Access Agilent 2010年8月号

逆相(RP)-HPLC の最適化 - 分析パラメータを変更するとクロマトグラムはどうなるか

N. Reuter、E. de Witte、I. van der Meer、L. Flipse
バリアンテクニカルヘルプデスクヨーロッパ、オランダ、ミッデルブルク

はじめに

逆相 (RP)- HPLC メソッドについて、何かを変更したいとします。おそらくそれは溶離液、カラム長さ、粒径などでしょう。そうした変更から何が予想されるかわかりますか。本当に分析は最適化されるのでしょうか。

液体クロマトグラフィでは、逆相 (RP) モードは広範囲なアプリケーションで利用されています。親水性相互作用クロマトグラフィ (HILIC)の アプリケーションが増えても、RP HPLC が最も一般的な手法です。ここでは、カラムパラメータを変更すると何が起きるかについてまとめます。

 

化学結合相の鎖長を長くする

式 1. 分離度の計算式

RP-HPLC の化学結合 相は、C1 から C4、 C8、C18、さらに長いアルキル鎖などが使用されています。アルキル鎖が長くなると、無極性相互作用 (主にロンドン力) が強くなります。疎水性が増し、親水性が低下します。相互作用が強いほど、保持 (保持係数 k) が強くなります。これは、分析時間が長くなることも意味します。分離は、溶出の早いピーク (k < 5) において強い影響を受け、溶出の遅いピークではほとんど影響を受けません。溶出の遅いピークでは、分離度の計算式における k/(k + 1)がほとんど変化しないからです。

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
増加 改善するが選択性が変化 変化なし 変化なし 分析時間の増加により増加 大きな変化なし

表 1. 鎖長を長くしたときの影響


化学結合相の密度の増加

リガンド密度は、上記の鎖長の変化に密接に関連します。炭素含有量 (固定相中の全有機炭素 (%)) とリガンド密度 (基材の平方メートルあたりのリガンド数) を考慮する必要があります。これらを別々に検討することはできません。原則として、リガンド密度が低くなるとシラノールの相互作用が増加するため、極性相互作用が増加し疎水性の相互作用が減少します。リガンド密度は、炭素量、表面積、化学結合相の分子量など固定相のパラメータから簡単に計算できます [1, 2]:

α1 リガンド密度 [µmol/m2] C 炭素原子の質量 (12.01115 g/mol)
p1 炭素含有量 [%] n1 固定相中の炭素原子数
S0 BET 表面積 [m2/g] M1 固定相中のの化学結合相の分子量 [g/mol] (モノファンクショナル相では M1 = 58 + MWgroup)。
モノファンクショナル C18 の例 (-Si(CH3)2C18H37): M1 = 58 + 18 * 12 + 37 = 311 g/mol、n1 = 18 + 2 = 20
式 2. Berendsen-de Galanの式 [3, 4]

 

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
増加 改善するが選択性が変化 選択性が変化 増加 分析時間の増加により増加 大きな変化なし

表 2. 化学結合相の密度増加の影響

 

図 1. 有機溶媒比率と溶離液の粘度(画像を拡大するにはここをクリックします)

溶離液中の有機溶媒比率の増加

溶離液中の有機溶媒比率と保持の一般的な関係として、有機溶媒比率が 10 ~ 15% 増加すると、保持全体が 50% 減少します。また、その逆も同様です。

HPLC カラムの背圧は、パラメータの中でも特に溶離液の粘度 η に依存します。

ΔP ∝ η

e-inspirations no. 24 Tech Tip 『Flow Calculations in Chromatography』 を参照してください。

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
短縮 減少 (より小さい k) 若干減少 変化なし 分析時間の減少により減少 変化 (図 1 を参照)

表 3. 離液中の有機溶媒比率増加の影響


カラム長さの変更

カラム長さは、固定相の量、理論段数、分析時間、背圧、および理論段数から導かれる分離度に直接影響します (式 1 を参照)。カラム長さを 2 倍にすると、分離度は √2 の係数で増加します。

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
倍増 改善 改善 倍増 倍増 倍増

表 4. カラム長さを2倍にした時の影響


カラム内径の変更

カラムの内径の変更は、固定相の量とカラム容積に直接影響します。内径は容量に 2 乗で影響します。

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
変化なし (最適流量の場合) 変化なし 変化なし 4 倍 4 倍 変化なし

表 5. カラム内径を 2 倍にした時の影響


粒径の変更

充填剤の粒径の変更は、粒径を小さくした場合に、より高い流量制限とより効率的な分離につながります。粒径が小さくなると背圧が増加します。

ΔP ∝ 1/dp2

これらの影響については、e-inspirations no. 15 Tech Tip 『A Short Guide to Fast-LC』 で詳細に説明しています。

分析時間 溶出の早い
ピークの分離
溶出の遅い
ピークの分離
試料負荷量 溶媒使用量 背圧
変化なし 改善 改善 変化なし 変化なし (かなり) 増加

表 6. 充填剤粒径を小さくしたときの影響


まとめ

上記をすべて考慮すると、分析のパフォーマンスを向上させるための使用条件の変更が簡単になります。ただし、一度に 1 つのパラメータのみ変更して、各変更の影響を確認してください。


参考文献

  1. G. E. Berendsen, L. De Galan; "Role of the chain length of chemically bonded phases and the retention mechanism in reversed-phase liquid chromatography"; J. Chromatogr. A 196 (1980) 21-37.
  2. K. D. Lork, K. K. Unger; "Solute retention in reversed-phase chromatography as a function of stationary phase properties: Effect of n-alkyl chain length and ligand density"; Chromatographia 26 (1988) 115-119.
  3. G. E. Berendsen, L. De Galan; "Preparation and Chromatographic Properties of Some Chemically Bonded Phases for Reversed-Phase Liquid Chromatography"; J. Liq. Chromatogr. 1 (1978) 561.
  4. J. E. Sandoval; "Equation for Calculating Surface Coverage from End-Capping of Chromatographic Bonded Phases"; J. Chromatogr. A 852 (1999) 375.