Access Agilent 2011年6月号

オンサイトで TSP を使用したペプチド検出と野菜の分析

Suli Zhao および Andy Zhai
アジレントアプリケーションケミスト

従来のサンプル前処理およびクリーンアップ技術では、特に食物としての野菜の残留農薬分析は、時間、労力、コストが増える傾向があります。

例えば QuEChERS 法は前処理プロセスの時間を短縮できますが、オンサイト(現場)での測定では、迅速な分析サイクルと限られた溶媒使用の制限があり不適切です。固相抽出 (SPE)、液液抽出、ゲル浸透クロマトグラフィ (GPC) などのその他の技術では、メソッド全体のコストが増加し、農薬の回収率が低下することがあります。

堅牢な代替技術: サーマルセパレーションプローブ (TSP)

TSP は、複雑なマトリックスのサンプル前処理時間を短縮し、コストを削減します。TSP では、少量サンプル (または液体抽出物) を 40 µL のディスポーザブルマイクロバイアルに入れます。サンプルとマイクロバイアルを手作業で GC または GC/MS インジェクタに入れ、迅速に加熱して、農薬などの半揮発性化合物を加熱脱着します。このアプローチの主な利点は、GC ライナとカラムを汚染する可能性がある不揮発性マトリックス成分がマイクロバイアルの内部に留まり、注入のたびに廃棄できることです。

図 1. キュウリ抽出物に含まれる 12 種の農薬の TIC。TSP による注入により、ピークディスクリミネーションなしに優れたピーク形状が得られます (図を拡大)。

図 2. 50 回の注入試験のベースライン (図を拡大)。

図 3. 9 種類の有機リン系農薬と共にスパイクしたトマト、キュウリ、およびピーマンサンプル (それぞれ 100 ng/ml) のクロマトグラム (図を拡大)。

この実験では、キュウリ、トマト、ピーマンのサンプルをさまざまな濃度の農薬と共にスパイクし、クリーンアップなしで TSP を使用して前処理し、GC/MS 分析を行いました。アジレントの 5975T LTM GC/MSD は、迅速なオーブン昇温と高速の冷却サイクルにより、この分析に最適です。「高速の」GC LTM カラムによってオーブンの昇温がさらに迅速になり、実行時間とサイクル時間が短縮されました。

TSP を使用したオンサイト農薬検出のための高速メソッド

クリーンアップ手順を実行しない複雑な抽出物では、TSP は、多くの半揮発性マトリックス成分中の対象化合物を測定するために非常に選択性の高い検出技術を提供します。

ここで、アジレントの GC MXLATOR ソフトウェアツールを使用して、より迅速なメソッドのための分析条件を作成します。 アジレントのメソッド変換 (MTL) およびリテンションタイムロッキング (RTL) ソフトウェアを組み合わせて、これらの分析条件を決定しました。調整が正確であるため、これらの高速メソッドを、農薬ライブラリとあわせて使用することで、スクリーニングプロセスがよりパワフルでより適応性のあるものとなりました。

結果: 迅速なレスポンスと高速の同定

アジレントの高速メソッドを TSP と共に使用することで、オンサイトの検出で迅速なレスポンスと高速の同定が可能になります。

  • TSP 適合性試験: 図 1 からわかるように、TSP の注入によって、有機リン系、有機塩素系、ピレスロイド系を含むさまざまなタイプの農薬について、ピークディスクリミネーションなしに優れたピーク形状が得られました。

  • 信頼性試験: 17 種の有機塩素系農薬をアセトンに溶解した (1.0 µg/ml) 溶液を8 回連続して注入しました。すべての化合物の RSD 値は 2.3 ~ 7.8% でした。これらの結果はオンサイト分析の要件を満たしています。

  • 「クリーン」機能試験: トマト抽出物の50 回連続注入のベースライン試験をクリーンアップ手順なしで行いました (高沸点化合物の場合は実行時間を延長)。10 回注入を行うたびにベースライン試験を実施しました。図 2 は、「干渉」の多いサンプルの注入後、このサンプルでクリーンアップ手順を実施していないにもかかわらず、システムがクリーンな状態を維持していることを示しています。これにより、TSP をサイクル時間短縮のための有効なツールとして使用できることが証明されました。
      量 (PPM) AMDIS NIST
リテンション
タイム
Cas
番号
成分名 ChemStation マッチング リテンション
タイムの差 (秒)
逆マッチング ヒット
番号

1.3748

62737

ジクロルボス

98

79

-0.9

74 1

2.2261

13194484

エトプロホス

98

96

-0.4

89 1

2.3503

298022

ホレート 100 97

-0.6

92 1

2.5501

333415

ダイアジノン 100 78

-0.2

74 1

2.7639

298000

メチルパラチオン 100 92

-0.4

81 1

2.8992

121755

マラチオン 100 77

-0.1

81 1

2.9245

2921882

クロルピリホス

98

93

-0.3

87 1

2.9565

56382

パラチオン 100 79

-0.3

77 1

3.1993

961115

テトラクロルビンホス

98

83

0.1

82 1

表 1. 図 3 で分析した混合物の DRS レポート。アジレントの RTL および DRS ソフトウェアは、マトリックスの半揮発性物質からターゲットを迅速に「抽出」するための有効なツールです。

  • 図 4. AMDIS ソフトウェアにより得られた、スパイクしていないトマト抽出物中のプロシミドンのデコンボリューションスペクトル。デコンボリューションなしでは、ライブラリ検索を使用して化合物を特定できない点に注意してください (図を拡大)。

    不明な農薬が追加されたサンプルと実際のサンプルの試験: TSPと、デコンボリューションレポート作成ソフトウェア (DRS) を使用すると、濃度が 100 ppb を超える場合には、試験で実施したほとんどの農薬を確認することができました (図 3)。唯一の例外はアセフェートとメタミドホスでした。濃度を 500 ppb まで上げることにより、すべての農薬を DRS で確認することができました。さらに、スパイクしていないトマト抽出物で、DRS により 3 種類の農薬 (ピリメタニル、プロシミドン、ジメトモルフ) が特定され、確認されました (図 4)。

これらの結果は、アジレントの可搬型 5975T LTM GC/MSD を TSPによる注入 およびデコンボリューションレポート作成ソフトウェアとあわせて使用することで、野菜中の農薬のオンサイト測定と迅速なデータ解析を正確に実行できることを示しています。

ラボワークとフィールドワークの速度と確度の保証

迅速で信頼性の高いデータ解析がラボ環境の外で必要な場合は、アジレントの可搬型 5975T LTM GC/MSD システムデコンボリューションレポート作成ソフトウェアをご検討ください。

参考文献

  1. C. Kai Meng; Fast screening of pesticides and endocrine disrupters using the Agilent 6890/5973N GC/MSD system, part II, 5980-1057EN
  2. Philip L. Wylie; Screening for pesticides in food using the Japanese positive list pesticide method: benefits of using GCMS with deconvolution reporting software and a retention time locked mass spectral database, 5989-7436EN 
    (日本語版アプリケーションノート: ポジティブリスト農薬メソッドを用いた食品中農薬のスクリーニング、5989-7436JAJP