Access Agilent 2010年4月号

Agilent 7100 キャピラリ電気泳動システムによる最先端のイオン分析

Martin Greiner
Agilent キャピラリ電気泳動プロダクトマネージャー

一般的に低分子イオンの分離分析には、電気伝導度検出器を使用したイオンクロマトグラフィーが行われています。しかし、イオンクロマトグラフィーでは一分析当たりのコストが高くなったり、マトリクスの干渉が頻繁に発生したりすることが問題となる場合があります。これらの問題を克服するアプローチの 1 つに、Agilent 7100 キャピラリ電気泳動システムを使用する方法があります。

キャピラリ電気泳動 (CE) は、無機イオン、有機酸、アミノ酸、低分子量の塩基性または酸性薬剤、生体分子などの荷電物質(イオン)に対して、卓越した効率と分解能で高速分離を可能にします。多くの場合、 HPLC で上記のような物質の分離を行うことは困難です。

7100 CECE は、試料の量が限られている場合にも有効です。液体クロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーよりも必要な緩衝液 (バッファ) の量が少なくて済むため、廃液を最小限に抑えられます。また高速分離により分析時間が短縮できます (通常 CE での分析時間は、陽イオン分析の場合 6 分未満、陰イオン分析の場合 10 分未満です)。さらにCE では、多くの場合、サンプル前処理は試料の希釈またはろ過だけで済むため、さらなる時間短縮が可能です。CE は多くの種類の分離モードがあります。CE の最も一般的な分析モードはキャピラリーゾーン電気泳動 (CZE) です。

キャピラリーゾーン電気泳動 (CZE) による低コストイオン分析

数十年もの間、低分子イオンの分離にはイオンクロマトグラフィー (IC) が採用されてきました。ただし、このテクノロジーにはいくつかの制限があります。IC で必要なカラムは一般的に高価で、時に短寿命なイオン交換カラムです。また通常、移動相は強酸性または塩基性の塩を含む緩衝液であり、ポンプシステムはピーク性能を維持するための頻繁なメンテナンスが必要です。場合によってはサンプル中のマトリクスの影響を軽減するために複雑なサンプル前処理が必要になり、分析当たりのコストが高くなることがあります。キャピラリゾーン電気泳動 (CZE) は、低分子イオン分析の IC に替わる選択肢です。

CZE の原理は、電圧をかけたキャピラリー中を物質 (イオン) が移動することに基づいています。それぞれのイオンの移動度の差を利用して、IC よりも優れたスピードと分解能で低分子イオンの迅速な分離を行うことができます。CZE では、IC で使用する高価なイオン交換カラムを用いず、代わりに安価なフューズドシリカキャピラリーを使用します。このため CZE では、同等のクロマトグラフィーに比べて分析当たりのコストを低減することができます。

図 1. 間接吸光度検出(IPD)により、UV領域の吸収を持たないイオンを検出できます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2.ある地方自治体の排水処理工場から採取した排水中の陰イオンの高感度分析(CZE 分析)(画像を拡大するにはここをクリックします)。

間接吸光度検出 (IPD) による発色団のない化合物の検出

ほとんどの低分子イオンは、紫外線 (UV) または可視光を吸収しないため、ダイオードアレイ検出器 (DAD) では検出できないと思われがちですが、この検出の問題は、Agilent 7100 キャピラリ電気泳動システムで適用できる間接吸光度検出 (IPD) という手法で解決できます。この手法 (図 1) では、分離対象 (共イオン) と同じ電荷の UV 吸収剤をバックグラウンド電解質 (BGE) に対する添加剤として使用します。可視化試薬 と呼ばれるこの添加剤により、ベースラインが上がります。分析対象のイオンが存在する場合は、電気的中性の原理に従って可視化試薬が除去されます。分離したイオンが検出器ウィンドウを通過するとき、検出器では上昇したベースラインに対するネガティブピークとしてシグナルが測定されます。DAD のシグナル波長とリファレンス波長を反転することで、ポジティブピークとしてイオンを検出できます。原理的には CZE-IPD は、紫外可視領域の吸収を持たないすべてのイオン性分析対象成分の検出に適しています。

CZE-IPD の感度は、通常 ppm レベルですが、緩衝液とアプリケーションによっては検出限界が ppb レベルになることもあります。図 2 に、CZE-IPD での排水中の陰イオンの分析例を示します。

Agilent CE ソリューションキットと同梱されているメソッドを使用すると、CE 分析を迅速かつ簡単に行うことができ、食品、医薬品、法医学、または環境分析における広範な試料に対して再現性の高い結果を得ることができます。詳しくは、アジレントの新しい概説書 「Ion Analysis with Agilent Capillary Electrophoresis Systems」 (文献番号 5990-5244EN) を参照してください。

他検出器とシームレスに接続可能なインターフェース

バックグラウンド電解質の添加が分離上の理由で望ましくない場合、その代わりに市販されている非接触型電気伝導度検出器 (CCD) を使用して低分子イオンの検出を行うことができます。CCD は、Agilent 7100 CE システムにシームレスに追加できます。これは、CCD 接続に必要な A/D コンバータが、CE システムに内蔵されているためで、外付けの基板等は不要です。7100 CE システムでは、液冷ではなく空冷によりキャピラリーカセットの温度を制御するため、カセットに簡単に開けることができます。また、カセットに CCD をすぐに接続できる状態になっているため、UV 検出器から CCD への切り替えが簡単です。

このように、Agilent 7100 キャピラリ電気泳動システムは、UV 領域の吸収を持つ物質を DAD で検出することはもちろん、UV 領域の吸収を持たない低分子イオンを IPD または CCD で検出することができます。また IC と比較して、より短い時間、より低コストでの分析が可能です。IC の代替として是非 CE をご検討ください。CE を使用したイオン分析についての詳細はこちらです。