Access Agilent 2010年11月号

サンプルキャリーオーバーの完全排除を実現する Agilent 1290 Infinity フレキシブルキューブ

Edgar Nägele
アジレントアプリケーションケミスト

HPLC 検出器の高感度化に伴い、オートサンプラの低キャリーオーバーの重要性が高まっています。キャリーオーバーにより微量分析の精度が損なわれ、その結果、分析結果が不正確になり、コストのかかる再分析の必要性が生じます。Agilent 1290 Infinity LC システムは、キャリーオーバーの問題を解決する革新的な技術を備えています。

Agilent 1290 Infinity フレキシブルキューブモジュールを Agilent 1290 Infinity オートサンプラに増設することで、、キャリーオーバーがほぼゼロでの分析を行うことが可能です。フレキシブルキューブに装備されたポンプおよびバルブがによりオートサンプラのフラッシング効率を高めることが可能です。ニードルシートバックフラッシュ (NSBF) モードでは、1290 Infinity フレキシブルキューブのポンプが、オートサンプラ内の注入バルブと直に接続されます (図 1)。ソフトウェアコントロールにより、フレキシブルキューブの溶媒選択バルブが、溶液強度の異なる 3 種類の溶媒のなかから任意のものを選択し、選択した溶媒を用いて高流速で注入シートを洗浄することができます。

図 1. 1290 Infinity フレキシブルキューブ (下) は、注入ニードルシートの自動バックフラッシュを可能にすることで、可変ループ注入のキャリーオーバーを排除します(図を拡大)。
図 2. オンカラムで 3 µg のクロルヘキシジンを注入したのち (1 mg/mL を 3 µL 注入)、ブランクを注入した実験では、キャリーオーバーはわずか 8 ppm でした(図を拡大)。
図 3. 高感度トリプル四重極 LC/MS におけるキャリーオーバーの測定。ブランク測定でのキャリーオーバーは検出されませんでした (右下) (図を拡大)。

キャリーオーバーをほぼ完全に排除した DAD 実験例

数多くの実験を行い、1290 Infinity フレキシブルキューブの性能を実証しました。図 2 に示すように、まず、Agilent 1290 Infinity ダイオードアレイ検出器 (DAD) を搭載する Agilent 1290 Infinity LC システムにおいて、NSBF モードでフレキシブルキューブを用いて、キャリーオーバーを測定しました。この例では、クロルヘキシジン原液 3 µL を注入した後、ブランクを注入し、2 回の注入のピーク面積を比較したところキャリーオーバーはわずか 8 ppm でした。サンプル濃度がより低い場合は、キャリーオーバーは観測されませんでした。クロルヘキシジンの注入量を増やした場合でも、キャリーオーバーの測定値は増加しませんでした。このことは、注入量のキャリーオーバーに与える影響が少ないことを示します。

トリプル四重極LC/MSにおける低キャリーオーバーでの測定

通常の濃度範囲におけるサンプルのキャリーオーバーを測定するために、高感度の Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MS システムで測定を行いました (図 3)。まず、クロルヘキシジンの検出下限 (LOD) を測定しました。シグナル/ノイズ比 (S/N) が 3 となる値を LOD とします。その後、最低定量下限 (LLOQ、S/N = 10) を決定しました。次に、最高定量下限 (ULOQ = 500 pg オンカラム) を測定しました。これは LLOQ よりも 3 桁大きい値です。ULOQ のクロルヘキシジンを注入したのち、ブランクを注入しました。この実験では、キャリーオーバーの値は LLOQ の 20 % 以下であることを規定しました。実験に用いた機器のキャリーオーバーはこの基準値よりもはるかに低く、クロルヘキシジンのピークは LOD を下回りました。

次に、一般的な濃度範囲よりも高い濃度を用いて、さらに厳しいテストを行いました。オンカラムで 1 ng のクロルヘキシジンを約 600 回注入したのち、ブランクを 3 回注入しました。このテストでも、キャリーオーバーは検出されませんでした。この実験結果は、Agilent 1290 Infinity フレキシブルキューブによりキャリーオーバーが確実に低減されることを示しています。フレキシブルキューブを用いることで、数百回にのぼる注入のあとでも、化合物の蓄積を防ぐことが可能です。

きわめて高い濃度のサンプル注入後でもキャリーオーバーを最小限に

さらに厳しい負荷をかけるために、オンカラムで 50,000 pg のクロルヘキシジンを注入し、「強制的」に生じさせたキャリーオーバーを測定しました。この注入量は ULOQ の 100 倍にあたりますが、それにもかかわらず、キャリーオーバーは 10 ppm 未満でした。

この実験は、トリプル四重極 LC/MS を用いた高感度アプリケーションのキャリーオーバー低減における Agilent 1290 Infinity フレキシブルキューブの優れた性能を示しています。この実験で測定した機器のキャリーオーバーは、通常用いられる濃度範囲ではゼロ、100 倍の濃度でも強制的に生じさせたキャリーオーバーはゼロに近く、無視できるレベルのものでした。

微量分析において、オートサンプラのキャリーオーバーへの対応に苦慮している場合は、1290 Infinity フレキシブルキューブの詳細をご確認ください。この実験に関する詳細や、フレキシブルキューブを用いた場合と用いなかった場合の比較結果については、技術概要 (5990-6092EN) の完全版をご覧いただくか詳細についてアジレントの担当営業にお問い合わせください。

なお、こちら特集ページにも Near Zero Carryover に関する情報が満載です。どうぞご覧ください。