Access Agilent 2011年7月号

ウール入りウルトライナート注入口ライナによる規制薬物スクリーニング分析結果の改善

Limian Zhao、Bruce Quimby
アジレントGC アプリケーションケミスト

GC 注入口ライナは、注入口システムの中核です。ここでサンプルが気化し、キャリアガスと混ざり、キャピラリカラムに導入されます。不活性のガラスウール入り注入口ライナは、法医学および毒物学アプリケーションにおいて、満足のいくクロマトグラフィ分析をおこない、正確で再現性の高いレスポンスを得るために欠かせません。ガラスウール入りの Agilent MS 認定ライナは、一般的なアプリケーションにおいて優れた性能を発揮します。しかし、規制薬物などの活性の高い化合物を分析する特別なアプリケーションでは、信頼性の高い結果を得るために、より優れた不活性さを備えたライナが必要です。ウール入りの注入口ライナは、ウールによりサンプル混合が均質化し、定量効率が向上することから、法医学などのアプリケーションで広く用いられています。ウールは表面積が広いため、液体サンプルの気化も促進します。また、サンプル中の不揮発性残留物を捕捉するので、サンプルマトリックスが GC カラムに悪影響を与えるのを防ぐ効果もあります。さらに、ウール入りライナは、サンプル液滴が気化前に注入口の底に達するのを防ぐことで、サンプルのロスも低減します。こうした理由から、ライナ本体とガラスウールが効率よく、確実に不活性化されているウール入りウルトライナート注入口ライナは、法医学などのアプリケーションに最適といえます。

図 1. Agilent ウルトライナートライナでは、優れたピーク形状と高いレスポンスが得られています (オンカラム 5 ng の確認用標準) (図を拡大)。

図 2. ウール入りの Agilent ウルトライナートシングルテーパースプリットレスライナを用いて、Agilent GC/MS Forensic/Toxicology Analyzer 確認用標準 (オンカラムで 5 ng の確認用標準) を分析して得られたクロマトグラムでは、すべての化合物について、満足のいくピーク形状が得られています (図を拡大)。

不活性化により性能を向上

アジレントのウルトライナートライナの不活性化プロセスは、ガラスウールの不活性化効率と堅牢性を大幅に高めます。ガラスウール入りライナを用いた GC/MS による規制薬物の分析について、ここでは一般的で分析困難な 28 種類の塩基性薬物化合物 (表 1) を含む Agilent Forensic/Toxicology Analyzer 確認用標準を用いて、ウール入りライナを検証します。この標準に含まれる化合物は、早期から後期までの溶出範囲をカバーしています。

レスポンスとパフォーマンス

塩基性薬物の吸着や分解は、ピークの広がりや歪み、ピークテーリング、ゴーストピーク、感度の低下といったクロマトグラフィ上の問題を引き起こすことがあります。一般に、ピーク形状の問題は、フェンテルミン、メタンフェタミン、MDA、MDMA といった溶出の早い化合物で生じます。テマゼパムなどの溶出の遅い化合物では、感度の低下によりシグナルが消失することがあります。他社製のライナでは、ピークの広がりや歪み、レスポンスの大幅な低下といったクロマトグラフィ上の問題が生じます。しかし、アジレントのウルトライナート不活性ライナでは、ピーク形状が向上し、多くの場合、より高いレスポンスが得られます (図 1)。図 2 のクロマトグラムは、ウール入りウルトライナートライナにより、もっとも良好なクロマトグラムが得られることを示しています。このことから、ウルトライナートの不活性化プロセスでは、規制薬物を吸着や分解から保護するに足るライナとガラスウールの不活性が得られることがわかります。

繰り返し性能と安定性

0.5 µg/mL の標準サンプル 1 µL を 50 回にわたって繰り返し注入し、複数注入における再現性と不活性の安定性を検証しました。表 1 に、オンカラム 0.5 ng (低濃度では、高濃度に比べて偏差が大きかったため、この値を採用しました) における RSD 値を示しています。22 の化合物で優れた再現性が得られ、RSD は 20 % 未満でした。5 つの化合物では、RSD は比較的高くなっていますが (20~25 %)、オンカラム 0.5 ng の許容範囲内にとどまっています。テマゼパムは分析がきわめて難しい化合物で、ライナの不活性に対してもきわめて高い感受性を示します。

薬物 (ピーク番号) RSD (%) 薬物 (ピーク番号) RSD (%)
アンフェタミン (1) 0.3  ロラゼパム (15) 20.9 
フェンテルミン (2) 1.1  ジアゼパム (16) 3.7 
メタンフェタミン (3) 1.5  ヒドロコドン (17) 3.7 
ニコチン (4) 2.3  テトラヒドロカンナビノール (18) 8.5 
MDS (5) 3.7  オキシコドン (19) 22.2 
MDMA (6) 2.2  テマゼパム (20) 59.9 
MDEA (7) 2.0  フルニトラゼパム (21) 8.7 
メペリジン (8) 1.9  ヘロイン (22) 10.7 
フェンシクリジン (9) 15.8  ニトラゼパム (23) 11.2 
メタドン (10) 3.4  クロナゼパム (24) 12.0 
コカイン (11) 7.8  アルプラゾラム (25) 13.1 
プロジフェン (12) 4.4  ベラパミル (26) 15.4 
オキサゼパム (13) 20.4  ストリキニーネ (27) 11.0 
コデイン (14) 20.5  トラゾドン (28) 23.6 
 
薬物 平均レスポンス
ファクタ (n= 6)
RSD
(%)
メタンフェタミン 0.905  3.8 
MDMA 0.824  4.4 
フェンシクリジン 0.503  2.5 
コカイン 0.649  2.0 
オキサゼパム 0.055  7.6 
コデイン 0.097  4.2 
オキシコドン 0.075  6.5 
テマゼパム 0.104  11.7 
ヘロイン 0.098  2.7 
ニトラゼパム 0.036  6.3 
クロナゼパム 0.034  3.5 
トラゾドン 0.062  4.4 
表 1. Agilent ウール入りウルトライナートライナを用いた 50 回注入による再現性試験 (オンカラムで標準 0.5 ng、n = 3)
 
表 2. ライナ間再現性: 4 ロットの Agilent ウール入りウルトライナートライナから選んだ 6 つのライナにおける高感受性塩基性薬物の平均レスポンスファクター (5 µg/mL および 500 ng/mL) と RSD 値

再現性と一貫性

さまざまなロットのウルトライナートライナを試験し、ライナ間再現性を評価しました。各濃度について、レスポンスファクターを算出しました (表 2)。その結果、優れたライナ間一貫性が示されました。4 つの異なるロットから選んだ 6 つのライナにおける RSD は、テマゼパムの 11.7 % を除き、いずれの化合物でも 7 % 未満でした。

不活性の強み

ウール入りの Agilent ウルトライナートライナは、効率的で堅牢な不活性化により、一般的で分析が困難な塩基性規制薬物の分析において、優れた不活性を提供します。ライナ間再現性にも優れ、RSD は平均で 5 % です。サンプル混合や気化の均質化、不揮発性残留物の捕捉、カラムおよび検出器の保護といったウール入りライナの利点は、クロマトグラフィ品質や活性の高い化合物の感度に悪影響を与えません。ウール入り Agilent ウルトライナートライナは、規制薬物の分析や、一般的な法医学および毒物学スクリーニングに最適な選択肢です。

この分析の詳細については、アジレントアプリケーションノート 5990-7596EN をダウンロードしてください。他社ガスクロマトグラフィ用の高品質消耗品については、Agilent CrossLab をご確認ください。