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注目論文リスト 
遺伝子発現
"Zscan4 transiently reactivates early embryonic genes during the generation of induced pluripotent stem cells." Sci Rep. 2012
[22355722]
遺伝子発現: 体細胞に特定の転写因子を過剰発現させて人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する技術により、再生医療の将来は非常に有望となっています。しかし、初期化機構の初期段階についてはまだよくわかっていません。以前、彼らは Zscan4 (zinc finger and SCAN domain containing 4) が 2細胞期胚と、一定の時期に胚性幹細胞の約 5% でのみ特異的に発現し、適切な胚盤胞の形成および胚性幹細胞におけるゲノム安定性とテロメアの維持に決定的な働きをすることを報告しました。本研究では、Zscan4 が核移植の環境に存在するものの iPS 因子のレパートリーで見逃されている因子ではないかとの仮説が検証され、Zscan4 を Klf4、Oct4、Sox2 と共発現させることでマウスの胚性繊維芽細胞からiPSCを効率的に作製できる事が示されました。興味深いことに、Zscan4 の過剰発現はiPS細胞形成の最初の数日でのみ必要でした。Agilentの NIA Mouse 44K v3.0 マイクロアレイを用いた解析により、着床前期胚特異的遺伝子の一時的かつ早い誘導が Zscan4 依存性であることが明らかとなりました。この研究により Zscan4 は新規の重要な自然に存在する因子であり、初期化過程を促進し、初期の胚性遺伝子を再活性化することが示されています。
"Error, reproducibility and sensitivity: a pipeline for data processing of Agilent oligonucleotide expression arrays." BMC Bioinfomatics. 2010
[20576120]
遺伝子発現: 本研究で著者らは、Agilentの長鎖オリゴ遺伝子発現マイクロアレイプラットフォームを使い、ヒトのマクロファージと樹状細胞をサンプルとして得られた大量のデータセットの数値化と分析を行う方法を調べました。著者らは、まず約3年にわたって研究室に集めた77のデータセットを調べています。それぞれの実験では、Cy3とCy5でそれぞれラベルした2種類のcDNAサンプルの混合物をAgilentのWhole Human GenomeオリゴDNAマイクロアレイが用いられました。Cy3のサンプルは常にStratageneのUniversal Human Referenceから調製したリファレンスcDNAで、いくつかの実験を除き、リファレンスRNAのロットはすべての実験で同じものが使用されています。Cy5で標識したcDNAは、さまざまな方法で培養および/または刺激された単球由来のマクロファージか樹状細胞またはMutz-3白血病細胞から抽出されたRNAから調製されました。アレイのデータ解析では、同じプローブ配列(繰り返しプローブレ)のスポット間のシグナルからアレイ内変動が評価されました。変動の評価は4 x 4 Human genome Agilentアレイに10レプリケートがばらばらに配置されている263種類のオリゴヌクレオチドと153箇所にある「ネガティブコントロール」オリゴヌクレオチド(3 x SLv1)を使って実施されました。これら263プローブ(ネガティブコントロールを含む)それぞれの10レプリケートのセットの平均標準偏差が、5つのランダムに選ばれたアレイのデータについて繰り返し計算されています。その結果、平均標準偏差はCy5のシグナルについて0.20(log2単位)、Cy3のシグナルについて0.16 (log2単位)でした。アレイ内でのそれぞれのレプリケートセットのCy3とCy5のシグナルは、非常に相関性が高く、変動は局所的な違い(たとえば、オリゴヌクレオチド合成効率、またはアレイ内のオリゴヌクレオチドの位置)によることが示唆されています。標準偏差はすべてのレプリケートプローブについて平均logシグナルの2%に過ぎず、アレイ製造の再現性と均一性の高さが強調されました。リファレンスデータによって正規化されたレプリケートの解析により、アレイ内変動は小さい(平均logシグナルの2%程度)ことが示されましたが、レプリケートアレイで測定したアレイ間変動では、標準偏差はおよそ0.5 (log2単位;平均の6%)でした。これについては、Cy5/Cy3シグナル比を使っても誤差を減らすという点ではあまり改善されませんでした。最後に、Arabidopsisのサンプルを使って得られた発現データの比較から、低レベルの転写を示す各サンプルの大量の遺伝子について、細胞のトランスクリプトームの真の複雑さが反映されていることが示されています。
"Maize global transcriptomics reveals pervasive leaf diurnal rhythms but rhythms in developing ears are largely limited to the core oscillator." PLoS One. 2010
[20886102]
遺伝子発現: 植物の概日周期は、変動する昼夜の周期に生体内の生理学的な反応を同調させる生物の環境への適応です。この概日周期の生物学に関する包括的な見解には、世界の主要な穀物であるトウモロコシ(Zea mays)が含まれていません。本研究では、自然な野外条件下の葉(光合成組織)と発達中の穂(非光合成組織)をサンプルに用いて、概日周期の全ゲノム転写産物プロファイリングが高密度105K Agilentのカスタムアレイを用いて調べられました。Agilentの"105K"マイクロアレイは、トウモロコシのゲノムおよび転写産物の配列に対してデザインされ、最低1つの60-merのオリゴヌクレオチドプローブでトウモロコシの遺伝子がカバーされました。プローブ配列の大元は、さまざまな組織および処理に由来する約140万の公的およびプライベートのEST配列をベースにしており、トウモロコシの葉と未成熟な穂を代表とし、約22%のESTは葉もしくは類似の光合成を行う気生器官から、12%は未成熟な穂が由来となっています。配列の過半数はB73遺伝子型に由来しますが、他の遺伝子型のものも含まれています。この過程で110万の高品質なESTサブセットが用いられ、平均1.0 kbで約66 Kの転写産物配列が得られました。ほとんどすべての転写産物に対して少なくとも1つの60-merのオリゴがデザインされましたが、転写産物1つにつき2つ以上のオリゴが設計されたものもあります。さらに、66 Kの転写産物セットに含まれない遺伝子または遺伝子の一部を検出するように、またアレイの空きを埋めるため、当時(2006年秋)利用可能な公的B73ゲノム配列、すなわちGenBankのB73 BACsとTIGRのAZM5 GSS Assemblyデータセットに対してさまざまなBLAST解析が行われました。このようにしてできたアレイデザインは、ほとんどのトウモロコシの遺伝子の他、データセットの配列ミスまたは遺伝子型の変動もある程度存在します。イントロン-エクソンジャンクションにまたがるように、あるいはESTとそのアセンブリに固有のキメラジャンクションに設計されたオリゴも含まれるため、いくつかのオリゴのB73特異的転写産物サンプルに対して最適ではないかもしれません。このマイクロアレイのユニークな遺伝子の数を推定したところ、約45,000遺伝子と示唆されました。最終的に、この"105K"フォーマットのAgilentマイクロアレイは、トウモロコシの遺伝子配列に対してデザインされた103,685オリゴからなります。このアレイを用いた概日周期に関するアレイ実験・解析の結果、葉と穂の両方で概日周期が見られました。またトウモロコシの中心振動子遺伝子はArabidopsisの相当する遺伝子との間で大部分保存されていることが分かりました。概日遺伝子調節は葉で起こり、発現された転写産物の23%が概日周期を示しました。これらの転写産物はgene ontology termの分子機能で1700以上に割り当てられており、植物における概日リズムの幅広い影響が強調された結果となりました。
"A 44K microarray dataset of the changing transcriptome in developing Atlantic salmon (Salmo salar L.)" BMC Res Notes. 2011
[21447175]
遺伝子発現: タイセイヨウサケ (Salmo salar L.) は環境と経済に重要な生物であり、遺伝子の全体像がこれまでに明らかにされてきましたが、転写の観点から言えば、受精から幼魚の段階までの一貫した初期発生段階に沿って遺伝子発現変化の性質を明らかにすることが重要です。本研究は、新しくサケ類用に設計した Agilent のカスタムアレイ (44K) を初めて使用した報告になります。このアレイは、約22,000 のニジマス(Oncorhynchus mykiss) とタイセイヨウサケの間で保存されている (95% 類似) 配列、およびそれぞれ 14,866 と 5,661 のタイセイヨウサケとニジマスのコンティグ配列から設計された 60-mer オリゴ DNA を搭載しています。S. salar サンプルは受精後 2日から 89日までの間で17ポイントがサンプリングされました。マイクロアレイ解析ではまず最初に、受精後日数の条件が Sliding Window 法で互いに比較されました。多重検定による補正 (multiple test correction; MTC) 無しで分散が等しくないと仮定したt検定 (Welchの検定)(p ≤ 0.01、倍率変化 ≥ 2.0)を用い、時系列における、各々の時系列ポイントが次の時系列ポイントと比較されました。その結果、多くの遺伝子が特に発生の始めの数週間に発現差調節を受けていることが分かりました。実際のところ、発生の始めの 10日間にほとんどの転写の変化が起きていました。次に、条件間での生物学的変動および技術的なエラーを調べるため、各条件に対してバイオロジカルレプリケート間での違いが調べられました。その結果、データのばらつきは、最初の数日において本質的には目立たない程度であることが明らかとなり、今回の時系列比較での非常に大きな転写産物の変化は生物学的に見て正確であると考察されています。
"Differential genome-wide gene expression profiling of bovine largest and second-largest follicles: identification of genes associated with growth of dominant follicles." Reprod. Biol. Endocrinol. 2010
[20132558]
遺伝子発現: ウシ卵胞の発生は非常に多くの分子機構と生物学的経路によって調節されています。本研究で著者らは、Agilent の牛カスタムマイクロアレイと定量リアルタイム PCR(QPCR) を組み合わせた網羅的遺伝子発現プロファイルにより、最も大きな卵胞(F1)と2番目に大きな卵胞(F2)の間の遺伝子発現の違いを特定し、卵胞を分類することを試みました。データ解析では、マイクロアレイ上の 100個の GAPDH遺伝子のシグナル強度の中央値を内部標準として用い、遺伝子発現データセットの正規化を行いました。正規化後、3308遺伝子についてさらに分析を行いました。卵胞間での各遺伝子の相対量は、卵胞間での各遺伝子の正規化値で割って算出されました。少なくとも2つの卵胞間で 20倍以上の発現レベルの違いを示した遺伝子について、その正規化されたマイクロアレイデータを次の階層的クラスタ分析に使用しました。階層的クラスタ分析により卵胞は 2つのクラスタに分類されました。クラスタAはF2だけからなり、IGFBP5 を含む 31遺伝子の高い発現量によって特徴付けられ、一方、クラスタB は F1 だけからなり、CYP19と  FSHR を含む 45遺伝子を主として発現していました。リアルタイム PCR によるバリデーションも実施されています。結論として、F1 と F2 の網羅的遺伝子発現プロファイルは、卵胞の状態の違いを反映することが示されました。卵胞における発生段階特異的遺伝子の発現は、生育および卵胞閉鎖と密接に関連しているかもしれません。
"Differential gene expression of serine protease inhibitors in bovine ovarian follicle: possible involvement in follicular growth and atresia." Reprod Biol Endocrinol. 2011
[21619581]
遺伝子発現: SERPINs(Serine protease inhibitors)は、線維素溶解、血液凝固、炎症、細胞運動、細胞分化、およびアポトーシスに関するプロテアーゼを調節しています。本研究では、ウシを材料に用いて、マイクロアレイと定量リアルタイムPCR(QPCR)を組み合わせ、健康な卵胞と閉鎖卵胞の間のSERPINスーパーファミリーに属する遺伝子の発現の違いが調べられました。Agilentによって作製されたウシのカスタムアレイには、10263配列が含まれ、そのうち4466配列は既知のウシの遺伝子で14のSERPIN遺伝子を含み、5697配列は新規ウシ遺伝子の可能性がある未知配列であり、100配列は内部標準となっています。健康な卵胞と閉鎖卵胞の遺伝子発現の違いがそのカスタムアレイで解析されました。さらにQPCR解析により、4つのSERPINs(SERPINA5、SERPINB6、SERPINE2、およびSERPINF2)は健康な卵胞より閉鎖卵胞でmRNAの発現が多く、2つのSERPINs(SERPINE1およびSERPING1)は少ないことが確かめられました。これらのSERPINの特異的な発現が牛の卵胞の成長と閉鎖に密接に関わっていると考察されています。
"Data Mining of Citrus Expression Sequence Data Sets and Application for Functional Genomic Study" Acta Hort. Proc. 2nd on Citrus Biotechnology 2011 遺伝子発現: 柑橘類のゲノム時代の到来は、さまざまな複雑な遺伝的問題の解決を可能にすると期待されます。発現した遺伝子から得られた配列は遺伝子の機能を理解するのに直接の洞察を与えるだけでなく、分子レベルの解析のための価値ある情報も提供します。EST 配列間の重複を減らす配列アセンブリにより、10品種を超える柑橘類から得られた 564,887 の EST 配列から 98,869 のコンティグとシングルトンが推定されました。調査の結果、モチーフの長さが2から 477 bp の 143,660 の繰り返し配列領域が特定されました。すべてのEST配列に対してコンティグのアラインメント解析を行い、ヌクレオチドの挿入、欠失、またはミスマッチを示す領域を特定しました。機能解析により、54.5 から 65.6% のコンティグの遺伝子オントロジーを分類し、16.4% のコンティグの KEGG データベースでの生物学的経路を分類しました。Arabidopsis の cDNA配列に対するホモロジーを比較して、22.1% のコンティグを遺伝子ファミリーに、4.4%の遺伝子を転写因子遺伝子に分類しました。これらの結果から、著者らは Agilent の eArray を使い、43,798 の重複しないプローブセットを使った遺伝子発現解析のためのカスタムアレイを設計しました。同一の RNA サンプルの遺伝子発現プロファイルは、変化した遺伝子の割合が以前報告した 21,495 プローブの 22K マイクロアレイと同じであったことを示しました。こうして、新しいマイクロアレイが以前のタイプと置き換えられることになりました。本研究で蓄積したあらゆるリソースは、包括的データベースシステムに統合されています。このデータベースと結び付いたマイクロアレイシステムはトランスクリプトーム解析を通して柑橘類の機能的ゲノム研究を促進する助けとなると期待されます。
"Field transcriptome revealed critical developmental and physiological transitions involved in the expression of growth potential in japonica rice." BMC Plant Biol. 2011
[21226959]
遺伝子発現: 植物の生長は内部と外部からのシグナルの相乗的な相互作用に依存し、特に生育の重要な段階でこれらの複雑な要素が働き、作物の生産力に影響します。穀物の生産における生物学的なプロセスを体系的に理解する一つの取り組みとして、イネの高解像度トランスクリプトーム解析が行われました。自然の水田で育てられたイネの生活環が、Agilent イネオリゴ DNA マイクロアレイ 4 x 44K RAP-DB を用いて明らかになりました。様々な生育段階で 48の器官と組織の広範囲の遺伝子発現プロファイルにより、731の器官/組織特異的遺伝子と215の成長段階特異的に発現する遺伝子が葉身、葉鞘、および根で広く特定されました。その結果、この田植えから収穫までの葉の連続的なトランスクリプトームプロファイリングにより、遺伝子発現の成長段階特異性および葉の転写プログラムでの 2つの主要な劇的な変化が明らかにされました。一つ目の主要な変化は穂の分化の前に起きた、長日条件で花芽形成ホルモン遺伝子と推定される RFT1 の発現と、2つのマイクロ RNA 前駆体の発現低下でした。二つ目の主要な変化は開花直後に起こり、不稔の突然変異株の分析から、生育中の穀粒形成が原因ではなくむしろ促進要因であることが明らかとなりました。本研究の成果はイネの機能的ゲノミクスの遺伝子レベルの基礎洞察を与えるだけでなく、開花と種の発生のような重要な生理学的プロセスの理解へ新しい洞察を与えることで、一般作物の生産を最適化する新規戦略を導くかもしれません。
"Os-GIGANTEA Confers Robust Diurnal Rhythms on the Global Transcriptome of Rice in the Field" Plant Cell. 2011
[21571948]
遺伝子発現: 時計遺伝子を実験室で扱う研究は進んでいますが、自然のフィールド条件下では、植物での概日時計の意義についてはほとんど分かっていません。本研究では、イネの概日時計関連変異株を作製するため、フィトクロム欠乏症の早咲き変異株に対して遅咲きの表現型を示すサプレッサー変異株のスクリーニングが行われ、GIGANTIA (Os-GI、Arabidopsis の GI のイネにおける唯一の相同遺伝子)の突然変異によって引き起こされた表現型が見いだされました。Agilent イネオリゴマイクロアレイを用いて、その変異株の葉の経時的トランスクリプトーム解析を行った結果、Os-GI が27,201 遺伝子の 75% (偽発見率 = 0.05) を調節しており、概日リズム相によるフィールドでの全体的な遺伝子発現の広い振幅と微調整に必要であることが示されました。一方、一次代謝に関わる転写産物はosgi によって大きくは影響されませんでした。葉の経時的メタボローム解析によると、osgi 変異株での一次代謝産物への変化は認められず、正味の光合成速度および穀粒の収量も影響がありませんでした。対照的にフェニルプロパノイドの代謝経路の転写産物と代謝産物のなかには常に影響を受けているものがありました。フィールドにおけるイネの正味の一次同化は osgi 変異に関する概日時計の異常に直面しても健全なままであり、実験室における Arabitopsis thaliana のtoc1 および ztl 変異によって引き起こされた異常とは異なるものだったのです。自然の条件と実験室の条件では遺伝子の働き方が大きく変わるのかもしれません。
"Hypoxia enhances the generation of induced pluripotent stem cells." Cell Stem Cell. 2009
[19716359]
遺伝子発現: iPS細胞の作製効率の低さやc-Mycのようながん原遺伝子の使用による腫瘍形成率の高さがiPS技術の医療での応用の妨げになっています。一方、細胞外マトリックスタンパク質、温度、酸素分圧などが幹細胞の機能と分化に大きな影響を与える事が知られています。本研究では、低酸素状態でリプログラミングを行うことで、マウスやヒトiPS作製効率が改善するかどうか検討されました。細胞を21%、5%、あるいは1%の酸素で培養すると、低酸素培養により全コロニーに対するGFP陽性のコロニーの割合が増加しました。低酸素培養で得られたGFP陽性コロニーは形態および大きさが正常酸素状態のコロニーと変わらず、アルカリ性フォスファターゼ染色では、5%酸素での培養で酵素活性が増加しました。次に、2、3、あるいは4因子を導入したMEFからコロニーをランダムに拾い複数のiPS細胞株を樹立したところ、これらのiPS細胞は典型的なES細胞の形態を示しました。さらに、低酸素状態がプラスミドベクターとpiggyBac転移系を使ったiPS細胞樹立の効率を改善できるかどうかも調べられました。その結果、これら非ウイルス性のプラスミド発現ベクターやpiggyBac転移系を用いても、iPS細胞樹立効率が改善されることが示されました。その上で、細胞増殖、生存、および遺伝子発現への低酸素培養の影響が調べられました。リプログラミング過程での細胞の遺伝子発現プロファイルを調査するため、Agilentマイクロアレイ分析と定量的リアルタイムRT-PCRが行われました。MEFを低酸素および正常酸素状態で培養、発現プロファイルが取得され、5%酸素条件下で培養したMEFでは、57.2%の胚性幹細胞特異的遺伝子の発現が増加し、67.5%のMEF特異的遺伝子の発現が減少することが示されました。最後に、STO細胞の刺激による樹立効率向上の可能性を排除するため、STO細胞の支持層なしで低酸素状態での培養条件でiPS細胞の増殖状態が調べられました。要約すれば、低酸素状態でマウスおよびヒトの体細胞からiPS細胞を樹立する効率が改善されることが示されたことになります。5%未満の酸素で培養することでより効率が上がることが分かりましたが、リプログラミング過程を促進する最適な酸素濃度と低酸素状態での培養時間を決めるためにさらなる研究が必要と考察されています。
"Long Noncoding RNAs with Enhancer-like Function in Human Cells." Cell 2010 遺伝子発現: 長鎖noncoding RNA(ncRNA)は哺乳類のトランスクリプトームの大きな部分を占めていますが、その生物学的機能はあまり分かっていません。今までに研究されてきたいくつかの長鎖ncRNAは、X染色体不活性化やインプリンティングの過程で遺伝子発現を抑制します。彼らは、3019 の長鎖ncRNA配列のライブラリに基づいて作成した Agilent カスタムアレイを用い、3種類のヒト細胞株をサンプルにおけるncRNAの発現パターンを分析しました。全体として、1167のncRNAの発現が3種類のうち少なくとも1種類で検出され、576のncRNAの発現が3種類の全てで検出されました。タンパク質をコードしている遺伝子の発現は、Agilent Whole Human Genome オリゴ DNA マイクロアレイ(4x44K)を使用しました。その結果、予想外なことに、ヒト細胞株においてこれらの長鎖ncRNAの中にエンハンサー様の機能を持つものを見つけました。こういったncRNAの発現量を下げると、血球新生のマスター調節因子SCL(TAL1とも呼ばれる)、Snai1およびSnai2を含む、その近隣のタンパク質をコードしている遺伝子の発現も減少しました。彼らは、配列または構造のホモロジーに伴い、ncRNAが近隣のタンパク質をコードする遺伝子を標的として発現を増加させる機構を考察しました。今後、遺伝子発現の中心選手としての新しい役割が長鎖ncRNAに見出されることが期待されます。
"RiceXPro: a platform for monitoring gene expression in japonica rice grown under natural field conditions." Nucleic Acids Res. 2011
[21045061]
遺伝子発現: マイクロアレイデータのプラットフォーム内の再現性はいずれの市販のアレイシステムでも達成されていますが、より信頼できる生物学的情報と遺伝子発現プロファイルの解釈には、同じプラットフォームを用いて単一のモデル植物の変化を解析することが肝要です。今回、水田でのイネの生育中の遺伝子発現変化の全体像を公開するために構築された「遺伝子発現データベース RiceXPro が報告されました。マイクロアレイ分析では、Agilent イネオリゴ DNA マイクロアレイ RAP-DB が用いられました。このマイクロアレイはイネアノテーションプロジェクトデータベース (RAP-DB) で記載されている、手作業で高精度に注釈づけされたアノテーションに基づき設計されました。RiceXPro はさまざまな器官と組織の時間的空間的な遺伝子発現プロファイルおよび田植えから稲刈りまでの葉の連続的な遺伝子発現プロファイルに相当する 2つのデータセットを含んでいます。ユーザーフレンドリーなウェブインターフェイスでキーワードおよび染色体サーチによる特異的な遺伝子発現プロファイルの抽出および基本的なデータ分析が可能となり、特定の遺伝子発現の器官/組織および生育段階特異性についての有益な情報が得られます。さまざまなホルモンで処理されたイネ、および生物的および非生物的ストレスにさらされたイネを含むマイクロアレイ分析も行われています。今後、この水田の遺伝子発現データセットは、発現差比較解析の参照データセットとして使われ、主要な農作物の生産性を決める様々な生物学的プロセスの理解に貢献するものと期待されます。
"Direct reprogramming of somatic cells is promoted by maternal transcription factor Glis1." Nature 2011
[21654807]
遺伝子発現: 人工多能性幹細胞 (iPS細胞) は、まとめて ”OSK” と呼ばれる3種の転写因子 (Oct3/4(Pou5f1とも呼ばれる)、Sox2、および Klf4) を遺伝子導入で発現させることにより体細胞から作られます。しかし、iPS細胞への変換は非効率的で、がん原遺伝子 Myc は OSK による iPS細胞の作製効率を高めるものの、できた iPS細胞の腫瘍原性も高めてしまいます。本研究では Gli様転写因子 Glis1 (Glis family zinc finger 1) を ”OSK” とともに導入するとマウスおよびヒト繊維芽細胞からの iPS細胞の作製効率が顕著に高まることが示されました。Agilent Whole Human Genome オリゴ DNA マイクロアレイを用いて、”OSK” と GLIS1 で樹立した iPS細胞が OSK と MYC で作った細胞と同様の遺伝子発現プロファイルをもつことが示されました。さらにマイクロアレイ分析が進められ、Glis1 が Myc、Nanog、Lin28、Wnt、Essrb、および上皮間葉移行を含む複数の初期化前駆経路を促進していることなどが示されました。
"Dual oxidase 1 induced by Th2 cytokines promotes STAT6 phosphorylation via oxidative inactivation of protein tyrosine phosphatase 1B in human epidermal keratinocytes." J. Immunol 2011
[21411736]
遺伝子発現: 過酸化水素は細胞毒性効果でよく知られており、近年、シグナル伝達で重要な役割を果たしていることが報告されています。本研究では、正常ヒト表皮角化細胞 (NHEK) を用いて、Agilent Whole Human Genome オリゴ DNA マイクロアレイ (4x44K) によるプロファイリングが行われ GeneSpring GX によるデータ解析が実施されました。その結果、NHEK の 7つの NOX/DUOX family のうち、Th2 サイトカイン IL-4/IL-13 処理で発現が増大したのは DUOX1 の mRNA のみであることが分かりました。DUOX1 の誘導は mRNA (Mx3000p Real-Time 定量PCR システム) およびタンパク質レベル (ウェスタンブロッティング) で確認され、さらに DUOX1 が STAT6 のリン酸化を増加させる機構として、タンパク質チロシンホスファターゼ 1B の活性部位のシステイン 215 の酸化による DUOX1 調節が示されました。これらの結果は、DUOX1 の役割が STAT6 シグナル伝達の正の調節因子であることを示しており、炎症性皮膚疾患では、TNF-α と Th2 サイトカインによって作られる活性酸素種が NOX/DUOX family の発現増加を介して表皮STAT6 シグナル伝達を相乗的に刺激すると考察されています。
"Nickel differentially regulates NFAT and NF-κB activation in T cell signaling." Toxicol Appl Pharmacol. 2011
[21569788]
遺伝子発現: ニッケルはヒト皮膚の接触過敏症を引き起こす潜在的なハプテンであり、最近の疫学研究で先進国の最も一般的な接触性アレルギーであることが明らかとなっています。この研究では CD3 抗体と CD28 抗体で活性化されたヒトCD3+ T 細胞で NiCl2 の mRNA 発現への効果が調べられました。彼らは Agilent Whole Human Genome オリゴ DNA マイクロアレイ (4x44K) を用いて、NiCl2 で処理した T細胞の免疫反応関連遺伝子を調べました。GeneSpring GX によるデータ解析の結果、70遺伝子 (IL-1β、IL-6、および IL-8 を含む) の発現が増加し、61遺伝子 (IL-2、IL-4、IL-10、および IFN-γを含む) の発現低下が特定され、さらに Mx3000p Real-Time 定量 PCR システムおよび NiCl2 で調節されるシグナル伝達経路の検討により、NiCl2 が T細胞での NFAT を減らし NF-κB シグナル伝達を亢進させることが示されました。これらの結果により、ニッケルによる T細胞のシグナル伝達の免疫関連分子による調節への影響が明らかとなりました。
"A long noncoding RNA maintains active chromatin to coordinate homeotic gene expression." Nature 2011
[21423168]
遺伝子発現: ゲノムは長鎖非コード RNA (lincRNA) を多数転写し、その多くは遺伝子サイレンシングに関係していると報告されてきました。この研究では、解剖学的部位の異なる様々な繊維芽細胞に対し chromosome conformation capture (CCC-seq) 法による解析が実施された結果、HOXA 遺伝子座の 5' 端から転写され、下流の 5' HOXA 遺伝子の活性化を協調させる lincRNA の存在が明らかにされました。HOTTIP と名付けられたこの lincRNA は、siRNA ノックダウン、 Agilent 定量 RT-PCR で確認され、さらに、異なるヒストン修飾および転写活性型 H3K4me3 のサブセットに関するタンパク質に対する抗体を用いて ChIP-on-chip が実施されています。CCC-seq と ChIP-on-chip を組み合わせた解析の結果、活性クロマチン状態をプログラムすることによって近傍の遺伝子発現を活性化させるエンハンサー様活性を持つ lincRNA のメカニズムが提唱されました。酵素活性をもつ RNA を利用することで高次の染色体ループ構造の情報がクロマチン修飾から遺伝子発現へと正確に伝わるのかもしれません。
"Building prognostic models for breast cancer patients using clinical variables and hundreds of gene expression signatures." BMC Med Genomics. 2011
[21214954]
遺伝子発現: 様々な乳がん遺伝子発現プロファイルが取得され、様々な予後予測法が開発されてきましたが、あらゆる乳がんのサブタイプで予後プロファイルが適切に行われているかどうかは不明です。この研究では、新しい予後モデルの可能性を調べるため、Affymetirx やアジレントのマイクロアレイを用いて大量で均一に取得された乳がん患者の発現データセットを、全身性の治療(たとえば全身性アジュヴァント療法)を受けていない患者のデータと組み合わせたデータ解析が実施されました。その結果、集団全体で7年間無再発生存のための、さらにはエストロゲン受容体陽性あるいはルミナールサブタイプの患者のための統計学的に有意な予後モデルが示されました。ただし彼らは、遺伝子発現プロファイルに加え、遺伝子変異の状態あるいは DNA コピー数変化のような遺伝子発現と臨床病理変数を超えた他の変数が、エストロゲン受容体陰性の乳がん患者のための堅牢な予後モデルを作るのに必要であると考察しています。今後、このような混合臨床ゲノミクスモデルをベースとするアプローチが、臨床病理基準より優れた治療反応性の予測プログラムを提供したり、他の腫瘍タイプへ応用されるかもしれません。
"Genome sequence of the pattern forming Paenibacillus vortex bacterium reveals potential for thriving in complex environments." BMC Genomics 2010
[21167037]
CGH and 遺伝子発現: 非常に複雑な構造のコロニーを形成するパターン形成細菌が知られています。しかし、パターン形成や複雑な運動能を有する有用なゲノムミクスデータは殆どありませんでした。この研究では、P. vortex の全ゲノムが454 Life Sciences と Illumina の両シーケンサを組み合わせて配列決定され、さらに、決定した塩基配列から、コード領域と非コード領域を含むアジレントのカスタムアレイが作成され DNA 解析と発現解析が行われました。アレイ解析では最初に、ゲノム DNA が分析され、今回の de novo シーケンシングのバリデーションが実施されました。次に、様々な増殖条件の RNA が同じカスタムアレイを用いて分析されました。その結果、73% の予測された ORF が確認され、残りの 27% の ORF は調べた条件では検出されませんでした。遺伝子間領域に位置すると予測された non-coding RNA については、58% もの発現が確認されました。結果として、非常に多くの二成分制御系、転写因子、輸送および生体防御関連遺伝子が含まれることが明らかにされ、微生物系でのパターン形成および自己組織化について、高等生物での細胞の協調的な行動の観点からの考察がなされました。この細菌は生物工学的利用のための有用な資源になると期待されるとともに、今後も、次世代シーケンサの結果を基に高品質なマイクロアレイを用いて様々な条件での発現解析が実施されることが期待されます。
Broad epigenetic signature of maternal care in the brain of adult rats." PLoS One 2011
[21386994]
メチル化 and 遺伝子発現: 母性的養育はラットとヒトの海馬の遺伝子 NR3C1 (グルココルチコイド受容体) のエピジェネティックなプログラミングへの長期の影響に関係していることが知られています。しかし、たった一遺伝子のプロモーターのエピジェネティックな変化だけで、母性的養育の違いに対する影響を説明できるとは思えませんでした。本研究では、成体ラットの海馬における NR3C1 を含む周辺ゲノム領域にプローブを網羅した Agilent カスタム高密度オリゴヌクレオチドアレイ (eArrayで作成) を用いて、生後1週間に受けた愛情 (毛づくろいなど) の異なる様々なラットの海馬における DNA メチル化、ヒストンアセチル化、および遺伝子発現プロファイリングが行われました。その結果、調べた領域の多くの遺伝子にわたってプロモーター、エキソン、および高い転写活性に関係する遺伝子の末端においてエピジェネティックな変化が見られました。この領域では変化しない遺伝子もある一方で、クラスター状に特異的にパターン化された反応も示されました。興味深いことに、シナプス形成に関わる protocadherin-α、-β および -γ (Pcdh) 遺伝子ファミリーを含む染色体領域は母性的養育に対する反応としては最も大きな違いを示しました。彼らはこれまでに報告されてきたような遺伝子特異的な反応から、H3K9 アセチル化といったグローバルなヒストン修飾の変化を明らかにしています。今後、「マイクロ」 と 「マクロ」 のエピジェネティックな反応の相対的な役割について述べる必要がありますが、実際のところ、初期の母性的養育に対して様々な遺伝子の発現のエピジェネティックな調節が幅広く協調的に起こっているのかもしれません。
 "Induction of functional hepatocyte-like cells from mouse fibroblasts by defined factors", Nature 2011
[21562492]
遺伝子発現 : 人工多能性幹細胞からの分化誘導を行わずに完全に分化した細胞をある他の細胞種に直接変換する報告がありますが、これらの細胞が損傷組織をin vivoで修復できるかどうかは良く分かっていません。本研究では、iHep(人工肝細胞)をGata4、Hnf1α、およびFoxa3の過剰発現により誘導し、iHep、TTF(尾部由来繊維芽細胞)、MEF(マウス胚由来繊維芽細胞)、および肝細胞の網羅的発現プロファイルを比較するため、Agilent Whole Mouse Expressionマイクロアレイを用いた解析が行われました。アレイデータはGeneSpringを用いて正規化され、iHepが培養肝細胞と近い発現プロファイルを示す一方、TTFとMEFとは異なることが明らかになりました。さらに重要なことにiHepは腫瘍形成しにくいことが分かりました。本研究により再生医療のための付加的な戦略が示されたと言えます。
"Activated Wnt/ß-catenin signaling in melanoma is associated with decreased proliferation in patient tumors and a murine melanoma model" PNAS 2009
[19144919]
遺伝子発現 : Wnt シグナル伝達系は発生・分化に関わる重要な経路であるとともに消化器系の癌化に関わることが知られています。今回、ワシントン大学の幹細胞再生医療研究所のチームは、悪性黒色腫 (メラノーマ)患者において、核内の β-カテニンの発現量が多いほど生存期間が延びることを見出し、Agilent whole mouse genome マイクロアレイ を用いて、マウスのメラノーマモデルに WNT3A/5A を導入することで Wnt/β-カテニン のシグナリングを活性化した場合の発現プロファイルを取得しました。その結果、既知の核内 β-カテニン のターゲット遺伝子の発現上昇に加え、正常なメラニン形成細胞の分化や neural crest (神経堤細胞) の形成に関わる遺伝子の発現上昇が観察され、創薬ターゲットとして注目されてきた Wnt/β-カテニン シグナル伝達経路において大腸がんと対比される β-カテニン の役割が浮き彫りにされました。Wnt系を再生医療や癌治療などの分野における臨床応用に用いる動きが高まりつつある中、今後も、オミクスプロファイリングによって、シグナル伝達の詳細なメカニズムが解明されていくことが期待されます。
"Generation of iPS cells using defined factors linked via the self-cleaving 2A sequences in a single open reading frame" Cell Research 2009
[19238173]
遺伝子発現 : 体細胞を幹細胞に巻き戻す革新的なレシピがヒトやマウスの系で明らかにされ、癌化しにくい新型 iPS細胞の作製が急ピッチで進められています。今回、米メイン医学研究所のチームは、Yamanaka factor を自己開裂型のペプチドで繋いだポリシストロニックレンチウイルスベクターを用いて iPS細胞を樹立し、Agilent whole mouse genome マイクロアレイ を用いて、ES細胞と樹立した iPS細胞の発現プロファイルを比較しました。その結果、Sox2 や Nanog 遺伝子といった未分化マーカーだけでなく、網羅的な遺伝子の発現パターンが高い相関係数を持って類似していることが分かりました。今後、樹立された iPS クローンのみならず、iPS細胞から分化させた系を創薬スクリーニングや毒性評価/疾患モデルに用いるなど、創薬プロセスの効率化や全体を底上げするような形での利用が進む中で、コストと品質の両面で優れたマイクロアレイが活用されていくことが期待されます。
"Molecular and cellular signatures of human vaccine adjuvants", PNAS 2008
[18650390]
遺伝子発現 : 乳剤MF59は世界的流行病のインフルエンザ・ワクチンで使用される強力な免疫補助剤ですが、その作用機序は未知でした。彼らは、Agilent 44k whole mouse genomeマイクロアレイを用いて、マウス筋肉へのMF59および他の免疫補助剤の注射により引き起こされる転写産物プロファイリングを解析しました。その結果、MF59が骨格筋を直接の標的とすることで幾つかの免疫メディエータの強い誘導が引き起こされることが見出されました。この誘導が順にCD11b+およびMHCのクラスII+血球を呼び寄せ、活性化することにより、注射部位での初期の強い免疫応答性の環境を確立しているのでしょう。
"Critical and distinct roles of p16 and telomerase in regulating the proliferative lifespan of normal human prostate epithelial progenitor cells." J Biol Chem 2008
[18662989]
遺伝子発現 : 正常なヒトの前立腺(NHP)上皮細胞がin vitroおよびin vivoにて老化することが知られていますが、基礎となる分子機構は未だ十分に解明されていません。今回彼らは、一連の実験において、プライマリNHP細胞の老化がテロメラーゼ発現の減少/p16 発現上昇およびp53活性化に関わることを示しました。言い換えると、NHP細胞を不活化するにはp16抑制とヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)活性が必要となります。彼らは、Agilent 44k whole human genomeマイクロアレイを用いて、不活化されたNHP細胞が老化NHP細胞とは異なる増殖前駆細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルを持つことを見出しました。この発見は、前立腺癌におけるNHP前駆細胞の役割に関する研究を促進するものです。

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