Access Agilent 2009年10月号

カセット分析と UHPLC-QQQ を使用した極性切り替えによる代謝安定性試験の高速化

Anabel S. Fandiño
Agilent R&D LC/MS Application Scientist

代謝安定性は、創薬における重要なアッセイであり、より短い時間でより多くの化合物をスクリーニングするために、より高いスループットが必要です。Agilent 1290 Infinity LCシステムは、このアプリケーションに必要な迅速な LC 分離を提供しますが、得られたサブ秒のピーク幅の処理には、高速にデータを取り込んで良好な定量が可能になるトリプル四重極 MS が必要になります。Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MS システムは、分析中に極性を切り替えるときでもこの要求を満たすことが出来ます。

極性切り替えのあるカセット分析によるスループットの向上

代謝安定性のような in vitro アッセイは、in vivo 薬物動態特性を早期に理解する際に重要な役割を果たし、開発の後段階で不適となる化合物を排除するのに役立ちます。通常、研究者はカセットアプローチと高速 LC/MS/MS メソッドを使用して代謝安定性を評価します。カセットアプローチでは、試験担当者が基質ポストインキュベーションのカクテルを作成します。これにより、LC/MS/MS で分析するサンプル数が削減されます (図 1)。高流量と短いサブ 2 μm カラムを使用する高速 LC メソッドは、分析時間を短縮し、サンプルスループットを高めます。[1, 2] 通常、検出はマルチプルリアクションモニタリング (MRM) モードで動作するトリプル四重極 (QQQ) 質量分析計を使用して行われます。

図 1. この例は、カセット分析が代謝安定性アッセイからのサンプルをどのように組み合わせて、UHPLC/MS/MS のサンプル注入を減らしているかを示しています(画像を拡大するにはここをクリックします)。

カセット分析では、各カクテルは通常、ポジティブモードまたはネガティブモードでイオン化します。両方のモードでイオン化する基質をプールすることには利点がありますが、そのためには分析中に MS が2 つの極性間で切り替わる必要があり、データ取り込み速度が低下します。良好な定量を行うために、MS は、高速クロマトグラフィを使用して生成された極めて狭いピークで少なくとも 9 ~ 10 個のデータポイントを収集する必要がありますが、これはポジティブ/ネガティブの切り替えが遅すぎる場合には不可能です。

30 ミリ秒の極性切り替えと 5 ミリ秒の MRM ドウェルタイムで、Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MS システムは、高速データ取り込みの課題を解決します。デモンストレーションのために、4 つの薬物 (バスピロン、ベラパミル、デキストロメトルファン、およびジクロフェナク) と 2 つの内部標準 (デキストロルファン-d3 およびジクロフェナク-d4) を使用して代謝安定性の試験を行いました。各インキュベーション時間 (0、5、10、15、25、および 35 分) で、4 つの各サンプルの一部を取り出し、それらを混合しました。次に、Agilent 1290 Infinity LCシステムを Agilent 6460 トリプル四重極と組み合わせて使用して、サンプルを分析しました。最新のアプリケーションノート (5990-4469EN) に、サンプル前処理と機器条件の詳細が記載されています。

図 2. 極性切り替えを使用しても、Agilent 6460 トリプル四重極はこれらの狭い UHPLC ピークで信頼性の高い定量を実現しました(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 3. Agilent 6460 トリプル四重極は、極性切り替えあり (左) と
シングル極性分析 (右) の両方で優れた結果をもたらしました
(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 4. 直線は、従来の分析を使用した結果と良好に相関している、
極性切り替えの結果を示しています。すべて、より高いスループット
を実現しています(画像を拡大するにはここをクリックします)。

高速極性切り替えを使用した高速性と高いデータ品質

高流量と最大 1100 bar の圧力で UHPLC システムを操作することで、分析時間をわずか 1.5 分にすることができました。クロマトグラムのピーク半値幅はわずか 0.4 ~ 1.0 秒でしたが、6460 トリプル四重極は各ピークで 9 ~ 35 のデータポイントを収集し、高精度の定量を実現しました。ピーク面積の相対標準偏差 (RSD) は 10% 以下でした。図 2 では、1.5 と 1.0 mL/min の流量を使用して達成された MRM クロマトグラム、データ品質、および分析時間を比較します。

切り替えのある分析と切り替えのない分析の両方で優れた RSD

平均したピーク面積は切り替えのある分析 (高速極性切り替え) と切り替えのない分析 (ポジティブのみまたはネガティブのみ)で類似していました。相対面積 RSD 値は、極性切り替えを使用すると 10% 未満で、切り替えなしの分析を使用すると 9% 未満でした。図 3 では、UHPLC メソッドを使用して 1.0 mL/min で分析された、極性切り替えありとなしのプールされたインキュベートについて取得されたデータを比較します。

極性切り替えありとなしで類似している代謝安定性の結果

5、10、15、25、および 35 分のサンプルで測定された親化合物と、0 分サンプルで測定された親化合物の平均相対面積を比較することで、親薬物の残留率を判断しました。図 4 に、相関係数 (r2 > 0.9848) で高速極性切り替え分析と切り替えなしの分析を使用して取得された結果の優れた相関を示します。

際立ったデータ品質による、1 日あたりのサンプルの増加

要約すると、カセット分析と Agilent UHPLC/MS/MS システムの高速極性切り替えを組み合わせると、次のことが実現します。

  • 非常に高いサンプルスループット
  • 正確な定量
  • 優れたクロマトグラフィ分離能

Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MS システムの高速データ取り込み速度は、Agilent 1290 Infinity LCを用いた、半値幅がサブ秒のピークであっても優れた定量性を実現します。この調査の詳細をすべて参照するには、アプリケーションノート全体をダウンロードしてください (5990-4469EN)。

参考文献

1. T. J. Carlson and M. B. Fisher, “Recent advances in high throughput screening for ADME properties,” Combinatorial
Chemistry and High Throughput Screening, 11(3), 258-264, 2008.
2. W. A. Korfmacher, “Principles and applications of LC-MS in drug discovery,” Drug Discovery Today, 10(20), 1357–1367,    2005.