Access Agilent 2012年4月号

Poroshell120 カラム - コレステロールおよび関連ステロールの LC/MS/MS 分析最新技術

Rong-jie Fu
アジレントアプリケーションケミスト

Maureen Joseph
アジレントビジネスマネージャ、LC カラム

コレステロールとその代謝物はさまざまな理由から注目されています。特に大きな理由としては、脂質異常がアテローム性動脈硬化、糖尿病、肥満、アルツハイマー症、代謝性疾患などのさまざまな疾患に関係しているという点があります。

コレステロールのほかに、植物ステロール、コレスタノール、βシトステロールや、コレステロール代謝物のデスモステロール、ラトステロールにも、研究者の注目が集まっています。たとえば、ラトステロールは、体内でのコレステロール合成の指標となる物質と考えられており、体内のコレステロール値に影響を与える可能性があることから、ラトステロール分析には特に高い関心が寄せられています。

コレステロールと関連化合物の分析には、LC も GC も使用できますが、LC メソッドにはいくつかの利点があります。LC メソッドでは、分析前のステロールの誘導体化が必要ないため、サンプル前処理を簡略化し、時間を短縮することができます。また、コレステロールが一般に含まれる「ダーティサンプル」に対する耐性も優れています。こうした理由から、この研究では LC メソッドを用いて一連のステロールを分析しました。標準 2 µm フリットを備えた Agilent Poroshell120 カラムを使用しました。このカラムを選択したのは、2.7 µm 粒子で UHPLC に匹敵する効率と分離能が得られるためです。Poroshell120 カラムの 2 µm フリットは、サブ 2 µm UHPLC カラムで一般的に用いられる 0.5 µm フリットよりもつまりが生じにくいため、Poroshell120 カラムはダーティサンプルの分析に適した堅牢なカラムといえます。

Poroshell120 EC-C18  と ELSD によるコレステロールと他のステロールの分離

図 1. Poroshell120 EC-C18 と ELSD によるコレステロールと他のステロールの分離
(図を拡大)。

Poroshell120 EC-C18  と ELSD によるコレステロールと他のステロールの分離
  • カルシフェジオール
  • デスモステロール
  • プロビタミン D3
  • 5-コレステン-3-オン
  • ラトステロール
  • コレステロール
  • コプロスタノール
  • カンペステロール
  • スチグマステロール
  • コレスタノール
  • シトステロール

カラム

Poroshell120 EC-C18、3.0 x 100 mm、2.7 µm

移動相

80 % ACN/20 %メタノール

流速

0.6 ml/min

温度

20 °C

注入量

2 µl

検出

Agilent LT-ELSD

図 1. Poroshell120 EC-C18 と ELSD によるコレステロールと他のステロールの分離

Poroshell120 EC-C18  と LC/MS/MS によるコレステロールと他のステロールの分離

図 2. Poroshell120 EC-C18 と LC/MS/MS によるコレステロールと他のステロールの分離
(図を拡大)。

Poroshell120 EC-C18  と LC/MS/MS によるコレステロールと他のステロールの分離
  • カルシフェジオール
  • デスモステロール
  • 5-コレステン-3-オン
  • ラトステロール
  • コレステロール
  • カンペステロール
  • スチグマステロール
  • コレスタノール
  • シトステロール

カラム

Poroshell120 EC-C18、
3.0 x 100 mm、2.7 µm

移動相

80 % ACN/20 % メタノール

流速

0.6 ml/min

温度

20 °C

注入量

2 µL

検出

APCI、ポジティブイオン

図 1. Poroshell120 EC-C18 と LC/MS/MS によるコレステロールと他のステロールの分離

LC を用いたステロールの検出には、MS、UV、ELSD などの検出テクニックを使用できます。検出器の選択は、分離に必要な感度により左右されますが、きわめて高い感度を得られるのが LC/MS/MS です。この研究では、ポジティブイオンモードで大気圧化学イオン化 (APCI) を用いた Agilent 6460A トリプル四重極 (QQQ) LC/MS でELSD および MS を組み合わせた分離メソッドを開発しました。ラトステロールとコレステロールは、2 つの理由から、分析がもっとも困難な化合物といえます。1 つ目の理由は、MS/MS 検出のためにはこの 2 つの化合物を分離する必要がありますが、同重体であるため、完全に分離するのが難しいという点です。2 つ目の理由は、コレステロールは、ラトステロールよりもずっと高い濃度で血漿サンプル中に存在するという点です。この研究では、これらのステロール化合物が無極性であることから、ポジティブイオンモードの APCI を選択しました。APCI では、誘導体化をおこなわずに、これらの化合物で優れた感度が得られます。

図 1 は、ELSD を用いた 11 種類のステロールの分離を示しています。感度がそれほど重要ではない場合には、この検出器が最適です。また、分析対象物が発色団をもたず、UV 検出器の使用が不適切な場合にも、ELSD なら多くの化合物に対応できます。この研究では、より高い分離能を得るために、温度を 20 °C に制御して単純なアイソクラティック移動相を使用しました。Poroshell120 EC-C18 カラムでは、ラトステロールとコレステロールが完全に分離され、11 種類すべてのステロールを 15 分で分離できました。このことから、効率的かつ効果的なメソッドであるといえます。また、この分離はアイソクラティック分離であるため、カラムの再平衡化のための追加時間は必要ありません。

感度を高める必要がある場合は、LC/MS/MS のほうが最適な検出器となります。この研究では、検出器として Agilent 6460A トリプル四重極 LC/MS (QQQ) を使用しました。ここでも、ラトステロールとコレステロールが同重体であることから、分離カラムには Poroshell120 EC-C18、3.0 x 100 mm、2.7 µm カラムを選択しました。このサンプルでは、コレステロールとラトステロールの比率は 2000:1 でした。これをもとに、血漿サンプル中で検出されるステロールの分離を評価しました。

図 2 では、コレステロール:ラトステロールの比率が 2000:1 の場合でも、Poroshell120 EC-C18 カラムにより良好な分離能が得られていることが示されています。このメソッドに用いた APCI 採取パラメータおよびトランジションを表 1の下に示しています。表 2の右側には、その他のソースパラメータと全 LC 構成を示しています。

LC 構成

Agilent 1200 SL、
バイナリポンプ搭載 (G1312B)

Agilent カラムコンパートメント SL (G1316B)

Agilent オートサンプラ (G1367D)

Agilent LT-ELSD または

Agilent 6460A トリプル四重極

MS ソースパラメータ

ガス温度

325 °C

ベーポライザ

350 °C

ガス流速

4L/min

ネブライザ

60 psi

ポジティブキャピラリ

4000 V

コロナ電流

4 uA

表 2. LC 構成と MS ソースパラメータ

化合物名

プレカーサイオン

プロダクトイオン

フラグメンター

コリジョンエネルギー

リテンションタイム
(分)

カルシフェジオール

383.3

211.2

144

25

1.7

カルシフェジオール

383.3

107.1

144

25

1.7

デスモステロール

367.3

161.1

100

17

6.4

デスモステロール

367.3

95

100

22

6.4

5-コレステン-3-オン

385.4

109.1

128

40

9.05

5-コレステン-3-オン

385.4

97

128

21

9.05

ラトステロール

369.4

95.1

112

29

9.4

ラトステロール

369.4

81.1

112

40

9.4

コレステロール

369.4

161.2

166

10

9.87

コレステロール

369.4

95.2

166

38

9.87

カンペステロール

383.4

161.2

142

16

11.6

カンペステロール

383.4

95

142

30

11.6

スチグマステロール

395.4

83.1

148

17

11.95

スチグマステロール

395.4

81.1

148

37

11.95

コレスタノール

371.4

149

150

15

12.27

コレスタノール

371.4

95

150

30

12.27

シトステロール

397.4

161

125

18

13.78

シトステロール

397.4

135.2

125

12

13.78

表 1. APCI 採取パラメータ – ダイナミック MRM

ここに示すコレステロール、代謝物、および他の植物ステロールは、Agilent 6460A トリプル四重極 LC/MS 検出器を用いたポジティブイオンモードの APCI 検出と Agilent Poroshell120 EC-C18 カラムを組み合わせた場合に、もっとも効果的に分離することができました。このカラムでは、コレステロールと体内のコレステロール合成の指標であるラトステロールを、2000:1 の比率でも良好に分離できました。この 2 つの化合物は分子量が同じで、効率的に定量するためには十分な分離能が求められるため、このカラムのような分離能は必要不可欠です。

堅牢で高感度の Poroshell120 EC-C18 カラムの利点の詳細を確認し、その利点をぜひともラボに導入してみてください。

Reference

  1. K. Nagy et al. Analysis of sterols by high-performance liquid chromatography/mass spectrometry combined with chemometrics, Rapid Commun. Mass Spectrom. 2006; 20: 2433–2440