Access Agilent 2012年5月号

信頼性の高い、MP-AESによる漢方薬中の多元素分析

Chunhua Wu
アジレント原子分光アプリケーションエンジニア

Yuhong Chen
アジレント SPSD マーケティングプログラムマネージャ

Kun Ouyang
アジレント原子分光アプリケーションエンジニア

Zhixu Zhang
アジレントアプリケーションエンジニアマネージャ

Craig Taylor
アジレントMP-AES 製品マーケティングマネージャ

装置パラメータ

設定

ネブライザ

ガラス製同軸型

スプレーチャンバ

シングルパスガラス製サイクロニック

サンプルチューブ

オレンジ/グリーン

排液チューブ

ブルー/ブルー

読み取り時間

3 秒

ネブライザ圧力

160–220 kPa

繰り返し回数

3

安定化時間

15 秒

バックグラウンド補正

オート

表 1. 装置条件。

代表的な元素の検量線

図 1. 代表的な元素の検量線 (図を拡大)。

代表的な元素の検量線

図 1. 代表的な元素の検量線

漢方薬は、何世紀にもわたって中国で広く使用されています。しかし、最近の技術の進歩により、一部の 漢方薬には、Pb、Cr、Cu、Ni、As、K、Na、Ca などの金属が含まれている可能性があることが明らかになっています。こうした危険性のある物質は厳しく規制されているため、漢方薬の品質管理には、正確な検出と定量が不可欠です。

MP-AES: 漢方薬中の多元素分析を低コストで行うためのテクニック

漢方薬には高濃度から低濃度まで、さまざまな元素が含まれている可能性があるため、マイクロ波プラズマ原子発光分光分析法 (MP-AES) による分析が適しています。MP-AES では、磁気的に結合したマイクロ波エネルギーを用いて、安定した堅牢な窒素プラズマを生成します。このテクニックにより、アセチレンや亜酸化窒素などの危険で高価なガスを使用する必要がなくなり、分析コストが低くなるとともに、長時間の無人分析も行うことが可能です。また、従来のフレーム原子吸光分析法(AAS) よりも優れた検出下限、分析スピード、ダイナミックレンジが得られます。

この研究では、Agilent 4100 MP-AES を用いて、West Gan leaf、 Endogenous galanin leaf、朝鮮人参という 3 種類の漢方薬サンプルに含まれる元素含有量を測定しました。

Agilent 4107 窒素ジェネレータにより圧縮空気を供給し、Agilent MP Expert ソフトウェアによりプラズマの観測位置とネブライザ圧力を自動的に最適化しました (表 1)。

マイクロ波分解装置を用いて、以下の手順でサンプルの前処理をおこないました。

  • West Gan leaf、 Endogenous galanin leaf、朝鮮人参のサンプル約 0.40 g を標量し、PTFE容器に入れる。
  • HNO3 5 mL、HCL 0.5 mL、H2O2 1mL を用いて、n=2のサンプルを調製する。
  • 分解後、容器を室温に冷却し、最終容量が 30 mL になるように希釈する。

5% HNO3中の多元素混合標準溶液を用いて、検量線を作成しました。相関係数は、すべての元素で 0.999 以上でした。(代表的な元素の検量線の例を図 1に表示)。

厳しい規制に対する業界のニーズを満たす
優れた検出下限、回収率、精度

分析した 3 種類の 漢方薬について、MP-AES により得られた結果は、従来の分析法により得られた公称値と良好に一致しました (表 2)。

サンプル
元素

West Gan leaf

Endogenous galanin leaf

朝鮮人参

 

MP-AES

従来法

MP-AES

従来法

MP-AES

従来法

Al

420

425

411

418

294

289

Ba

47.56

47.52

17.75

17.72

42.12

41.61

Ca

18622

18659

13247

13305

2168

2212

Cr

22.62

22.95

5.88

5.96

1.16

1.06

Cu

9.07

9.04

6.75

6.80

6.17

6.16

Fe

820

821

457

458

193

199

K

18510

18651

17797

17829

11374

11220

Mg

5065

5018

4973

4951

1296

1337

Mn

297

299

372

371

33.47

33.76

Na

45.75

45.90

57.75

56.71

252

243

Ni

1.40

1.58

1.61

1.63

1.68

1.65

P

3579

3588

2030

2030

2296

2245

Pb

-

-

1.25

1.21

-

-

Zn

29.85

29.75

40.08

39.46

19.43

20.07

表 2. サンプル分析結果、単位µg/mL。

最適な条件下でブランクサンプルを 11 回繰返し測定したのち、各元素のメソッド検出下限 (MDL) を計算したところ、下の表 3に示すように、固体サンプル中で 2.9 ppb 以下という結果が得られました。

分析法の正確性と精度を評価するために、添加回収試験を実施しました。1 ppm 混合標準溶液をサンプルに添加し、分解しました。その後、同じサンプル溶液を 6 回分析し、再現性を測定しました。下の表 4 で見られるように、回収率は 90~110 %、精度は 0.2 %~1 % でした。

元素

MDL (ppb)

Al

0.2

Ba

0.05

Ca

0.02

Cr

0.1

Cu

0.07

Fe

0.35

K

0.05

Mg

0.03

Mn

0.06

Na

0.03

Ni

0.5

P

2.9

Pb

0.6

Zn

0.4

表 3. メソッド検出下限、サンプル中 ppb としての値。

元素

単位

認証値

MP-AES

Al

%

0.104 ± 0.06

0.06

Ba

µg/g

26 ± 4

25

Ca

%

1.81 ± 0.13

1.68

Cr

µg/g

0.55 ± 0.07

0.55

Cu

µg/g

9.3 ± 1

9.0

Fe

µg/g

274 ± 17

269

K

%

1.38 ± 0.07

1.35

Mg

%

0.65 ± 0.05

0.66

Mn

µg/g

45 ± 4

49

Na

µg/g

200 ± 13

188

Ni

µg/g

1.9 ± 0.3

1.7

P

µg/g

1680 ± 60

1720

Zn

µg/g

37 ± 3

39

表 4. 国家標準物質 GBW07604 の分析結果。

この研究結果は、マイクロ波分解により前処理したサンプルをMP-AESで分析する方法が、漢方薬中の重金属分析に対応できる信頼性の高い分析法であることを裏づけています。この方法は、他のハーブ系サプリメントにも高い信頼性で適用することが可能です。

迅速で安全、かつ信頼性の高い多元素分析の詳細については、Agilent 4100 MP-AES 製品ページをご覧ください。