Access Agilent 2010年10月号

アジレントの原子分光装置が拡充されました

Ed McCurdy
アジレント ICP-MS プロダクトマーケティング
Keith Bratchford
アジレント分光マーケティングマネージャ

アジレントとバリアンの統合により、新たな無機分析装置が製品ラインナップに加わりました。これにより、多くのアプリケーションや業界のさまざまなニーズに応じた選択肢をこれまで以上にお客様へ提供できるようになりました。原子分光装置ファミリーは、以下の装置で構成されます。

  • 原子吸光分光光度計 (AA)

  • ICP 発光分光分析装置 (ICP-OES)

  • ICP 質量分析装置 (ICP-MS)

フレーム原子吸光分光光度計(以下、フレームAA)

フレームAA は通常、比較的濃度が高い (サブ ppm から %) 少数の元素の測定に用いられます。多くの場合、分析対象元素は、きわめてマトリックス濃度の高いサンプルに含まれています。また、フレームAA は測定やメンテナンスが容易で、導入コストやランニングコストも比較的安価です。アジレント の フレームAA には、AA240FS および AA280 FS などがあります。これらの装置は、特許技術の 「Fast Sequential」 (FS) 機能を搭載しています。この機能により、各サンプルで複数の元素を連続的に高速測定することが可能になり、ICP-OES  を購入しなければならないほど測定サンプル数が多くないアプリケーションの分析処理時間が格段に向上します。

図 1. GTA-120 Graphite Furnace Atomizer を搭載した Varian AA280 Zeeman AAS

ファーネス原子吸光分光光度計(以下、ファーネスAA)

ファーネスAA は、きわめて低い検出下限 (ppb または ppt) で元素を測定するための分析手法です。分析する必要のあるサンプルの数が少ない場合や、サンプル量がきわめて少ない場合に適しています。アジレント の GTA-120 (Graphite Furnace Atomizer) は、すべてのフレームAA にオプションとして追加することができます。これにより、デュアルまたは切り替え可能なフレーム・ファーネス分析が可能になります。その他、ファーネス専用の原子吸光分光光度計には、AA240Z および AA280Z (図 1) があります。これらのシステムは 独自の交流ゼーマンバックグラウンド補正を備えています。交流ゼーマンバックグラウンド補正は、バリアン が 1970 年代に特許を取得した技術で、現在でもファーネスAA を用いたマトリックスの多い環境分析で頻繁に使われるバックグラウンド補正テクニックです。

ICP発光分光分析装置(以下、ICP-OES)

ICP-OES システムは、2 つの一般的な構成で利用できます。プラズマを側面方向から観測するラジアル ICP は、溶解固形物や有機溶媒の耐性に優れています。プラズマを軸方向から観測するアキシャル ICP は、観測領域が長く、プラズマ側面からの強い発光がないため、感度がラジアルに比べて 10倍程優れています。
ICP-MS の検出限界 (DL) が 1 桁前半 ppt から ppt 以下の範囲であるのに対し、一般的な ICP-OES の DL は 1 桁 ppb から ppb 以下の範囲です。しかし、光学系は真空インターフェースを必要とせず、光のみを光学系へ導入するためサンプルのコンタミネーションを回避できます。よって、サンプルスループットとマトリックス耐性は ICP-OES のほうが優れています。

図 2. Varian 700-ES シリーズ ICP-OES

ICP-OES と ICP-MS の技術の発展に伴い、両テクニックで重複する部分は大きくなっています。そのため、各ラボやアプリケーションにおける分析手法の選択は、可能な予算やサンプルの種類、サンプルの濃度などによって左右されます。
多くの点で、ICP-OES と ICP-MS は互いを補完する分析手法です。ICP-OES は、マトリックス濃度のきわめて高いサンプルに含まれる高濃度の物質の測定に適している一方で、ICP-MS は低い DL を実現します。多忙なラボの場合、各種のアプリケーション用にICP-OESとICP-MSの両方を備えている必要があります。ICP-MS は ICP-OES の機能を補うことができます。たとえば、As や Se、Sb、といった ICP-OES では直接測定するのが難しい元素でも、ICP-MS では低い DL を実現できます。

ICP-OES の製品としては 700-ES (図 2) には、710/715-ES、720/725-ES、730/735-ES があり、アキシャルおよびラジアル構成の両方をカバーしています。710/715-ES はエントリーレベルの ICP-OES で、扱っている分析サンプルが少数から中程度のラボに最適です。720-ES および 730-ES シリーズは、いずれも特許技術の電荷結合素子 (CCD) 検出器を備えています。この検出器により、世界でもっとも柔軟性と性能が高く、もっとも高速な ICP-OES プラットフォームが実現しています。730-ES シリーズは、最高の生産性を実現する構成で、全自動スイッチングバルブ、4 チャンネルポンプ、ネブライザガスのマスフロー制御機能を搭載しています。

誘導結合プラズマ質量分析法

これらの無機および原子分光法の製品ラインナップの最上位機種で多くのアプリケーションをカバーできる装置が、Agilent 7700 シリーズ ICP-MS (図 3) です。Agilent 7700x ICP-MS は、特許技術の高マトリックス導入 (HMI) 機能を搭載しています。これにより、従来の ICP-MS システムと比べて最大 10 倍のマトリックス耐性が実現し、1~2 % までの総溶解固形分を含むサンプルのルーチン分析が可能になります。また、 Agilent 7700 シリーズ装置は、ヘリウム (He) コリジョンモードで動作する第 3 世代のオクタポールリアクションシステム (ORS3) と、9 桁のダイナミックレンジを実現する検出器を標準搭載しています。これらの機能により、比類なき干渉除去、広い分析範囲、簡単な操作が実現しています。

図 3. Agilent 7700 シリーズ ICP-MS

将来の展望

アジレントは常に ICP-MS の既成概念を超える装置を提供し続けて、多くのお客様にご愛用いただいています。7700 シリーズ ICP-MS は、究極のデザイン最高のパフォーマンスを提供する最新の ICP-MS です。そして今回、市場をリードするアジレントの ICP-MS システムに、バリアンの革新的でパワフルな AAS および ICP-OES 製品が加わりました。これらの製品の組み合わせが、お客様により幅広いアプリケーションに対応した選択肢を提供し、アジレントの歴史に新たな 1ページを加えています。

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