Access Agilent 2010年11月号

Agilent 5975T LTM GC/MSD を用いた野菜中農薬のオンサイト分析

Suli Zhao、Andy Zhai
アジレントケミスト

食品の安全性分野では、新たな技術の登場により、産地で農薬分析を実施できるようになりつつあります。これまで、農業従事者や政府当局は、産地から遠く離れたラボへ野菜や果実のサンプルを送り、結果が出るのを待たなければなりませんでした。この方法では、農業従事者のコスト負担が大きくなるほか、国民の健康を守るために必要となる迅速な政策決定が妨げられてしまいます。また、輸送中のサンプルの分解により、不正確な結果が生じることもあります。そのため、農業従事者や政府規制当局には、迅速で正確な判断を下すために、現地で農薬分析を行うソリューションが求められています。

可搬型 GC/MS を使えば、リアルタイムに近い検出が必要とされる場合や場所において、より迅速に分析データを測定することができます。また、毒性の高い農薬の場合は、標準的な質量スペクトルライブラリをもとに、化合物を迅速かつ正確に同定することができます。

Agilent 5975T Low Thermal Mass (LTM:低熱容量) GC/MSD は、アジレントのラボベースのベンチトップ型 GC/MSD と同じ高性能、信頼性、高品質の結果を実現する初の商用可搬型 GC/MSD システムです。消費電力の少ない、コンパクトな装置で、優れた防振基盤も備えています。このシステムでは、アジレント独自の LTM 技術が採用されています。LTM 技術は、温度ランプ速度を劇的に高めることで、より速い GC 分析を可能にします。その他のアジレント製品と組み合わせれば、複雑なサンプルに含まれる化合物の高速オンサイトスクリーニングおよび分析を可能にするトータルソリューションが実現します。

図 1. Agilent 5975T LTM GC/MSD で分析した農薬 59 種類のトータルイオンクロマトグラムは、優れた分離能を示しています (図を拡大)。
図 2. チェリートマトに添加した農薬 0.2~1.0 µg/g のクロマトグラム:DRS ソフトウェアにより、2~3 分ですべてのターゲット農薬が検出されています (図を拡大)。

シンプルで迅速なサンプル前処理により溶媒コストを削減

オンサイト農薬分析では、Agilent サンプリーク QuEChERS 抽出 SPE キットと Agilent サンプリーク QuEChERS EN 分散 SPE キットを使って、サンプルの前処理を行うことができます。プロセス全体で必要な有機溶媒は 20 mL 未満、所要時間は 20 分未満です。キュウリおよびチェリートマトに含まれるターゲット化合物の回収率は、いずれも 70.0 ~ 118 % です。この回収率は、この QuEChERS メソッドがモバイルラボでのオンサイト検出に適していることを示しています。

機器の汚染を防ぐメソッド

オンサイト検出のハイスループット分析では、可搬型 GC/MSD の汚染を防ぐ機能が不可欠です。残留農薬分析で複雑なクリーンアップ手順を用いる場合、内因性化合物とともに農薬を除去してしまうおそれがあるため、一般に抽出サンプルはダーティなものになります。Agilent 5975T LTM GC/MSD は、2 つの方法でマトリックス汚染を回避します。1 つ目は、きわめて「ダーティ」なマトリックスを除去するシンプルな QuEChERS サンプル抽出、2 つ目は容易に交換できるのガードカラムです。いずれの手法でも、LTM カラムと MS をクリーンに保つことができます。これにより、Agilent 5975T LTM GC/MSD はオンサイト検出に適したシステムになっています。Agilent デコンボリューションレポート作成ソフトウェア (DRS) を使えば、干渉をはっきりと確認してターゲット化合物 (この場合は農薬) を同定することができます。

優れたスクリーニング機能を備えた Agilent DRS ソフトウェア

GC/MS 用の Agilent DRS は、アジレントのリテンションタイムロッキング (RTL) 技術、Agilent ChemStation 定量、そして米国標準技術局 (NIST) 自動質量スペクトルデコンボリューションおよび同定ソフトウェア (AMDIS) の機能を組み合わせたものです。このソフトウェアを使えば、完全に自動化されたレポート作成パッケージにより、従来の数時間単位ではなく、数分単位で農薬や環境ホルモンを定量およびスクリーニングすることができます。例として、農薬を添加したチェリートマト抽出物のクロマトグラムを図 2 に示しています。表 1 では、スクリーニング結果を示しています。この DRS レポートは、わずか 2~3 分で作成されたものです。

  Amount (ng) AMDIS NIST
R.T. Case # Compound Name ChemStation AMDIS Match R.T. Diff sec. Reverse Match Hit No.
5.6755 10265926 Methamidophos 0.38   72 1.2 83 1
5.7722 62737 Dichlorvos 0.13   95 -3.5 90 1
7.5277 7786347 Mevinphos 2.55   96 -4.0 80 1
11.2899 55283686 Ethalfluralin 0.77   94 0.4 87 1
11.6607 1582098 Trifluralin 1.3   93 1.4 86 1
11.7711 6923224 Monocrotophos 0.1   83 2.0 80 1
13.1776 1912249 Atrazine 0.7   94 1.1 85 1
24.7983 72208 Endrin 0.06   91 3.2 90 1
25.214 33213659 Endosulfan (beta isomer) 0.1   87 4.0 81 2
25.8277 72548 p,p'-DDD 0.13   97 0.5 91 1
27.919 2312358 Propargite 1.65   86 2.3 89 1
29.5230 116290 Tetradifon 0.08   95 8.6 88 2
29.8285 2310170 Phosalone 0.32   85 9.1 80 1
29.8709 2385855 Mirex 0.66   77 2.2 82 1
31.6063 52645531 Permethrin I 0.2   96 0.2 91 3
31.8530 56724 Coumaphos 1.03   89 0.2 80 1
33.5186 80844071 Ethofenprox 0.4   93 -0.1 92 1
35.9745 52918635 Deltamethrin     44 -1.6 64 1
36.506 52918635 Deltamethrin 0.05          
13.636   Phenanthrene-d10            

R.T. = リテンションタイム
R.T. Diff sec. = リテンションタイム差 (単位:秒)
Hit Num = ヒット数
表 1. 添加チェリートマトの DRS 結果の一部

農薬検出を評価するために、さまざまな濃度 (0.05 µg/g~1.0 µg/g)のターゲット農薬をチェリートマトおよびキュウリに添加しました。0.05 µg/g の濃度でも、DRS ソフトウェアにより、デルタメトリンを除くほとんどのターゲット農薬が 2~3 分で検出されています。0.10 µg/g の濃度では、すべてのターゲット農薬が検出されました。

高性能のオンサイト分析

小型で消費電力が少なく、堅牢な可搬型 Agilent 5975T LTM GC/MSD は、移動を伴うラボでの使用に最適なシステムです。アジレントは食品中農薬の分析用に、サンプル前処理手順を簡単にする SampliQ QuEChERS キットや、分析カラム(LTMカラム)をクリーンに保つガードカラム、迅速で信頼性の高いデータ解析を可能にするデコンボリューションレポート作成ソフトウェアも提供しています。これらの製品を組み合わせれば、産地でのオンサイト農薬分析を可能にする優れたソリューションが実現します、詳細については、アジレントの担当営業にお問い合わせください。

参考文献

  • Philip L. Wylie, "Screening for 926 Pesticides and Endocrine Disruptors by GC/MS with Deconvolution Reporting Software and a New Pesticide Library," Agilent Application Note 5989-5076EN日本語版5989-5076JAJP), April, 2006.