Access Agilent 2010年11月号

オリーブ油に含まれているものは? QuEChERS (キャッチャーズ)サンプル前処理と GC-µECD 農薬分析

Ken Lynam、Joan Stevens
アジレントアプリケーションケミスト

オリーブ油に含まれる抗酸化物質と一価不飽和脂肪酸には、コレステロールの低下や発がんリスクの減少といった健康上の利点があることが報告されています。オリーブ油の人気が高まるにつれ、生産量を維持するために、農薬使用の必要性や依存度も高まっています。一方で、食品安全性に対する関心の高まりにより、オリーブ油などの食品に含まれる残留農薬の規制が厳しくなっています。そのため、オリーブ油の生産業者には、農薬をモニタするための低コストで堅牢性のある分析手法が求められています。この記事では、そうした分析手法を紹介します。

クリーンアップのみの簡単なサンプル前処理

オリーブ油中残留農薬を分析したこれまでの研究では、液液抽出後の固相抽出 (SPE) やゲル浸透クロマトグラフィ (GPC) といったさまざまな抽出手順が用いられているほか、最近では QuEChERS (キャッチャーズ:Quick、Easy、Cheap、Effective、Rugged、Safe) テクニックが使われています [1-2]。QuEChERS 手法には、抽出および分散SPE (d-SPE) ステップが組み込まれています。この手法は、分析対象物の感度を維持しながら、サンプルマトリックスのクリーンアップによりクロマトグラフィ干渉を除去できる便利な方法です。

この手法を説明するために、食料雑貨店でオリーブ油を購入し、Agilent QuEChERS キットを用いて抽出を行いました。サンプル前処理の詳細は、アジレントアプリケーションノート (5990-5553EN) に記載されています。この QuEChERS メソッドでは、サンプルから高沸点の脂質成分が除去され、キャリーオーバーや分析対象ピークへの干渉の可能性も排除されました。

図 1. 農薬添加オリーブ油サンプルの GC-µECD クロマトグラムは、主分析用カラム (DB-35ms) で 20 種類の農薬が分離されたことを示しています(図を拡大)。
図 2. 確認用カラム (DB-XLB) を用いた農薬添加オリーブ油サンプルの分析でも、優れた分離能が得られています(図を拡大)。
図 3. 主分析用 DB-35ms カラムで同定されたオリーブ油中エンドスルファンスルフェート (図を拡大)。
図 4. DB-XLB カラムで確認されたオリーブ油中エンドスルファンスルフェート (図を拡大)。

2 つのカラムを用いた 1 回の GC 注入で時間を節約

抽出物の分析にあたっては、2 つの Agilent マイクロ電子捕獲型検出器 (µECD) を備えた Agilent 7890A GC システムを使用しました。以下の 2 つのカラムを使い、オリーブ油中の農薬を分離しました [3-4]:

• Agilent J&W DB-35ms カラム (30 m x 0.25 mm x 0.25 µm)、主分析用
• Agilent J&W DB-XLB カラム (30 m x 0.25 mm x 0.50 µm)、確認用

2 つのカラムを使うことで、1 回の注入で農薬の分析と確認を同時に行うことができるので、使用機器や分析時間を節約できます。

使用した GC は、キャピラリ・フロー・テクノロジー (CFT) アンパージド 2 ウェイスプリッタも搭載しています。この装置を使えば、注入口や注入口トランスファーライン、または分析カラムのいずれかを個別に取り外し、メンテナンスすることができます。CFT 装置用の再利用可能なコネクタを使えば、メンテナンスやトラブルシューティングを迅速に行うことが可能です。

このデュアルカラム µECD システムでは、80 ng/mL の農薬と 20 ng/mL のサロゲート物質を添加したオリーブ油サンプルについて、20 種類の農薬が分離されました。図 1 に示すように、主分析用カラムでは、干渉が低減され、各農薬が分離されています。図 2 には、DB-XLB カラムにより、添加オリーブ油中の農薬の存在と分離が確認されたことが示されています。

GC-µECD の 2 つのカラムでは、分析対象の濃度範囲で優れた直線性が得られます。各農薬の R2 値は 0.994~0.999 でした。分析の検出下限 (LOD) は 0.3 ng/mL、定量下限 (LOQ) は 1.0 ng/mLで、このメソッドが非常に微量分析に適していることを示しています。

農薬非添加のオリーブ油と、農薬を添加したオリーブ油のクロマトグラムの比較では、非添加オリーブ油サンプルに含まれる残留農薬として、エンドスルファンスルフェートとエンドスルファン I が同定および確認されました。図 3 には、主分析用の DB-35ms カラムで得られたクロマトグラムを重ねて表示しています。図 4 には、確認分析用の DB-XLB カラムで得られたクロマトグラムを示しています。エンドスルファン I についても、同様にクロマトグラムを重ねて表示し、その存在を確認しました。各農薬の検量線から測定したところ、サンプル中のエンドスルファンスルフェートの濃度は 23.1 ng/mL、エンドスルファン I の濃度は 7.1 ng/mL でした。

低コストで堅牢なメソッド

この研究では、低コストで堅牢な分析メソッドを用いて、オリーブ油中の農薬を監視できることが実証されています。この手法を使えば、オリーブ油の食品安全性に対する懸念に対応することができます。サンプルマトリックスのクリーンアップ後、2 つの GC カラムとデュアル µ-ECD 検出を用いて、オリーブ油に含まれる 20 種類の農薬を効果的に分析することができました。この QuEChERS メソッドでは、微量検出の感度を維持しながら、マトリックス干渉を除去するのに「ちょうどいい」程度のサンプルクリーンアップを行うことができます。

ランダムに選んだ 1 種類の市販オリーブ油で 2 種類の農薬が検出されたという事実は、ここで述べたデュアルカラム GC デュアル µECD 分析などの厳密なテストを用いて、オリーブ油の残留農薬を監視する必要があることを示しています。この研究の詳細については、アプリケーションノート (5990-5553EN) の完全版をダウンロードしてください。

参考文献

  1. J. Garcia-Reyes, C. Ferrer, et al., "Determination of pesticide residues in olive oil and olives," Trends in Analytical Chemistry 2007, 26, 239–251.
  2. S. Cunha, S. Lehotay, K. Mastovska, et al., "Evaluation of the QuEChERS sample preparation approach for the analysis of pesticide residues in olive," J. Sep. Sci 2007, 30, 620–632.
  3. D. Smith and K. Lynam, "Rapid Contract Laboratory Program (CLP) Pesticides Analysis with 0.32 mm ID Capillary GC Columns Utilizing Hydrogen Carrier Gas," Agilent Technologies publication 5990-4351EN, 2009.
  4. C. George, "A Complete Solution for Chlorinated Pesticides and Herbicides Using DB-35ms and DB-XLB Columns," Agilent Technologies publication 5988-4971EN, 2001.