Access Agilent 2011年10月号

Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート GC カラムを使用した有機リン系農薬の GC/MS/FPD 分析の高速化

Doris Smith、Joan Stevens、Kenneth G. Lynam
アジレントアプリケーションケミスト

ラボの生産性は、農薬の多成分分析における大きな問題の1つです。生産性を向上させるための 1 つの方法として、GC/MS-SIM と FPD の同時検出を使用する方法があります。カラムでの分離後に MSD と FPD の間で分割することにより、1 回の注入で同定、確認、および定量のための補足データが得られます。この実験では、Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート (UI) 高速高分離 GC カラムを使用して、子どもの注意欠陥/多動性障害 (ADHD) に関連づけられてきた有機リン酸系農薬残留物を評価しました。

簡略化された QuEChERS (Quick、Easy、Cheap、Effective、Rugged、Safe:キャッチャーズ) メソッドは、微量対象化合物の検出能力を維持しながら十分なサンプルマトリックスのクリーンアップを提供します。

子どもに対する有機リン酸系残留農薬の危険性

有機リン酸系 (OP) 農薬は穀物の栽培において広く使用されていますが、農薬中毒により急性および慢性効果を引き起こすことがあります。OP 農薬は、調整神経インパルスの重要な酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することにより、昆虫や哺乳類の神経系に影響を与えます [1]。

最近の研究により、OP 農薬への曝露と、子どもの注意欠陥/多動性障害やその他の神経学的発達障害のリスク上昇との関係が明らかになりました [234]。子どもは、体重あたりの農薬暴露量が大人と比較して大きいため、有機リンの毒性に対する感受性が高いと考えられています [5]。また、子どもには OP 農薬を不活性化させる解毒酵素が少ないため、農薬の曝露に対する脆弱性が高くなります [2]。

子どもの曝露の主な原因は残留農薬を含む食品の消費であるため [5]、食品中の残留農薬を測定するための分析は重要です。

カラム

DB-35ms、UI 20 m x 0.18 mm、0.18 µm (p/n 121-3822UI)

GC/MSD

Agilent 7890/5975C

サンプラ

Agilent 7693B、 5.0 µL シリンジ (p/n 5181-1273)

CFT デバイス

パージ済み 2 ウェイスプリッタ (p/n G3180B)、 スプリット比 3:1 MSD:FPD

MSD リストリクタ

1.2 m x 0.15 mm ID、 不活性処理済みフューズドシリカチューブ

FPD リストリクタ

1.4 m x 0.15 mm ID、 不活性処理済みフューズドシリカチューブ

PCM 1

3.8 psi 定圧

インレット

2 µL、 スプリットレス、 250℃、
パージフロー 60 mL/min (0.25 分間)、 ガスセーバー 20 mL/min (2 分間)

キャリア

ヘリウム、定圧 43.5 psi (95℃)

オーブン

95 ℃で 1.3 分間、
15 ℃ /min で 95 ℃ ~ 125 ℃、
5 ℃ /min で 125 ℃ ~165 ℃、
2.5 ℃ /min で 165 ℃ ~ 195 ℃、
20 ℃ /min で 195 ℃ ~280 ℃、
280 ℃で 3.75 分間

ポストラン
バックフラッシュ

280 ℃ で 5 分間、
バックフラッシュ中の PCM 1 圧 70 psi、 バックフラッシュ中の注入口圧力 2 psi

MSD

トランスファーライン 310 ℃、 イオン源 310 ℃、 四重極 150 ℃

表 1. クロマトグラフィ条件

図 1. QuEChERS によるサンプル前処理のワークフロー (図を拡大)

図 1. QuEChERS によるサンプル前処理のワークフロー。

図 2. Agilent J&W DB-35ms UI カラムを使用した 12 種類の対象 OP 農薬の分離 (図を拡大)

図 2. Agilent J&W DB-35ms UI カラムを使用した 12 種類の対象 OP 農薬の分離。

図 3. Agilent J&W ウルトライナート GC カラムによって活性が最小限に抑えられ、複雑な混合物の微量分析が向上します (図を拡大)。

図 3. Agilent J&W ウルトライナート GC カラムによって活性が最小限に抑えられ、複雑な混合物の微量分析が向上します。

図 4. 対象化合物と潜在的なマトリックスの干渉を示す GC/MS-SIM ブランクマトリックスのトレース (図を拡大)

図 4. 対象化合物と潜在的なマトリックスの干渉を示す GC/MS-SIM ブランクマトリックスのトレース。

QuEChERS によるサンプル前処理の高速化

地元の青果店で有機リンゴサンプルを購入しました。リンゴを小さいサイコロ状に刻み、-80 ℃ で冷凍した後、完全に細かく砕きました。QuEChERS メソッドを使用したサンプル抽出の後、dSPE を行いました (図 1) [6]。

Agilent J&W DB-35ms ウルトライナートカラムで得られるシャープで対称性の高いピーク

対象となる 12 種類の OP 農薬を Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート GC カラムで約 30 分間分離した結果、対称性の高いシャープなピークが得られました (図 2)。

低濃度の OP 農薬の定量は、特に広いピーク形状や過度のテーリングを生じさせる極性の高い農薬で困難になります。DB-35ms ウルトライナートカラムが持つ高いレベルの不活性度により優れたピーク形状が得られ、カラムへのサンプルの吸着が低下するため、低い検出下限を達成することができます (図 3) [7]。

QuEChERS メソッドの後に分散 SPE を使用することで、スパイクしたリンゴサンプル中の農薬が保持され、GC/MS 分析用のマトリックスが十分にクリーンアップされました。図 4 に、GC/MS-SIM ブランクマトリックスのトレースを対象化合物のトレースの下に示し、マトリックスと対象化合物との間で発生する潜在的な干渉のレベルを示します。マトリックスに含まれる OP 農薬のピーク形状はきわめてシャープで十分に分離されており、DB-35ms ウルトライナートカラムの性能が優れていることを示しています。

Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート GC カラムで得られる優れた直線性と回収率

このカラムはキャリブレーション範囲全体で優れた直線性を示し、両方の検出器の使用により、すべての農薬について 0.992 以上の R2 値が得られました。回収率は、GC/MS SIM によって 150、300、および 750 ng/mL で、リン酸モードの FPD によって 50、100、250 ng/mL で測定しました。強化実験の回収率は、GC/MS-SIM と FPD の両方で平均 75% を超え、RSD は 10% 未満となりました。

少ない手間で多くの結果を取得

ここからわかるように、カラムでの分離後に MSD と FPD の間で分割することにより、1 回の注入で OP 農薬の選択性、同定、確認が促進されるため、ラボの生産性が向上します。Agilent J&W DB-35ms ウルトライナート GC カラムが対象の OP 農薬を分離し、極性農薬について優れたピーク形状を提供するため、さまざまな果物について、目標の最大残留レベルを下回るレベルでより信頼性の高い定量を実行できることも明らかです。さらに、Agilent QuEChERS 抽出および分散 SPE キットは、リンゴに含まれる OP 農薬の精製のためのシンプルで高速、そして経済的なメソッドを提供します。

アジレントのウルトライナートソリューションの詳細情報をご覧ください。また、新しいカタログ(日本語、PDF)をダウンロードすることもできます。

References

  1. Sultatos, L.G. Mammalian toxicology of organophosphorus pesticides. J. Toxicol. Environ. Health. 1994; 43(3): 271-289.
  2. Eskenazi, B., Marks, A.R, Bradman, A., et al. Organophosphate pesticide exposure and neurodevelopment in young Mexican-American children. Environ. Health Perspect. 2007; 115: 792-798.
  3. Brouchard, M.F., Bellinger, D.C., Wright, R.O., and Weisskopf, M.G. Attention-deficit/hyperactivity disorder and urinary metabolites of organophosphate pesticides. Pediatrics 2010; 125; e1270-e1277.
  4. Marks, A.R., Harley, K., Bradman, A., Kogurt, K., Barr, D.B., Johnson, C., Calderon, N., and Eskenazi, B.Organophosphate pesticide exposure and attention in young Mexican-American children. Environ. Health Perspect. doi:10.1289/ehp.100205.
  5. NRC (National Research Council) (1993) Pesticides in the Diets of Infants and Children. National Academy Press, Washington, DC.
  6. Smith, D. and Lynam, K. Organophosphorus pesticides in apple matrix by GC/MS/FPD using an Agilent J&W DB-35ms Ultra Inert GC Column. Agilent Publication 5990-7165EN.
  7. Lynam, K. and Smith, D. Challenging Pesticide Analysis Using an Agilent J&W DB-35ms Ultra Inert GC Column.Agilent Publication 5990-6595EN.