Access Agilent 2011年5月号

"新製品Bond Elute Plexa PAX, PCXおよび抽出メソッドを用いたポリマーアニオン交換 SPE の最適化"

Paul Boguszewski
アジレントプロダクトマネージャ、サンプル前処理

William Hudson
アジレントリサーチャー

ポリマー固相抽出 (SPE) は、ここ数年のあいだに製薬生物学分析で広く用いられるようになったメソッドです。その理由として、以下のような SPE の特性が挙げられます。

  • 簡単で堅牢な汎用メソッドを利用できるので、未知化合物や新規化合物において、時間のかかるメソッド開発を避けることができる。

  • 高いキャパシティ/ロード性能: SPE ベッド重量が小さいため、溶媒の使用量を最小限に抑えられる。ロード性能が 10~12 % で、同等のシリカベースベッドキャパシティの 2~4 % より高い。

  • 広い pH 範囲で安定性を保ち、すべてのメソッドに使用できる。

  • コンディショニング後の乾燥に強いため、使用が簡単になり、スループットが向上するほか、エラーも減少する。

開発中および承認済みの薬剤分子の大多数は、極性のある塩基性か中性です。これらの分子は、親水性調整を施した無極性吸着剤 (中性分子用の Bond Elut Plexa など) か、混合モードポリマーカチオン交換吸着剤 (塩基性分子用の Plexa PCX など) を用いれば、良好に SPE で抽出できます。

一部の製薬アプリケーションでは、極性酸性基および無極性酸性基により、まったく新しい治療上の作用機構が得られることがあります。そのため近年では、酸性薬剤の開発が着実に増えています。こうしたタイプの分子の場合、生物分析ラボの LC/MS/MS 分析で使用できるクリーンなサンプルを得るためには、アニオン交換 SPE の手法が必要となります。

高度なポリマーデザインによりメソッドの再現性とデータの信頼性を確保

これまで、混合モードアニオン交換 SPE は、堅牢で再現性の高いメソッドの開発に長い時間 (さらに高いコスト) が必要とされるため、困難な手法とされてきました。ポリマーアニオン交換吸着剤は、バッチ間で幅の広いイオン交換キャパシティを示すことがあるため、メソッド再現性が低くなったり、データの質が悪化したりすることがあります。

化合物 LogP pKa
 アトルバスタチン 5.7 4.5
 ジクロフェナク 4.2 4.2
 フロセミド 1.5 4.7
 ケトプロフェン 3.2 5.2
 プラバスタチン 2.6 4.6

表 1. この研究で用いた酸性薬剤分子

Agilent Plexa PAX 粒子は、そうした問題を克服しました。この粒子の機能化には、きわめて高度な再現性でアニオン交換ローディングを制御する独自のプロセスが用いられています。これにより、化合物メソッドのライフタイム全体でより堅牢な性能が得られます。

Plexa PAX SPE は、他の Plexa SPE ファミリー製品と同じ、革新的な塩基性ポリマー粒子技術をベースにしています。単分散な粒子サイズ分布により、充てんベッドのつまりを最小限に抑えながら、優れたフロー特性と使いやすさが得られています。また、アミドを用いない粒子技術の採用により、結合部位が生じず、タンパク質や脂質といった内因性の干渉が排除されます。

一連の一般的酸性薬剤の血漿からの比較抽出

この例では、Bond Elut Plexa PAX と最適化した PAX メソッドを用いて、一連の極性および無極性酸性薬剤 (表 1) を血漿から抽出しました。この研究で得られたデータを、他のメーカーのポリマーアニオン交換カラムと同メーカーの推奨メソッドを用いて得られたデータと比較しました。

アジレントメソッドにより得られる 2 つの大きな利点は、抽出効率とクリーンさの大幅な向上です (表 2)。

  • 血漿の前処理: 2 % NH4OH 溶液で血漿を 3:1 に希釈すると、2 つの利点が得られます。まず、サンプルの粘度が低下し、つまりの可能性が低くなります。また、水酸化物イオンにより SPE 吸着剤の第 4 級アミン基の活性化が促進され、イオン交換効率が向上します。

  • 洗浄手順: ロードにおいて優れたイオン交換効率が得られるため、2 回連続で洗浄をおこない (水およびメタノール)、より多くのマトリックス干渉を除去することができます。他メーカーのメソッドは、この段階では調整水による洗浄しかおこなうことができません。

    Plexa PAX では、より徹底的な洗浄が可能になることから、クリーンさの向上 (タンパク質および脂質イオンサプレッサーの減少)、回収率および RSD の向上といった利点が得られます (表 3)。
  Plexa PAX (30 mg) 他の AX ポリマー SPE (30 mg)
サンプル 100 µL 血漿 100 µL 血漿
前処理 2 % NH4OH で 1:3 に希釈 なし
コンディショニング 1. 500 µL MeOH
2. 500 µL H2O
1. 500 µL MeOH
2. 500 µL H2O
洗浄 1. 500 µL H2O
2. 500 µL MeOH
2 % NH4OH を含む H2O 500 µL
溶出 2 x 250 µL
5 % ギ酸を含む MeOH
500 µL
5 % ギ酸を含む MeOH

表 2. Plexa PAX および他メーカーの AX ポリマー SPE 装置のメソッドワークフロー

化合物 Bond Elut Plexa PAX 他の AX SPE
  % Rec % RSD % Rec % RSD
アセチルサリチル酸 56 4.9 3 16.8
アトルバスタチン 62 4.4 52 19.0
ジクロフェナク 52 3.7 47 7.0
フロセミド 96 6.1 76 7.0
ケトプロフェン 67 2.3 59 17.0
プラバスタチン 95 3.4 49 18.0

表 3. 各種の酸性化合物の絶対回収率データ

LC 条件

移動相: A: 5 mM ギ酸アンモニウム、
     B: メタノール
グラジエント: t = 0~60 % A:40 % B
        t = 3:0~3:59 分 20 % A:80 % B
        t = 4:0~5:00 分 60 % A:40 % B
カラム: Agilent Pursuit XRsUltra 2.8
     Diphenyl、50 x 2.0 mm (部品番号 A7521050X20)

すべてのサンプルを蒸発させ、80:20 5 mM ギ酸アンモニウム: MeOH 100 µL に再溶解しました。

 


絶対回収率 (添加移動相を用いたキャリブレーションにより算出) には、マトリックス干渉により生じるイオン抑制効果の影響が顕著に現れるため、絶対回収率の数字を見れば、サンプルの全体的なクリーンさがわかります。これは生物分析のメソッド開発における重要な考慮事項です。

極性および無極性酸性低分子の分析結果を向上させる最適化メソッド

この研究では、最適化された吸着剤ケミストリと高度な SPE 抽出メソッドを組み合わせれば、ポリマーアニオン交換ベースの SPE により、再現性と堅牢性の高い生物分析アプリケーション用の汎用ワークフローが実現することが証明されています。

最先端の SPE 消耗品や最新の SPE テクニックの詳細については、アジレントの SPE 製品ページをご覧ください。