ICP-MS MassHunter の主要機能の詳細

7700 シリーズ、8900 / 8800 ICP-QQQ、7900 / 7800 ICP-MS に対応する最新バージョンの MassHunter ソフトウェアは、新しいグラフィカルユーザーインタフェースを中心として設計されています。このインタフェースでは、システム動作の各段階で必要となるすべての重要な情報が、単一のウィンドウにわかりやすく表示されます。既存のデータ解析モジュールに加えて、新ソフトウェアでは、以下の主要パネルが採用されています。

スタートアップ

図 1. スタートアップ

スタートアップ

新しい MassHunter ソフトウェアのスタートアップ機能では、ユーザーによる設定が可能なハードウェア最適化タスクおよびチェックのリストが表示されます。これらのタスクは、プラズマが点火されるたびに、自動的に実行することができます。このシンプルな自動アプローチにより、全てのハードウェアシステムの動作を最適な状態に保ち、システム性能を継続的に記録することが可能になっています。スタートアップ機能は、オペレーターの経験値にかかわらず、性能を毎日一定の状態に保つことができるため、忙しい民間分析ラボで特に役立ちます。

図 1 に示す例では、サンプル導入システムのルーチンメンテナンス後に実施する可能性のあるハードウェア最適化タスクのスタートアップを設定しています。トーチ軸 (インタフェースオリフィスに対して水平および垂直)、エレクトロンマルチプライア (EM)、イオンレンズの最適化が自動的に実行されたのち、標準的な性能レポートが作成されます。レポート作成には、一貫性を得るためにあらかじめ定義されたウォームアップディレイが用いられます。性能レポートでは、主要なシステム性能パラメータ (感度、酸化物、バックグラウンド、質量キャリブレーション、分解能など) がグラフィカル表示されます。レポートビューアには、履歴ビューも含まれています。これを使えば、システム性能を経時的にモニタリングすることができます。システム性能に加えて、性能レポートでは、現在のチューンおよび計量値も全て保存されるため、システム動作パラメータ設定の記録として利用できます。

ハードウェアペイン

図 2. ハードウェアペイン

ハードウェア

「ハードウェア (Hardware)」ペイン (図 2 に示すスクリーンショットを参照) には、主なシステムコンポーネントのグラフが表示されます。これは、システム構成、各サブシステムの最適化およびメンテナンス、アーリーメンテナンスフィードバック (EMF) 機能、診断、パフォーマンスといった全てのハードウェア機能にアクセスするためのユーザーインタフェースとなります。単一のユーザーインタフェースからすべてのシステム設定、メンテナンス、診断機能を利用できるため、システム動作に関するあらゆる情報をいつでも簡単に得ることが可能です。別のシステムハードウェアモジュール (別のオートサンプラや LC/GC モジュールなど) が選択された場合には、機器のグラフが自動的にアップデートされます。

メソッドウィザード

図 3. メソッドウィザード

インテリジェントなメソッドウィザード

新しいメソッドウィザード (図 3) を使えば、ユーザーの経験・技量レベルにかかわらず、新しいメソッドを迅速に開発することができます。アプリケーションに関するいくつかの簡単な質問や一般的なサンプルの種類にもとづき、最適化されたメソッドを作成することが可能です。ハードウェア構成や必要とされるメソッド性能をもとに、適切な同位体や内部標準、適切な積分時間、プラズマ条件、チューンモードをウィザードが自動的に選択します。その全てを、数回のマウスクリックだけで実行することができます。

取り込みパラメータ

図 4. 取り込みパラメータ

バッチ

「バッチ (Batch)」ペインには、ペリポンププログラム、チューンモード、取り込みパラメータ (図 4)、サンプルリストおよびデータ解析 (キャリブレーション) パラメータなど、サンプル分析セッションや実験に必要な全ての情報がまとめられています。こうしたパラメータは、全てバッチに保存され、その後のサンプル分析の際に呼び出して使用することができます。

このバッチコンセプトは、ICP-MS MassHunter プラットフォームの大きな進歩です。このコンセプトにより、ファイル管理がより簡単になり、定期的なルーチンサンプル分析で一貫した条件を使用することを可能としました。新しいバッチは、メソッドウィザードを用いて自動的に作成することも、ブランクテンプレートや既存のバッチから作成することもできます。ソフトウェアが内蔵する一連の設定済みメソッドから作成することも可能です。あらかじめ設定されたプラズマおよびバッチチューン機能を使えば、選択したプラズマ条件およびイオンレンズ条件に応じて、バッチを自動的に最適化することができます。これにより、異なる機器や分析日の違い、異なるサンプルの間でも一貫した機器性能が確保できます。

キュー、バッチ、シグナルモニター

図 5. キュー、バッチ、シグナルモニター

キュー

キューは、各ハードウェアタスク (スタートアップ中の性能チェック分析など) と分析待ちバッチをリストアップするインタラクティブなスケジュールです。他のペインと同様に、「キュー (Queue)」画面もユーザーによる設定が可能ですが、デフォルトレイアウト (図 5) では、現在のバッチに関するインタラクティブなサンプルリストであるキューリストと、現在のサンプルのリアルタイムデータが表示されます。

図 5 では、モニター機能も表示しています。この機能は、取り込みと取り込みの間に、ユーザーの選択した複数の質量のシグナルを表示するものです。洗浄を視覚的にモニタリングできるほか、取り込みの前に、次のサンプルが安定したシグナルに達したかどうかを判断する指標にもなります。

シーケンス分析の実行中は、いつでも現在のサンプルリストを編集することができます。たとえば、緊急の分析を要するサンプルの割り込みなどが可能です。また、キューリストで予定されているタスクや分析待ちバッチについても、移動や編集、削除が可能です。

データ解析バッチ画面

図 6. データ解析バッチ画面

データ解析

前バージョンの ICP-MS MassHunter ソフトウェアから、Batch at a Glance テーブルが導入されました。新バージョンでも、このレイアウトが引き継がれています (図 6)。前からパワフルだった QC チェックおよびフラッギング機能に加えて、さらに新しい QC Action on Failure (AOF) 機能が導入されました。QC AOF を使えば、最大 5 種類の QC サンプルを設定し、それぞれに独自の予測値と管理限界値を割り当て、QC 基準を満たせなかった場合には、シーケンス中に是正措置を実行することができます。MassHunter のデータ解析モジュールが搭載するもう 1 つのパワフルな機能が、Quick Scan データの処理機能です。Quick Scan を使えば、バッチ内の各サンプルで高速フル質量スペクトル取り込みを導入し、全てのサンプルの全元素について、半定量またはスクリーニングデータを得ることが可能です。サンプル組成が不明の場合や、メソッド内で個別に校正または定量していない元素を調べたい場合には、この機能がきわめて役立ちます。

ICP-MS Mobile アプリ

図 7. ICP-MS Mobile アプリ

Agilent ICP-MS Mobile アプリ

新しい ICP-MS Mobile アプリ (図 7) は、Apple iOS や Android モバイル端末を使う全てのユーザーにフリーで提供するために開発されたアプリで、iTunes ストアと Google Play ストアからダウンロードできます。

ICP-MS Mobile アプリを使えば、ウェブに接続された MassHunter 4.1 搭載 Agilent ICP-MS にアクセスし、ハードウェア、バッチ、キューなどの現在の機器ステータスやエラー条件をモバイル端末から確認することができます。遠隔操作でのプラズマの点火や消火、キューの停止や再開なども可能です。プロッティング機能を使えば、MassHunter 内標準または QC チャートを遠隔表示して、現在分析中のバッチを確認することができます。