Access Agilent 2012年2月号

蛍光サイズ排除クロマトグラフィによる膜タンパク質のスクリーニングを円滑化する Agilent Infinity LC

Katja Kornetzky
アジレント製品マネージャ、1220 Infinity LC、1260 Infinity Bio-inert LC

Center for Molecular Medicine Norway (NCMM) の膜輸送研究グループは、Agilent 1260 Infinity バイオイナート クォータナリ LC システムを用いて、結晶化に関連する膜タンパク質候補のスクリーニングと精製をおこなっています。このグループは、一般的なマーカーである緑色蛍光タンパク質 (GFP) を分析対象タンパク質に融合させています。蛍光検出ののちにフラクションコレクションをおこなえば、結晶化に関連する各膜タンパク質を同定することが可能です。

このメソッドは、GFP で標識した薬剤候補と分析対象の膜タンパク質の結合のモニタリングにも用いることができます。薬剤とターゲットのフラクションを採取したのち、LC/MS でさらに分析することができます。

2 つのプロジェクトの概略図。<strong>プロジェクト 1</strong> では膜タンパク質を研究し、<strong>プロジェクト 2</strong> では薬剤とターゲット膜タンパク質の相互作用を研究します

図 1. 2 つのプロジェクトの概略図。
プロジェクト 1 では膜タンパク質を研究し、
プロジェクト 2 では薬剤とターゲット膜タンパク質の相互作用を研究します (図を拡大)。

2 つのプロジェクトの概略図。<strong>プロジェクト 1</strong> では膜タンパク質を研究し、<strong>プロジェクト 2</strong> では薬剤とターゲット膜タンパク質の相互作用を研究します

図 1. 2 つのプロジェクトの概略図。プロジェクト 1 では膜タンパク質を研究し、
プロジェクト 2 では薬剤とターゲット膜タンパク質の相互作用を研究します

膜輸送研究グループのプロジェクト

J. Preben Morth 博士の率いる膜輸送研究グループは、結晶学の観点から哺乳類の膜タンパク質の構造を研究しています (プロジェクト 1、図 1)。そのほか、 薬剤と膜タンパク質ターゲットの結合反応のモニタリングといったプロジェクトも手がけています (プロジェクト 2、図 1)。

哺乳類の細胞の場合、通常はタンパク質収量が低いため、Morth 博士のグループは、拡張緑色蛍光タンパク質 (EGFP) と分析対象タンパク質の融合を利用しています。適切に変換されたタンパク質を検出する分析テクニックとしては、蛍光検出によるサイズ排除クロマトグラフィ (FSEC) が効果的です。その後、フラクションコレクションにより変換されたタンパク質を採取したのち、精製します。候補が同定されたら、酵母やバキュロウイルスなどの大規模発現システムで発現させることができます。

このグループのおもなプロジェクトは、次の 2 つです。

・プロジェクト 1: GFP と膜タンパク質の融合

・プロジェクト 2: 膜タンパク質をターゲットとして用いる薬剤候補タンパク質と GFP の融合。膜タンパク質への薬剤-GFP の添加と結合の観察。

最大 1 mL のサンプルを Agilent 1260 Infinity Bio-inert  LC システムに注入し、自動的に分析できます

図 2. 最大 1 mL のサンプルを Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムに注入し、
自動的に分析できます (図を拡大)。

最大 1 mL のサンプルを Agilent 1260 Infinity Bio-inert  LC システムに注入し、自動的に分析できます

図 2. 最大 1 mL のサンプルを Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムに注入し、自動的に分析できます

使用機器と結果

膜タンパク質をコードする遺伝子を、GFP 融合ベクターにサブクローニングします。その後、発現ベクターにより細胞を哺乳類細胞に変換します。変換の成功が確認された (蛍光により確認) 細胞を凍結乾燥し、浄化剤含有バッファによりタンパク質を可溶化します (図 2)。異なる浄化剤を用いてスクリーニングをおこない、収量を最適化します。

サンプル 100 µL の 10 種類のアリコートを、Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムに注入します。このシステムは、Agilent Bio SEC-5 HPLC カラム、蛍光検出器、フラクションコレクタを備えています。10 回の各分析で、分析対象物のピークを 1 つのベッセルに採取します。クロマトグラフィーシステムと、分析により得られたクロマトグラムの例を図2に示しています。

膜タンパク質分析の難問

膜タンパク質分析の難問

膜タンパク質には、親水性表面と疎水性表面の両方があります。
これらを溶液中に保つためには、
水性表面を周囲の親水性溶液から遮断する必要があります。
そのためには、界面活性剤を添加します。
面活性剤は、小型の両性分子で、疎水性表面と相互作用しながら、
みずからの親水性部分を周囲環境に露出することができます。
タンパク質の安定性を保てる適切な界面活性剤のスクリーニングには、
い時間と多額のコストがかかります。

もう 1 つの難問は、成長が速くて扱いやすい E. coli では、
哺乳類の膜タンパク質が適切に折りたたまれないため、
発現できないという点です。
のため、より複雑で、成長が遅く、
収量の低い哺乳類細胞を使わなければなりません。

この 2 つの難問に対処するためには、
量のサンプルで各ターゲットを検出できる、
高感度の検出システムが求められます。

Agilent 1260 Infinity
バイオイナート LC
システムの利点

Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムの利点

蛍光検出器とフラクションコレクタを備えた
Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムを使えば、
再現性の高い結果を採取できるため、
GFP との融合が成功した候補のスクリーニングが円滑化します。
検出器のシグナル/ノイズ比が高いため、微量化合物の検出が可能です。
少量サンプルの複数回注入でも、再現性の高い分析をおこなうことができます。
そのため、すべての分析対象ピークをフラクションコレクタの同じベッセルで採取し、
回収率を高めることが可能です。

膜輸送研究グループは、Agilent OpenLAB CDS ChemStation Edition により、
システム全体を総合的にコントロールできる点にも満足しています。
オートサンプラとフラクションコレクタが冷却されているため、
ユーザーによる操作をおこなわなくても、サンプルが中断なく冷却されます。

まとめ

モジュール構成の Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムは、FSEC 実験にきわめて適していることが証明されました。機器コントロール、フラクションコレクション、データ解析は、すべて Agilent OpenLAB CDS ChemStation Edition ソフトウェアでおこなうことができるので、高度な自動化が実現します。

また、内部容量の小さい (4-5 mL) Agilent Bio SEC-5 HPLC カラムを使えば、貴重な浄化剤の使用量を削減することができます。さらに、システムの優れた感度により、タンパク質候補をきわめて迅速に同定し、スケールアッププロセスをスピードアップさせることが可能です。

この例は、膜タンパク質候補のスクリーニングや大規模な膜タンパク質精製において、Agilent 1260 Infinity バイオイナート LC システムが役立つことを示しています。

参考文献