Access Agilent 2009年6月号

バイオディーゼル中脂肪酸メチルエステル(FAME) の自動サンプル前処理および高速 GC 分析


Roger Firor
Agilent 上級アプリケーションケミスト

代替燃料業界の製造業者や化学者にとって、純粋なバイオディーゼル (B100) およびバイオディーゼル/石油の混合物の品質管理は、製品の一貫性を保つための重要なプロセスです。このたび、自動サンプル前処理と高速GC 分析により、重要な品質テストの高率化が可能になりました。

ASTM メソッド D7398 は、バイオディーゼルを構成する脂肪酸メチルエステル (FAME) の沸点分布を調べるための一般的な模擬蒸留試験法です。ASTM D7398 は比較的シンプルなクロマトグラフィ手順ですが、サンプルとキャリブレーション用標準物質の前処理には、一般に複雑な手動プロセスが伴います。アジレントは、この試験のための独自ソリューションを提供しています。このソリューションは、サンプル前処理を自動化する Agilent 7693A 自動液体サンプラ (ALS)、GC 分析時間を半分以下に短縮する低熱容量(LTM) 技術などで構成されています。

アジレントの ASTM D7398 用ソリューションの中心となっているのは、アジレントGC蒸留 (SIMDIS) ソフトウェアを搭載した 7890A GC システムです。SIMDIS ソフトウェアは、ChemStation と連動して沸点範囲分布を計算することができます。また、アジレントの新機能をシステムに追加すれば、ラボの生産性を高め、ワークフローを能率化することが可能です。

 

図 1. LTM システムにおける C9~C72 の検量線からは、分析が高速化し、分析困難な高沸点成分も良好にカラムに導入されていることが見てとれます 。(画像を拡大するにはここをクリックします)
図 2. LTM システムを用いた大豆ベースの B20 バイオディーゼルの高速分析。(画像を拡大するにはここをクリックします)
図 3. LTM 技術を搭載した 7890A GC システムでは、異なる製造業者の大豆ベースのバイオディーゼルから採取した 2 つの B100 サンプルの違いが明確に検出されています。(画像を拡大するにはここをクリックします)
図 4. SIMDIS ソフトウェアのレポートでは、製造業者 A の B100 バイオディーゼルサンプルの沸点分布が示されています。(画像を拡大するにはここをクリックします)

オートサンプラによるサンプル前処理の時間を節約

生産性に関する第 1 の改良点は、デュアルタワー付き 7693A ALS です。150 バイアルのサンプルに対応できるこの 7693A ALS は、ミキサー/バーコードリーダー/ヒーターを備えることができます。この ALS では、サンプル注入のほか、サンプルや標準物質の前処理を行うことも可能です。最新のアプリケーションノート (5990-3868EN)では、このオートサンプラを用いた前処理例を紹介しています。キャリブレーション用標準物質の前処理では、加熱および混合により Polywax 500 標準物質を溶解し、C5 - C18 混合物質を添加する必要があります。後部タワーでは、250 µL シリンジにより、標準物質とバイオディーゼルサンプルを希釈するための溶媒を添加します。こうしたサンプル前処理手順は、7693A オートインジェクタおよび 150検体トレイにより、大部分が自動化されます。そのため、時間を節約し、正確で一貫した分析を行うことが可能です。

 

LTM 技術により、1回の操作でより多くのサンプルを分析

バイオディーゼル中 FAME の GC 分析時間を短縮したい場合は、GC カラムの高速加熱冷却を可能にするアジレントの LTM システムを使用できます。このテクノロジーでは、フューズドシリカキャピラリカラムの周りに、織り込むような形で細いヒーターと温度センサーを直接組み合わせています。カラムを迅速に加熱冷却し、GC 分析を大幅に短縮することが可能です。

図 1 は、LTM システムを搭載した 7890A GC によるキャリブレーション用標準物質の高速分析の結果を示しています。Agilent SIMDIS ソフトウェアの構成設定画面にクロマトグラムが表示されます。C5 - C18 および Polywax 500 の混合物により、C9~C72 のキャリブレーションを行っています。これは、B100(反応しない成分を含む)およびバイオディーゼル混合物の沸点範囲に対応します。LTM システムにおける C70 の通常の溶出時間は、わずか 7.5 分です。これに対して、400℃ にプログラムした標準 7890A GC と Agilent J&W DB-HT Sim Dis カラムを用いた場合の溶出時間は 22 分です。LTM 技術により、GC サイクル時間が大幅に短縮されていることがわかります。

図 1 のクロマトグラムには、Agilent 7890A GC 用の革新的なマルチモード注入口が使われています。マルチモード注入口では、複数の GC 注入口機能を 1 つの注入口で利用することができます。バイオディーゼル分析の場合、マルチモード注入口を温度プログラムスプリットモードで使用すれば、GC カラムへのサンプル導入が向上します。図 1 に見られる左右対称のピーク分布は、注入口のサンプル移送が良好で、ディスクリミネーションが最小限に抑えられ、全体的に優れたシステム性能が得られていることを示しています。

図 2 は、LTM システムで大豆ベースの B20 バイオディーゼルを分析して得られたクロマトグラムを示しています。この複雑なサンプルのクロマトグラムが、わずか 5 分で測定されています。C16 および C18 脂肪酸メチルエステルが、共雑成分のバックグラウンドに消されずに検出されています。

図 3 では、2 種類の植物由来の B100 バイオディーゼルから得られたクロマトグラムを重ねて表示しています。これらのサンプルでは、もっとも多い C18:2 (7.5 分) と C16:0 (6.6 分) の比率が異なる点に注目してください。図 4 は、製造業者 A のサンプルについて算出した沸点分布を示しています。Agilent SIMDIS ソフトウェアを使えば、この標準レポートを作成し、サンプルを簡単に比較することができます。

 

バイオディーゼル品質管理の生産性を向上

バイオディーゼルおよびバイオディーゼル混合物に含まれる脂肪酸メチルエステルの沸点分布の測定は、品質管理において製品の真正性や一貫性を確認するのに役立ちます。7693A ALS インジェクタタワー/トレイを搭載した Agilent 7890A は、サンプル前処理から GC ChemStation と連動した SIMDISソフトウェアによる沸点分布レポート作成まで対応する、完璧な分析システムです。

自動サンプル前処理用のオートサンプラプログラムなど、バイオディーゼル中 FAME の従来分析および LTM 分析の機器パラメータの情報が必要な場合は、アジレントアプリケーションノート 5990-3868EN(英語) を参照してください。バイオディーゼル分析用のアジレントシステムの詳細については、製品ページをご覧ください。