MassHunter Study Manager ソフトウェアは薬物動態研究における定量分析を自動化・高効率化します

Doug McIntyre
アジレントLC/MS ソフトウェアソリューションマネージャ

トリプル四重極質量分析計と連結した高速液体クロマトグラフ (LC/QQQ) は、創薬や新薬開発において重要な役割を果たしています。LC/QQQ は薬物代謝・薬物動態 (DMPK) 研究に広く用いられています。DMPK のおもなアプリケーションは、初期の候補化合物について透過性やクリアランスといった物性評価を行う in vitro スクリーニングと、ヒトや動物の体内で候補化合物の動態を測定する生物分析の 2 つです。DMPK 分析を実施するラボでは、サンプルスループットを向上させ、ラボのワークフローにスムーズに統合できる LC/QQQ ソフトウェアが求められています。アジレントの MassHunter Workstation ソフトウェアは、MassHunter Study Manager とワークフローに特化した Study Creator により、これらのニーズに応えています。

図 1.MassHunter Study Manager は、LC/QQQ 定量分析のすべての手順を自動化し、DMPK 研究のサンプルスループットを高めます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2. Study Creator は、既存のワークリスト、Microsoft® Excel ファイル、または LIMS からインポートしたファイルなど、さまざまな形式でのスタディの提出を助けます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 3. Study Manager は、in vitro スクリーニングワークフローにおける手間のかかる手順を自動化します(画像を拡大するにはここをクリックします)。

手動の手順を減らす Study Manager

Study Manager は、サンプルセットの順番の決定、・化合物の最適化、測定、定量解析などの LC/MS 分析に必要なタスク のスケジュールを決めるために欠かせないスケジューラーです。分析に提出(サブミット)するすべてのサンプルセットを「スタディ」として扱います。図1 には、96 ウエルプレートを用いた肝臓ミクロソームに対する安定性の測定や、薬剤とその代謝物の in vivo 経時変化測定などのスタディの例が示されています。Study Manager は、各スタディを待ち行列 (キュー) に提出し、機器上で個々の独立したワークリストとして実行します。

分析の進捗状況を追跡するために、キュー内のすべてのスタディ、現在のスタディの詳細、完了したスタディの状況、各スタディに要する推定分析時間が表示されます。また、エラーを修正したり、システムを変更したりする必要が生じた場合には、開始、停止、再開などの操作もできます。

複数のワークフローに特化した Study Creators は、スタディの提出の手助けを行います。図 2 に、Study Manager のユーザーインターフェースと、Study Creator の選択画面を示しています。Study Creator はワークリストを設定し、ワークフローに適した操作のスケジュールを決定します。提出の際には、サンプルセットの配置を、オートサンプラ(新しいAgilent 1290 Infinity LC インジェクタ HTC/HTS のように、多数のプレートやトレイを分析可能な)内の任意のサンプル位置に簡単に割り当てることができます。ワークリスト内のサンプルポジションは、ソフトウェアにより自動的に更新されます。

創薬における in vitro スクリーニング時間の短縮

初期の化合物評価では、1つのあるいは複数のアッセイを用いて、1 週間に 1000 種類もの化合物を LC/MS でスクリーニングすることもしばしばです。図 3 では、そうした in vitro スクリーニングのワークフローと、Study Manager により自動化されるサンプル分析の手順を示しています。通常は、まず Excel のスプレッドシートで各サンプルセットを定義します。その後、Drug Discovery Screening 用の Study Creator を選択し、スプレッドシートを取り込みます。QQQ 分析で対象化合物を初めて分析する場合には、各化合物に最適なマルチプルリアクションモニタリング (MRM) トランジションと MS パラメータを決定する必要があります。その後、各化合物のセットについて、そのセットに含まれる化合物の適切なMRMトランジションと MS パラメータを用いて、テンプレートメソッドを編集します。たとえば、96ウエルプレート上に4 種の候補化合物ごとに各6点の経時サンプルがプールされているミクロソーム安定性試験のサンプルの場合は、64種 の化合物の最適化と 16種 の測定メソッドの作成が必要となります。Study Manager では、幸いなことに、この化合物最適化とメソッド作成の手順が自動化されています。

Study Manager は各化合物に最適なMRM測定のためのパラメーター、すなわちプリカーサイオン、プロダクトイオン、フラグメンター電圧、コリジョンエネルギーを自動で決定するソフトウエア、Agilent MassHunter Optimizerの設定を行います。以前に最適化を行っており、パラメーターがOptimizer データベースに保存されている化合物については、最適化を省略することもできます。

その後、Study Manager がサンプルセットのワークリストを作成し、測定を実行します。スタディ全体を通じて、化合物が変更された際にはメソッドも修正されます。測定後に、Study Managerはスタディに含まれるすべてのサンプルについて、Agilent MassHunterソフトウエアによる定量分析を実行します。ソフトウェアはユーザーがサンプルセットごとに簡単にデータを参照できるようにデータを整理します。また、完了したスタディの結果をまとめた Excel スプレッドシートも作成されます。このスプレッドシートを任意のソフトウェアパッケージにエクスポートして、物性評価のための計算を行うことも可能です。

数日にわたって分析するすべての化合物を、化合物評価をはじめる前に、最初に最適化する場合は、MassHunter Optimizer のみの Study Creator を追加して利用できます。

図 4. Study Manager は、お使いの LIMS ですでに実行している分析との統合により、生物分析のワークフローをスピードアップします(画像を拡大するにはここをクリックします)。

生物分析のワークフローをスピードアップ

生物分析では、通常 1 つのスタディは ある候補化合物(群)とその代謝物(群)について、1種類のサンプル種由来の濃度を経時的に測定するサンプルセットからなり、濃度曲線下面積 (AUC) などの薬物動態特性を算出します。図 4 に、生物分析のワークフローと Study Manager の役割をまとめています。Bioanalysis Study Creator を使えば、お使いの LIMS システム (Watson LIMSTM など) から、サンプルセットを記述したファイルを選択することができます。その後、Study Manager がワークリストを作成し、サンプルを分析し、データを定量解析します。

定量解析を行う場合は、既存の定量分析メソッドを適用することも、高濃度側のリファレンスサンプルの結果に基づいて定量分析メソッドを作成することもできます。定量解析後は、結果を確認し、LIMS システムにエクスポートできるフォーマットでレポートを作成できます。GLP 環境でシステムを使用している場合は、MassHunter Study Manager、MassHunter Data Acquisition、MassHunter Quantitative Analysis をコンプライアンスモードで実行すれば、21 CFR パート 11 ガイドラインを遵守した形で、ユーザーの役割を制限し、データの完全性を確保することができます。

自動化機能を備え、既存のワークフローにぴったり適合する MassHunter Study Manager は、ラボの効率を高め、より迅速な新薬開発に貢献します。ここで紹介した機能は、QQQ 用 MassHunter Data Acquisition ソフトウェアの新バージョン B.04.00 で利用できます。 詳細については、製品ページをご覧ください。