Access Agilent 2011年1月号

ペプチド分析のピークキャパシティを高める Agilent 1290 Infinity LC

Siji Joseph
Agilent アプリケーションサイエンティスト

ペプチドマッピングは、バイオ医薬品業界で行われるタンパク質製剤の QA/QC 分析における重要なステップです。大きな課題となるのは、タンパク質の特徴分析に用いられる複雑なタンパク質分解物のクロマトグラフィ分離です。ペプチド断片の数が多いことに加えて、酵素によるタンパク質分解の際に酸化などの副反応が生じることもあるため、サンプル成分の分離はきわめて困難です。しかし、Agilent 1290 Infinity LC システムと、1.8 µm 粒子を充てんした Agilent Rapid Resolution High Definition (RRHD) カラムを組み合わせれば、こうしたきわめて複雑なサンプルでも、効率よく分離することが可能になります。

分離能を向上、時間を短縮

ペプチドマッピングに適した分離を実現するために 5 µm 粒子を充てんした LC カラムを使用する場合、長い分析時間が必要となるケースが多くなります。2 µm 未満の粒子を用いた超高速液体クロマトグラフィ (UHPLC) なら、時間あたりの分離能を高め、感度を向上させ、分析時間を短縮することが可能です。これにより、ペプチドマッピングの問題が解消されます。しかし、小さい粒子を充てんしたカラムでは背圧が高くなるため、一部の LC では高流速での使用が制限されることがあります。さいわい、1290 Infinity LC のパワーレンジ (流速に対する最大圧力) なら、この問題を克服できます。独自の設計を備えた Agilent 1290 Infinity LC では、UHPLC 分析時に 1200 bar  (120 MPa)の背圧に耐えることができます。そのため、高流速を用いて分析時間を短縮することが可能です。

図 1. 分析時間が一定の場合、流速が高くなるとピークキャパシティ (P) が向上します。背圧は、1290 Infinity LC の上限である 1200 bar 以下に保たれています(図を拡大)。
図 2. 流速を 0.2 mL/min に保った場合、グラジエント時間が長くなるとピークキャパシティ (P) が向上します(図を拡大)。

1290 Infinity LC の利点を示すために、多くのピークを含む、2つのサンプルの分離を実行しました。複雑なサンプルであるトリプシン消化タンパク質サンプルと、ピークキャパシティ (分離可能なピークの最大数) を計算するための 5 成分のペプチド標準ミックスを選びました。1290 Infinity LC システムと Agilent ZORBAX Eclipse Plus C18 RRHD カラム (150 mm x 2.1 mm x 1.8 µm) を用いて、この 2 つのサンプルをさまざまな流速とグラジエント勾配で分析しました。Agilent 1290 Infinity LC システムは、一体型の真空デガッサを備えたバイナリポンプ、オートサンプラ、カラムコンパートメント、高速高感度のダイオードアレイ検出器で構成されています。

Sigma-Aldrich (H2016) から入手した 5 成分のペプチド標準ミックスを用いて、ピークキャパシティを計算しました。標準ミックスの成分は、GLY-TYR、VAL-TYR-VAL、メチオニンエンケファリンアセテート、ロイシンエンケファリン、アンジオテンシン II アセテートです。消化タンパク質サンプルと標準ミックスを注入し、グラジエント (溶出時間) の異なる 10 回の分析を行いました。各グラジエントで 6 種類の流速を使用したため、グラジエントは全部で 60 種類になります。各グラジエントについて、5 種類の標準ペプチドの平均ピーク幅を計算し、この値を用いて、各グラジエントのピークキャパシティを算出しました。

流速が高くなるほどピークキャパシティが向上

図 1 には、ウシ血清アルブミン (BSA) の消化物をさまざまな流速で分析した結果を示しています。流速を 0.2 mL/min から 1.2 mL/min に高めるにつれて、5 分間グラジエントのピークキャパシティが向上しています (約 116 から227)。圧力は 366 bar から 1050 bar に増加しました。このクロマトグラムは、1290 Infinity LC システムの圧力範囲の広さにより、高流速の使用が可能になっていることを示しています。

グラジエント時間が長くなるほどピークキャパシティが向上

図 2 には、グラジエント時間を 5 分から 50 分に拡大して、同じ BSA 消化物を分析した結果を示しています。このクロマトグラムでは、流速を一定に保ったままグラジエント時間を 10 倍にすると、ピークキャパシティが 3.5 倍に向上することが示されています。流速とグラジエントタイムの両方を最適化すれば、目標とする分析時間で最高のピークキャパシティを得ることができます。

トリプシン BSA 消化物を用いたこの例では、流速とグラジエント時間を最適化すれば、複雑なペプチド混合物のピークキャパシティを向上できることが示されています。ただし、この最適化には、高圧で高流速を使用できる最適なパワーレンジを備えた UHPLC システムが必要となります。比類のないパワーレンジを備えた 1290 Infinity LC システムなら、複雑なサンプルの分離が可能になります。1.8 µm 粒子を充てんしたAgilent ZORBAX RRHD カラムを併せて使えば、ピーク形状を向上させることができます。

LC を用いてペプチドマッピングや複雑な混合物の分析を行っている方は、無料 DVDe-セミナーで Agilent 1290 Infinity LC システムの詳細をご確認ください。本研究で用いた実験条件の詳細については、アジレント文献番号 5990-6313EN をご覧ください。