Access Agilent 2010年1月号

石油中の軽質成分の確実な分析を実現する GC オーブン内のプレフラクショネータ

Roger Firor
アジレントシニアアプリケーションケミスト

石油業界で働くプロセスエンジニアや化学者は、多くの場合、さまざまな沸点の原料や材料の軽質成分を詳細に分析しなければなりません。ガスクロマトグラフィー (GC) は石油および石油化学のサンプルの分離に適したメソッドですが、キャピラリカラムは対応できる沸点範囲が限られています。多くの石油サンプルには、溶出しない成分や、カラムから溶出するまでに 60 分以上を要することも高沸点成分が含まれています。ここでは、原油などの石油サンプル分析を簡単に最適化できる方法を紹介します。Agilent 7890A GC システムのオーブン内に内蔵する独自の装置を使えば、目的のフラクションのみを高分離能かつ適切な時間で分離することができます。

その良い例が、原油の分析です。C4 ~ C12 までのフラクションする炭化水素の詳細分析は、石油の価値や最適な精製手法を決定するうえで、きわめて貴重な情報源となります。通常、プレフラクショネータまたはプレカラムバックフラッシュを含むガスクロマトグラフ (GC)装置は、特別な注入口やパックドプレカラムおよびメカニカルなバルブで構成されています。これらのシステムでは、頻繁なメンテナンスが必要なうえ、温度熱制御が難しく、高分離に適していません。それに対して、アジレントでは、単純なオーブン内に組み込む独自の革新的なソリューションを提供しています。キャピラリ・フロー・テクノロジー (CFT) を用いたこのデバイスは、Purged Ultimate Union と呼ばれるものです。そのほかに Agilent 7890A GC で必要なハードウェアは、マルチモード注入口 (MMI)、エレクトロニックニューマティクスコントロール (Aux EPC) モジュール、水素炎イオン化検出器 (FID) です。この構成は、Agilent 5975C シリーズ GC/MSD を含むすべての GC 検出器にも対応しています。

 

図 1. プレカラムのバックフラッシュ設定により、目的のフラクションを分析し、重質成分を除去することができます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 1. プレカラムのバックフラッシュ設定により、目的のフラクションを分析し、重質成分を除去することができます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2. ChemStation 画面では、A) バックフラッシュ (プレカラム) と B) 分析カラムを簡単に設定することができます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2. ChemStation 画面では、A) バックフラッシュ (プレカラム) と B) 分析カラムを簡単に設定することができます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2. ChemStation 画面では、A) バックフラッシュ (プレカラム) と B) 分析カラムを簡単に設定することができます(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 3. C12 後にバックフラッシュを実施した原油の 12 回繰り返し分析の結果は、再現性とバックフラッシュ効率が優れていることを示しています(画像を拡大するにはここをクリックします)。

簡単にカスタマイズできる柔軟なシステム

図 1 に基本システムの概略図を示しています。この分析では、温度プログラムができるスプリットモードで MMI を用い、バックフラッシュ中にライナをパージし、Aux EPC チャンネルで分析カラムフローをコントロールします。

原油の分析例では、プレカラムに 2 m x 0.32 mm 内径の 不活性リテンションギャップを、分析カラムに Agilent J&W DB-Petro カラム (100 m x 0.25 mm 内径 x 0.50 μm 膜厚) を使用します。アジレントは幅広いプレカラムと分析カラムを提供しているので、目的のアプリケーションに応じてシステムをカスタマイズすることができます。

バックフラッシュで分析カラムを保護

バックフラッシュを用いないと、原油サンプルが 分析カラムを汚染し、劣化するおそれがあります。そのため、おおよそ C12 成分が 分析カラムに移動したあとに、プレカラムのバックフラッシュを実行することをおすすめします。これにより、高分離が可能になると同時に、MMI のスプリットベントから原油の重いフラクションがバックフラッシュされます。MMI の温度を 425℃ に設定し、バックフラッシュのあいだに注入口ライナをパージします。

図 2 は、プレカラムと分析カラムの条件を設定する Agilent ChemStation 画面を示しています。プレカラムの流量 0.9 mL/min が、分析カラム流量の約 80 % である点に注目してください (青のハイライト)。どちらのカラムも、圧力または流量で、同じコントロールモードを設定することができます (緑のハイライト)。ここで使用した条件では、バックフラッシュ時間を 1.3 分に設定 (オレンジのハイライト) することで、C12 成分 までが分析カラムに導入できるようにしています。

重質汚染成分を除去するバックフラッシュ

図 3 では、原油を 12 回連続で注入した分析結果を示しています。DB-Petro カラムを用いて、C4 ~ C12 フラクションを分析しました。保持時間 (リテンションタイム) の再現性は 0.002 分以内の精度で、ベースラインでも残留成分による変動は見られません。この結果は、各測定でバックフラッシュが完璧に実施され、残留成分が排出されたことを示しています。

多くの利点をもたらす構成

中間点圧力コントロールによるプレカラムのバックフラッシュには、多くの利点があります :

  • 幅広い分子量を持つサンプルの GC 分析を可能にします。こうしたサンプルは、バックフラッシュを行わないと、カラムや検出器に損傷を与えるおそれがあります。

  • 中間点圧力コントロールにより、適切な流量で分析カラムを使用すると同時に、分析中にプレカラムのバックフラッシュを実施できます。

  • 液相なしのプレカラムは低温で目的成分を移送し、重質成分の高速バックフラッシュの利点をさらに高めます。

さまざまな組み合わせのプレカラムと分析カラムを使って、分析カラムに入れたくない重質成分と軽質成分や溶出の早い成分を分離する必要のある、多くの GC アプリケーションに対応することができます。そのほか、燃料中やバイオディーゼル中の添加物の分析などでも、このテクニックによる時間の節約やカラムの保護といった利点を活かすことができます。

正確で安定したエレクトロニックニューマティクスコントロール (EPC) を備えた Agilent 7890A GC は、幅広いカラム長、固定相、内径を持つプレカラムのバックフラッシュを可能にします。Purged Ultimate Union を使えば、リークのない接続と優れた不活性が実現し、残留成分を排出することができます。クロマトグラフィ性能は、シングルカラムシステムと同じです。Purged Ultimate Union は、キャピラリ・フロー・テクノロジーによる生産性向上の一例にすぎません。このテクノロジーを使った他の装置の詳細については、アジレントウェブサイトの詳細ページをご覧ください。また、Purged Ultimate Union の詳細については、アプリケーションノート 「Capillary Flow Technology Backflush」 (5989-9804EN、英語) をダウンロードしてください。

本文にてご紹介した分析例についての詳細は、アプリケーションノート 5990-5070EN(英語) に掲載されていますのでダウンロードしてご覧ください。