Access Agilent 2012年2月号

短い時間で多くの情報を:複数のHPLCテクニックを用いたエリスロポエチンのストレステスト

Phu Duong
アジレント LC アプリケーションケミスト

Linda Lloyd
アジレント バイオカラム プロダクトマネージャ

エリスロポエチン (EPO) は、赤血球の産生を制御する糖タンパク質ホルモンで、創傷治癒に関係しています。また、脳の損傷を防ぐための神経防護作用や、複数の種類の組織における抗アポトーシス機能も備えています。遺伝子組み換えによるエリスロポエチン製剤  rEPO は、貧血症の治療にもっとも広く用いられている薬剤の 1 つで、世界中の多くの製薬会社が生産しています。

多くの研究室では、高温条件下や極端な pH 条件下での加速分解試験により、rEPO の安定性が検証されています。複数の液体クロマトグラフィテクニックを使えば、rEPO の分解のさまざまな面を検証することができます。最近の研究で我々は、サイズ排除クロマトグラフィを用いて rEPO の凝集パターンを検証しました。また、逆相クロマトグラフィを用いて、タンパク質一次構造のアイソフォームの変化を調べました。

Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 ×  300 mm) を用いた未処理 rEPO と pH ストレス処理 rEPO の分離。低 pH および高温において rEPO が大きく分解されたことがわかります

図 1. Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 × 300 mm) を用いた未処理 rEPO と pH ストレス処理 rEPO の分離。低 pH および高温において rEPO が大きく分解されたことがわかります
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Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 ×  300 mm) を用いた未処理 rEPO と pH ストレス処理 rEPO の分離。低 pH および高温において rEPO が大きく分解されたことがわかります

図 1. Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 × 300 mm) を用いた未処理 rEPO と pH ストレス処理 rEPO の分離。
低 pH および高温において rEPO が大きく分解されたことがわかります

中性 pH で加熱処理した rEPO タンパク質は、Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 ×  300 mm) により良好に分離されています

図 2. 中性 pH で加熱処理した rEPO タンパク質は、Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 × 300 mm) により良好に分離されています
(図を拡大)。

中性 pH で加熱処理した rEPO タンパク質は、Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 ×  300 mm) により良好に分離されています

図 2. 中性 pH で加熱処理した rEPO タンパク質は、Agilent Bio SEC-3 カラム (100Å、4.6 × 300 mm) により良好に分離されています

粒子径 1.8 µm の Agilent ZORBAX RRHD 300SB-C18 カラムを使えば、異なる pH において加熱処理した  rEPO アイソフォームの変化を検証できます

図 3. 粒子径 1.8 µm の Agilent ZORBAX RRHD 300SB-C18 カラムを使えば、異なる pH において加熱処理した rEPO アイソフォームの変化を検証できます (図を拡大)。

粒子径 1.8 µm の Agilent ZORBAX RRHD 300SB-C18 カラムを使えば、異なる pH において加熱処理した  rEPO アイソフォームの変化を検証できます

図 3. 粒子径 1.8 µm の Agilent ZORBAX RRHD 300SB-C18 カラムを使えば、
異なる pH において加熱処理した rEPO アイソフォームの変化を検証できます

サイズ排除クロマトグラフィによるストレスを受けた
rEPO 凝集体の分離分析

最初の実験では、酢酸を用いて、pH 4.0 および 60 °C の条件下で、12 時間にわたって rEPO にストレスを与えました。その後、ポアサイズ 100Å の Agilent Bio SEC-3 HPLC カラムにより、分解産物を分析しました。図 1 (下段) では、ストレスを受けた rEPO が良好にピーク分離されており、ストレスを受けた rEPO と未処理 rEPO の分離プロフィールの顕著な違いが見てとれます。ストレスを受けた rEPO サンプルで、単量体、二量体、凝集体のピークが大きく減少していることは、高温、低 pH 条件下により、rEPO が効率的に分解されたことを示しています。

中性 pH で同じ実験を行ったところ (図 2 および 表 1)、クロマトグラムは熱ストレスに対しては変化しましたが、低 pH 条件下での実験と比較して顕著な変化ではありませんでした。中性 pH 条件下では、未処理サンプルのそれぞれのピークと比較して、二量体ピークが 11.7 % に増大し、単量体ピークは 62.5 % に減少しました。この減少幅は、高温、低 pH 条件下のストレス実験に比べると大きなものではありません。このデータは、Agilent Bio SEC-3 カラムを使えば、異なるサイズの rEPO 不純物と分解産物を良好に分離できることを示しています。

rEPO の条件

%凝集体

% 二量体

% 単量体

% 不純物

未処理

0.6

1.6

85.6

10.3

pH 4 で加熱

検出されず

0.2

6.1

92.2

pH 7 で加熱

検出されず

11.7

62.5

24

表 1. 異なる pH で加熱処理した組み換えヒトエリスロポエチン製剤の
不均一成分の割合 (%)

逆相クロマトグラフィによるストレスを受けた
rEPO アイソフォームの分離分析

2 つ目の実験では、pH 7 および pH 6 の条件下で rEPO を 60 °C で一晩 (16 時間) 加熱しました。その後、Agilent ZORBAX Rapid Resolution High Definition (RRHD) 300SB-C18 カラム (2.1 × 50 mm、1.8 µm) を用いて、サンプルを分析しました。中性  pH では、rEPO は限られたアイソフォームだけを形成しましたが、酸性 pH では、rEPO タンパク質の構造は大きく変化しました (図 3)

3の A 図は、中性 pH で加熱処理したサンプルのデータを示しています。このカラムにより、分解産物またはアイソフォームと rEPO のメインピークがきわめて良好に分離されていることがわかります。

図 3 の B 図は、pH 6 で加熱処理した rEPO の分離結果を示しています。分析条件は中性 pH のときと同じですが、クロマトグラムは大きく変化したことから、酸性条件下で加熱した場合に rEPO の構造が大きく変化し、また分解物が生成することが示唆されました。メインピークのリテンションタイムは 1.49 分から 1.69 分に変化し、右側にショルダーピークが現れています。また、不純物のピークもより多くなりました。これらの結果は、Agilent ZORBAX RRHD カラムにより、rEPO の不純物と分解産物がきわめて良好に分離されたことを明確に示しています。

2 つのテクニックで 1 つの目的を達成

このレビューは、複数のテクニックを用いることにより、組み換えエリトロポエチン製剤などの重要なバイオ医薬品の安定性を幅広く検証し、できる限り短い時間で多くの情報を得られることを示しています。サイズ排除クロマトグラフィは、凝集体、分解物の生成の検証を目的としています。それに対して、逆相クロマトグラフィでは、タンパク質の一次構造であるアミノ酸配列の変化を検証することができます。バイオ医薬品を分析する必要があるなら、幅広いラインナップを持つアジレントの最新 HPLC カラムと、様々な分析に適用できるアジレントの HPLC 機器 に関する詳細をご確認ください。