Access Agilent 2012年11月号

Buffer Advisor機能を用いた生体高分子向けクロマトグラフィーの迅速な最適化

Katja Kornetzky
アジレントプロダクトマネージャ、LC システムおよびモジュール

これらの修飾により、生物薬剤の製造中に荷電バリアントが生じます。イオン交換クロマトグラフィーは荷電バリアントの分析に適した手法です。

図 1. これらの修飾により、生物薬剤の製造中に荷電バリアントが生じます。イオン交換クロマトグラフィーは荷電バリアントの分析に適した手法です。(図を拡大)

これらの修飾により、生物薬剤の製造中に荷電バリアントが生じます。イオン交換クロマトグラフィーは荷電バリアントの分析に適した手法です。

図 1. これらの修飾により、生物薬剤の製造中に荷電バリアントが生じます。
イオン交換クロマトグラフィーは荷電バリアントの分析に適した手法です。

モノクローナル抗体などタンパク質をベースとした生物製剤の新薬が、近年では多く開発されています。このような製剤では、目的のモノクローナル抗体がわずかに修飾された荷電バリアントが同時に合成され、混入することがあります。目的成分と荷電バリアントを分離および分析する手法としては、イオン交換クロマトグラフィーが効果的です。
この分析法では、移動相に緩衝液を使用することが多々ありますが、メソッド開発の際に Buffer Advisor 機能を使用することにより、イオン交換クロマトグラフィーに用いる緩衝液を自動で作成することができます。そのため、メソッド開発の際に多数の緩衝液を自身で作成したり、調整したりする必要がなくなります。

図 1に示すように、荷電バリアント生成につながる修飾としては、C 末端リジンの喪失、脱アミドとシアリル化 (分子の酸性度が上昇)、スクシンイミド形成とカルボン酸側鎖のアミド化 (分子の塩基性度が上昇) などがあります。

このようなアイソフォームは目的のモノクローナル抗体と活性や安定性が異なることがあるため、タンパク質製剤を製造する際には非常に注意を払う必要があります。そのため、ICH Q6B などの規制では生物製剤の特徴化と定量を徹底して行うよう求めており、クロマトグラフィーによる分析が好ましいとされています。イオン交換クロマトグラフィーは、このような荷電バリアントの分離に適した手法です。一般的なイオン交換クロマトグラフィーのメソッドでは、イオン強度を徐々に強めた溶媒 (塩濃度グラジエント) を用いて、類似した電荷をもつ塩イオンを利用して分析対象物を溶出します。

a) 分析者自身の手で溶媒を調製する場合、12種類の緩衝液を作成し、pHをそれぞれ調整する必要があります。b) Buffer Advisor では、調製する必要のある緩衝液は 4 種類だけです。

図 2. a) 分析者自身の手で溶媒を調製する場合、12種類の緩衝液を作成し、pHをそれぞれ調整する必要があります。
b) Buffer Advisor では、調製する必要のある緩衝液は 4 種類だけです。
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a) 分析者自身の手で溶媒を調製する場合、12種類の緩衝液を作成し、pHをそれぞれ調整する必要があります。b) Buffer Advisor では、調製する必要のある緩衝液は 4 種類だけです。

図 2. a) 分析者自身の手で溶媒を調製する場合、12種類の緩衝液を作成し、
pHをそれぞれ調整する必要があります。
b) Buffer Advisor では、調製する必要のある緩衝液は 4 種類だけです。

Buffer Advisor を使用することにより、塩濃度グラジエントを実行している最中でも pH を一定に保つことができます。

図 3. Buffer Advisor を使用することにより、塩濃度グラジエントを実行している最中でも pH を一定に保つことができます。
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Buffer Advisor を使用することにより、塩濃度グラジエントを実行している最中でも pH を一定に保つことができます。

図 3. Buffer Advisor を使用することにより、塩濃度グラジエントを実行している最中でも pH を一定に保つことができます。

単一画面のユーザーインターフェースで、分析に用いるイオン交換クロマトグラフィーの条件を設定できます。補正したグラジエント条件を表形式とプロット形式で表示します。

図 4. 単一画面のユーザーインターフェースで、分析に用いるイオン交換クロマトグラフィーの条件を設定できます。
補正したグラジエント条件を表形式とプロット形式で表示します。
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単一画面のユーザーインターフェースで、分析に用いるイオン交換クロマトグラフィーの条件を設定できます。補正したグラジエント条件を表形式とプロット形式で表示します。

図 4. 単一画面のユーザーインターフェースで、分析に用いるイオン交換クロマトグラフィーの条件を設定できます。
補正したグラジエント条件を表形式とプロット形式で表示します。

時間の節約と誤差の低減

イオン交換分析を行う一般的な流れとして、初めに任意の pH を持つ緩衝液を2つ作成します。そのうちの1つはイオン強度の低い緩衝液で、分析対象物をカラムに添加する際に使用します。もう1つの緩衝液は塩濃度(イオン強度)が高く、2液グラジエントにおいて割合が徐々に増加する移動相溶媒として使用します。従来では、これらの緩衝液を分析者自身の手で作成する必要があり、緩衝液の調製に費やす時間が長くなります。多くの場合ではメソッド開発 (pH スカウティング) を行って、最適な分離が得られる緩衝液を決定する必要があります。目的成分と荷電バリアントの分離能を最大化するためには、複数の pH を持つ緩衝液を用いてメソッドのスクリーニングを行う必要があります。

pH スカウティングでは、例えば6 種類の pH を持つ緩衝液を使用する場合、12 種類の溶媒を作成することになります (図 2a)。もちろん、それぞれの溶媒を調製する際には試薬の秤量を行い、pH を調節しなければなりません。これは極めて時間のかかる工程であり、なおかつ調製者に起因する誤差が生じる可能性も高くなります。そのため、この工程を自動化することにより調製時間の節約と誤差の最小化を図ることができます。アジレントのBuffer Advisor 機能では、手作業による溶媒の調整を一切行うことなく、6種類のpHを持つ緩衝液による分析で用いる12種類の溶媒を4 つの原液をもとに調製し、再現性の高い分析を自動で行うことが可能になります (図 2b)。

一定の pH を自動的に維持

塩濃度グラジエントのもう 1 つの欠点は、緩衝液中の塩濃度が上昇することにより pH が変動してしまうことです。アジレントの Buffer Advisor 機能では、このような pH 変動を自動的に補正し、塩濃度グラジエント分析全体で一定の pH を維持します (図 3)。また、Buffer Advisor 機能により、塩濃度グラジエントの代わりに、 pH のリニアグラジエントを高精度で設定することもできます。この場合には、 Buffer Advisor 機能で選択可能な緩衝液を使用する必要があります(選択可能な緩衝液はバリデーション済みです)。

イオン交換クロマトグラフィーの設定を簡単に

分析に使用する溶媒を自動で調製する際、分析で使用する緩衝液とグラジエント条件をユーザーインターフェースで設定すると、推奨する緩衝液が示されます(図 4)。 Buffer Advisor 機能と Agilent 1260 Infinity バイオイナートクォータナリ LC システムを組み合わせることにより、複雑な4液グラジエントも簡単に設定することができます。

メソッド作成を迅速に

Buffer Advisor で得られた結果を用いて、Agilent OpenLAB クロマトデータシステム (CDS) で使用するメソッドを作成することができます。このメソッドはChemStation および EZChrom の両方に対応しています。結果を微調整した目的のグラジエントをタイムテーブルを保存し、OpenLAB CDS ChemStation などの Agilent OpenLAB CDS にインポートすることが可能です (図 6)。

a) pH 5.8~pH 6.8 におけるスカウティング実験のタイムテーブル。b)  微調整した結果。

図 5. a) pH 5.8~pH 6.8 におけるスカウティング実験のタイムテーブル。b) 微調整した結果。
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a) pH 5.8~pH 6.8 におけるスカウティング実験のタイムテーブル。b)  微調整した結果。

図 5. a) pH 5.8~pH 6.8 におけるスカウティング実験のタイムテーブル。b) 微調整した結果。

 タイムテーブルをOpenLAB CDS へインポートすることにより時間を節約。

図 6. タイムテーブルをOpenLAB CDS へインポートすることにより時間を節約。(図を拡大)

 タイムテーブルをOpenLAB CDS へインポートすることにより時間を節約。

図 6. タイムテーブルをOpenLAB CDS へインポートすることにより時間を節約。

 Buffer Advisor を用いることにより、自動調製した4液グラジエントによる3種類のタンパク質の分離を目的としたpH スカウティングを効率的に行うことができます。

図 7. Buffer Advisor を用いることにより、自動調製した4液グラジエントによる3種類のタンパク質の分離を目的としたpH スカウティングを効率的に行うことができます。(図を拡大)

 Buffer Advisor を用いることにより、自動調製した4液グラジエントによる3種類のタンパク質の分離を目的としたpH スカウティングを効率的に行うことができます。

図 7. Buffer Advisor を用いることにより、自動調製した4液グラジエントによる3種類のタンパク質の分離を目的とした
pH スカウティングを効率的に行うことができます。

pHスカウティングの短縮化と簡略化

Buffer Advisor 機能を用いて分析で使用する溶媒を自動で調製することにより、溶媒の調製に必要な時間を大幅に短縮できます。特に、分析者自身の手で溶媒を調製する場合に比べると、短縮幅は大きくなります。

アジレントの Buffer Advisor 機能では、アニオン交換やカチオン交換クロマトグラフィーで使用するほとんどの緩衝液が選択可能であり、それらに対するバリデーションは完了しています。また、自動で緩衝液を調製する際に必要な原液の調整方法に関しても記載しています。自動で溶媒を調製することにより、手で調製する場合よりも精確性の高いpHを持つ溶媒を調製することができます。Buffer Advisor 機能は、4 液グラジエントを随時計算し、設定した pH を一定に保ちつつ酸性や塩基性緩衝液の濃度を設定どおりに変化させます。

モノクローナル抗体などの生体高分子をイオン交換クロマトグラフィーで分析する際、アジレントのBuffer Advisor機能を用いることによりメソッド開発に必要な時間を短縮することができます。この機能は、イオン交換クロマトグラフィーの分析メソッド開発の自動化に最適なツールです。詳細については、アプリケーションノート 5991-0565EN をご覧ください。