廃水などの環境水で観察されるイオプロミドの濃度が含まれています。

ヨウ素含有量にもとづく未知化合物の定量

この研究のクロマトグラムでは、イオプロミドに加えて、他の複数のヨウ素含有化合物が検出されました。化合物非依存性キャリブレーション (CIC) を用いれば、ヨウ素含有量をもとに、これらの未知化合物種を定量することができます。CIC では、既知のヨウ化化合物のヨウ素レスポンスを用いて、未知化合物のヨウ素含有量をキャリブレーションします。このケースでは、既知化合物としてイオプロミドを使用します。ICP-MS は、CIC を用いた分析には最適です。高温 ICP イオン源により、ターゲット元素 (このケースではヨウ素) の元素レスポンスを、ターゲット元素が含まれている化合物と切り離すことができるためです。これらの未知ピークに含まれるヨウ素含有量の定量結果を 1 に示しています。

サンプル名

未知 1 RT 5.2
分 濃度 (ppb)

未知 2 RT 8.5
分 濃度 (ppb)

イオプロミド (I)
濃度 (ppb)

未知 3 RT 12
分 濃度 (ppb)

未知 4 RT 30
分 濃度 (ppb)

SJC1

268.55

0.24

118.17

5.77

9.64

LAR Ref

1.43

0.23

0.07

0

55.55

LAR Eq ブランク

1.86

0.2

0.09

0

0.38

LAR 6

84.23

0.29

1.21

6.16

17.13

LAR 5

98.87

0.39

0.95

7.11

11.95

LAR 4

128.68

0.38

1.17

12.97

13.03

LAR 3

116.4

0.27

0.89

10.21

12.62

LAR 2

156.01

0.22

0.28

12.86

14.87

LAR 1

189

0.29

1.05

12.15

22.51

Eq ブランク

0.28

0.19

0

0

0.21

100 ppb STD

0

0.15

51.47

N/D

0.11

SGR ref

0.34

0.21

0.07

0

0.29

SGR 6

142.49

0.16

15.69

8.46

20.54

SGR 5b

194.45

0.12

16

11.2

14.92

SGR 5a

7.27

0.19

0.81

0.37

54.73

SGR 5

326.73

0.1

40.91

11.29

5.66

SGR 3b

24.46

0.28

0.54

3.95

6.56

SGR 3a

322.5

N/D

52.01

11.36

3.14

ブランク

0.03

0.23

0.03

0

0.18


イソクラティック分析における、分析者による移動相調製とポンプによる移動相調製。