GC カラムの寿命を延ばすには - Part II

Cikui Liang、Mitch Hastings、Jason Ellis
Agilent J&W GC カラムチーム

先月の記事では、注入したサンプルによるカラム汚染がカラムの劣化の最大の要因であることを説明し、カラムの寿命を最大限に延ばすための操作上のヒントを紹介しました。今月は、以下の 3 つの原因によるカラム劣化の危険を防ぐ方法を紹介します。

  1. 高温状況下での酸素によるダメージ
  2. 温度上限を超えることで生じる熱によるダメージ
  3. 無機塩基、無機酸、塩による化学的なダメージ

高温状況下での酸素によるダメージ

キャリアガスのフローパス (ガスライン、フィッティング、注入口など) のリークは、酸素曝露の最大の原因です。カラム温度が室温前後ではリークによるダメージは生じませんが、カラム温度が高くなり、酸素濃度が 10 ppm になると、固定相の深刻な劣化が生じます。深刻度の低いケースでは、カラムの機能が低下する程度ですが、深刻度が高くなると、カラムが取り返しのつかないダメージを受けるおそれがあります。症状としては、カラムブリードの早期発生、活性の高い化合物のピークテーリング、分離能の低下などがあります。

カラム寿命を延ばす最良の方法は、以下の手順により、酸素やリークのない環境を維持することです。

  • 超高純度キャリアガスを使用する
  • キャリアガスラインに水分および酸素トラップを設置する
  • ガスラインおよびレギュレータのリークを定期的にチェックする
  • セプタムを定期的に交換する
  • ガスボンベが空になる前に交換する

温度上限を超えることで生じる熱によるダメージ

長時間にわたってカラムの温度上限を超えて使用したり、キャリアガスを流さずにカラムを加熱したりすると、固定相が劣化したり、チューブ表面が損傷したりするおそれがあります。極性が高いカラムでは、比較的低い温度でもそうしたダメージが生じます。熱によるダメージは、酸素が存在する条件下では大きく加速します。リークのある状態や、キャリアガスに高い濃度で酸素が含まれる状況でカラムを過度に加熱すると、カラムにダメージが生じます。熱によるダメージで生じる症状は、酸素によるダメージと同じで、活性の高い化合物のピーク形状の悪化、保持力の低下、バックグラウンドノイズの増加などがあります。

長時間にわたってカラムを高温 (温度範囲の上限付近) で使用する場合、カラムにはより大きなストレスがかかります。カラムの寿命は、標準的な条件での使用時よりも短くなります。ただし、そうしたダメージは、固定相の劣化ではなく、フューズドシリカチューブの疲労という形で現れることがあります。

以下で、カラム性能を向上させるためのヒントを紹介しています。

  • GC オーブンの最高温度をカラム規定の温度上限と同じか、それよりも数度低く設定すれば、カラムの寿命を最大限に延ばすことができます。

  • カラムがすでにダメージを受けている場合は、低温分析での上限温度で 8~16 時間ほどコンディショニングしてください。その後、検出器側から 10~15 cm を除去し、カラムを再設置してください。そうすれば、カラムを継続して使用することができます。ただし、寿命や性能がすでに大きく低下していて性能が戻らない可能性はあります。

  • カラムの設置後、カラムで保持されない少量の化合物を注入し、カラムを通過するキャリアガス流を確認してから加熱してください。0.5~2 分のリテンションタイムで化合物の良好なピークが得られるのを確認してください。

無機塩基、無機酸、塩による化学的なダメージ

KOH、NaOH、NH4OH などの無機塩基や、HCl、H2SO4、H3PO4、HNO3 などの無機酸は、特に固定相にダメージを与え、ピークテーリングやピーク拡散、活性の高い化合物の吸着、ベースラインの上昇などを引き起こします。

以下で、性能を向上させるためのヒントを紹介しています。

  • ガードカラムを使えば、カラムのダメージを最小限に抑えることができます。ただし、頻繁にカットするなどのメンテナンスが必要であることに注意してください。

  • 化学的なダメージは通常、カラムの上流側に限定されます。そのため、カラムを注入口側から 0.5~1 m (ダメージが大きい場合には 5 m 以上) をカットすれば、ほとんどの化学的なクロマトグラフィ上の問題を解決することができます。

カラム寿命は分析条件や分析を行う環境によって変化します

カラムの寿命は、使用する分析メソッドなどから経験的に予想出来ますが、実際の寿命は、使用する条件によって大きく変化します。あるメソッドでは 5 年間使用できるカラムでも、より条件の厳しい分析では、マトリックスの多いサンプルを 1 回注入したり、リークのあるセプタムを用い、高温で 1 回分析したりするだけで使えなくなることもあります。

通常の分析では、溶媒のみや標準物質を使用した場合でも、注入物に少量の残留物が含まれます。また、キャリアガスに少量の酸素が含まれることや、フィッティングやレギュレータ、注入口、セプタムで ppb レベルのリークが見つかることもあります。そのため、カラムがひとたび工場を離れたあとは、各カラムの実際の寿命を知るすべはありません。使用するサンプルの前処理方法や、機器のメンテナンスに気をつけることが、カラムの寿命を決定する最大の要素になります。